雑記 2023.4.25 / AIイラストはスーパーの惣菜のエビフライだと思った話

AIにイラストを学習させて新規のイラストを描かせるアプリの事が、良くも悪くも話題にのぼる。
それによって、イラストレーターさんやネットの絵師さんたちが自分のイラストを勝手に学習に使われる事を防ごうとする動きがある。
それでも、勝手に学習に使われたという被害の公表は後をたたない。
なんかもう無法地帯。

AI絵と人の描いた絵はやっぱり違う。
例えるなら、スーパーのお惣菜のエビフライと手作りのエビフライの違い。
どっちも「エビフライ」である事には変わらないけど、別物。

スーパーのエビフライは衣が多い(※個人の感想です)。とんかつとかコロッケとか揚げ物は色々あるけど、衣の厚さにおいてエビフライは群を抜いていると思う。
大きくて美味しそうなエビフライだと思って買ったのに、エビはほっそい甘エビみたいなエビでその周りにエビを数倍のサイズに見せるための大量の衣が付けられている。もはやエビフライというよりもエビのアメリカンドッグじゃないかと思うほど。生地を食べる料理だと思えばまぁ納得できる。
でも、見た目は洋食屋さんのエビフライみたいに立派で完璧。みんなが求める、みんなが食べたいエビフライの形をしている。
でも中身はそうではない。
それは、自分が本当に食べたかったエビフライではない。
もっと大きなエビが適度な衣に包まれた、理想のエビフライをイメージしてた。
でも作るのは大変だから、理想よりだいぶ下回るけど惣菜のエビフライで妥協した。ほぼ衣だけど、作る大変さと天秤にかけたらまぁ惣菜でもそこそこ美味しいからいいか、ってなる。

手作りのエビフライは、その人が一番好きなバランスで衣が付けられていて、エビもフライに適した大きさのエビが使われる。
それを自分の好きな感じになるように調理するから、その人が美味しいと思える味や衣バランスになっている。こういうエビフライが食べたい、という理想に沿って作っているので、それが究極の最終形で唯一無二。自分の思いを形にしたもの。ただ、作るのは大変。作るのに手間も時間もかかるし、そもそもその技術がなければ作れないから、技術の習得にかける時間も考えたらそこにも膨大な手間と時間を要する。でもその分、細部まですべて自分が手がけるので自分の理想を過不足なく表現できる。

だから、いくらAIアートが普及しても、自分の表現したいことを過不足なく表現できるのは結局自分だけ。AIにお願いすれば、そこそこ自分の理想を反映したものは出来上がると思う。けど、ここがなんか違う、とか、ここの表現は自分のやりたい表現じゃない、とか、自分の理想とAIの作品の間にはきっと永遠に分かり合えない齟齬が残ると思う。

という、ここまではあくまでも作り手にとっての話。
その作り手にエビフライを発注する人や、技術は持ってないけどそれっぽいものを作ってみたい人にとっては話が変わってくる。

結局、惣菜だろうが手作りだろうが、エビフライでさえあれば細かい事はどうでもいい人というのは一定数いる。というか、けっこう多数派として存在する。
料理家にエビフライの調理を依頼してたけど実はそこまでの完成度のものじゃなくてもよくて、そこそこでいいからもっと安くて早い方がいいんだよねという場合は料理家に頼むのをやめて惣菜を買うだろう。
料理の技術はないけど自分の好きなエビフライを食べたい人は、いろんな惣菜を試してその中で一番自分の好みに近いエビフライを買うだろう。
そうやって、惣菜のエビフライがエビフライ界にとっての主流となっていって、大多数の人は安くて手軽な惣菜で十分だよね、全然いいよね、作るの大変だし、ってなる。
実際私もエビフライは買う方が圧倒的に多いし、イラストに置き換えても、とりあえずの仕事でよい場合は明らかにAIイラストだなっていう素材を使う事もある。

でも結局、本当にこれぞエビフライたるエビフライを食べたい時はレストランで食べたり、自分の理想100%のエビフライが食べたい時は自分で作るしかない。
だから、プロのイラストレーターさんが完全に仕事を失ったりする事はないし、絵を描く人が自分の表現として描く絵の価値は下がらない。

なのできっと、これからはよりその棲み分けが進むんだろうなと思う。
これまでAIという手段が無かったから仕方なくプロに頼んでいたような人たちは、手軽な惣菜に流れていくのかもしれない。
けど、人が作る事による完成度を求める人はプロに頼む。
"レストラン"と"家庭の調理"と"惣菜"が全部存在してるように、全部存在し続ける。

それでも、自分のレストランや家庭のレシピをどこぞの誰かに盗まれて惣菜に使われてその惣菜が人気出たせいで自分のレストランの収益が減ったり、自分の家のレシピなのに"あそこの惣菜と似てるね"とか言われたらむちゃくちゃ腹立つよね。ましてや"真似したでしょ"とか言われたらもう立ち直れないかもしれない。
レシピ、つまり自分の技術や感性はもはや知財だよね。それで生計を立ててる人にとっても、それを趣味にしてる人にとっても。
性善説だけではもうどうにもならないから、何か大きな力に守られてほしい。

など思った話。
オチなし。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?