CSRの為ではなく、組織自身が多様性を必要としている

ntaiji

多様性、ダイバーシティという言葉を耳にするとき、多くの人は社会問題としてとらえ、マイノリティへの配慮としてイメージされることが多い。それは間違いではないが、個々の組織がダイバーシティという言葉を使うときの文脈としては適切ではない。

組織自身が多様性を必要としている、という視点でとらえる必要がある。社会とその構成員はますます多様化している。さらに単にモノやサービスが合理的に便利であるだけでは売れず、いかに消費者の置かれた文脈や心境を理解して寄り添ったサービスを提供できるかが勝負となっている。消費者だけでなく、従業員、関係する団体、グローバルな地域社会、投資家あるいはネットの評判を形成する人たちといったステークホルダーも多様化している。

その複雑で多様な社会に対応するために、組織自身も構成員が多様であることが求められている。

少し無理してもダイバーシティに取り組む理由

組織がダイバーシティの問題に取り組む時、数値目標が掲げられることがあり、議論のまとになることがある。例えば、○○年までは管理職に女性を○○%にする、など。すると、適切でない人も管理職になるという批判が出てくる。組織にとって公平性も短期的な生産性も重要であるから当然考慮しなければならない視点だ。

それまでと違った人を一定以上取り込むとなると、それまでの基準で測れば適性が低いと判断される人が増える可能性が高い。そもそも今まで取り込めていなかったタイプの人を巻き込んでいく過程には、大小はともかく軋轢は生まれるに違いない。

であってもなお、組織が多様であることを求めるがゆえに一時的に生産性が落ちたとしても、実施しようとしている。女性の管理職が増えれば、女性の従業員が働きやすい環境を整えやすくなるし、女性の顧客やステークホルダーへの理解も深めやすくなる。組織が存続の為に、それを必要としている。

わかりやすい例を挙げると、「女性エンジニア少ない問題」を解決するために、機械学習で男性エンジニアを女性に変換する
https://logmi.jp/294756 という記事が炎上した。

この記事をよく読むと、プレゼンテーターは、エンジニアにもっと機械学習に興味を持ってもらいたいという純粋な動機で、関心を引き付けるために、「女性エンジニア少ない問題」というトピックを単なるネタとして持ち出した、優秀で、意欲的な若手エンジニアの姿が見えてくる。彼のプレゼンのタイトルは「機械学習ブームの裏側に」であり、logmiのタイトルのつけ方と、そのタイトルだけをみて膨大な批判を受けているであろうことを想像すると、同情してしまう。

彼の経歴をみれば、周りはずっと男ばっかりで、おそらく2018年6月時点では少なくともヤフー社も同じような状況なのだろう。だから、彼にとって、聞き手のエンジニア像は、男性それもこのようなネタに違和感をもたない男性しか想定されなかった。

社会全体の多様性からみえればあまりに偏っている。身近に一人でも女性エンジニアの友人がいれば、あるいは上司・先輩に女性がいて内容を把握していればプレゼンの内容は違っていただろう。

代表的な企業がダイバーシティーに取り組んでいるからと言って、社会が多様な人と共存できるようになるとも限らない

シリコンバレーの有名企業はダイバーシティへの取り組みをアピールしている。現実問題として構成員は白人男性に偏っており、その状況を改善したいと考えているようだ。GoogleやFacebookといった会社は今後構成員の多様性が増してくのに違いない。

その延長線上に、シリコンバレーが様々な人種の人たちが入り混じった社会になるのかというとそれはあやしい。白人とヒスパニック系は住んでいるところからして区分けされているという現実がある。例えば、http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54446?page=3 参照。

シリコンバレーの企業のインクルージョンとは、超優秀な例外的な人たちをピックアップして内に招き入れる、というようなイメージだろう。このような社会状況に対しては色々な見方が可能だが、企業自身が多様性を必要としているからこのような取り組みをしている、ということだけは確かである。

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