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【翻訳】 ●ルギドが上王になる幕間●




●ルギドが上王になる幕間●

Serglige Con Culainn ocus Óenét Emire
Lebor na h-Uidre
英語訳: Eugene O'Curry


・こちらは『エウェルの嫉妬』( https://note.com/nteyu/n/n557cdb3352f5 )にあるものの、作品としての流れが不自然なため、いくらかの英語訳では省略されてしまっているパートです
・ふたつの違う物語のあいだに挿入されたものです
・クー・フランのありがたい訓示は、「ブレホン法」を基にしたものです。そのため、意味がとりにくい部分もあります
・作中に「四つの国」とありますが、アルスターを抜いた四なので、マンスターが東西でふたつあります
・「地方の王」はアルスターでのコンホヴォル以外の王を差します


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 この時期、エリンの四つの偉大な国による会合があった。誰にエリンの主権を与えるか、その人物を見つけることができるかどうかを調べるために。
 最上の丘とエリンの主権、すなわちタラに、王の支配がなければならない。彼らは、部族を裁く王の政府がないことを有害だと考えた。
 というのも、ダ・デルガの館でコナレ・モールが死亡したのち、王たちのタラ、コルブレ・ニア・フェルの庭において、エリンの四つの国のこの重要な会合まで、七年間、王の統治がなかったのである。

 そのとき会合にいた王は、メイヴとアリル、クー・ロイ、ルフタの息子Tighernach Tetbannach、フィン・マク・ロッサであった。
 これらの者たちは、現在、アルスターと対立しているため、王を選ぶための協議をアルスター人とはしなかった。
 彼らはそこで牡牛の宴(タルヴェシュ)の準備をした。主権を与える者を発見するために。
 すなわち、白い牡牛が殺され、ひとりの男がその肉と煮汁とを充分に食べた。そうして彼はその食事の下で眠り、四人のドルイドによって、彼に真実のまじないが唱えられた。
 彼は夢のなかで、王になるべき者の姿、体つき、人相、従事していた仕事の様子を見た。その男は眠りから声を張りあげ、王たちに見たものを説明した。若くて、高貴で、強い男。ぐるりと回る二本の赤い縞模様があり、エウァン・ウァハの衰弱した男の枕元に座っている。
 その後、この描写を含む報せが、エウァン・ウァハに届けられた。
 そのときアルスター人たちは、コンホヴォルの周囲に集まっており、衰弱しているクー・フランもそこにいた。伝達者はコンホヴォルに、そしてアルスターの貴族たちにも話を語った。

 「その人相の自由で身分高い血筋の若者は、私たちとともにある」と、コンホヴォルは述べた。
 「すなわち、ルギド・レオデルグ。公正な三つ子の息子、クー・フランの弟子。彼の師、衰弱しているクー・フランを慰め、ベッドの枕元にいる」

 クー・フランは起きあがり、弟子の指導をはじめた。


   ■クー・フランの口頭の教訓

 「おまえは激しい、圧政的な、猛烈な戦いで恐怖をいだく者にはならないように。軽はずみではなく、近づきにくく傲慢になってはいけない。強情ではなく、高慢でもなく、向こう見ずではなく、短気ではないように。多くの富を貪ってはならない。地方の王の家にあるエールを汚染するノミになってはならない」
 外国人に施すために多くの祝宴を用意してはならない。王を王として歓待することのできない評判の悪い者を訪れてはならない。
 違法な所有の権利を成立させてはならない。証人に、誰が土地の相続人であるのか調べさせろ。歴史家たちに、真実の行動をさせるように。兄弟たちの土地は、その生涯と繁栄を確かめろ。世代が分家によって増えている場合、誰がどこから生まれているのか。彼らを呼び出し、誓いのうえで復活させる。死んだ先祖たちが住んでいた場所。相続人には正当な財産を守らせよう。戦いの強さによって、見知らぬ者を追い払うように。
 「くだらないことを話さず、騒々しくしないように。嘲笑せず、侮辱せず、老人を嘲ることがないように。悪意を持たず、困難な要求をしないように。誰ひとりとして牛のために拒否しないように。
 おまえは、融資の法、恐喝の法、入質の法を持っている。賢者の教えに従い、古き者の教訓を思い出すだろう。父祖の規則に従うように。
 友に冷たくしてはいけない。敵には強く、多くの戦いで虐待の仕返しをすることはない。秘密を洩らす者にも虐待者にもならぬよう。浪費せず、蓄えず、疎外しないように。
 似つかわしくない行動への批難は耐え、しかし、他者の意思によって自身の真実を犠牲にすることはない。
 悔い改めない(奴隷や囚人の)解放者になってはいけない。
 嫉妬をせず、競争相手にならず、怠け者にならず、のろまにならない。過度にしつこくはせず、卑しくはならない。
 我が息子よ、これらを守れるか?」
 それからルギドは以下のようにクー・フランに話した。

   「うまくいく限り、それらはすべて守られなければ
   誰もが知っているはず
   それはなにも欠けてはならない
   実行可能であれば、真実を証明されなければならない」

 その後、ルギドは使者とともにタラに行き、王として公表された。その夜、彼はタラで眠った。議会のすべては彼ら自身の国に帰った。


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