遠野にて
2000年代の終わり頃。
夫と二人で、遠野を訪ねた。
書店で柳田国男の『遠野物語』を手にして、急に思い立ったのだった。
同書に出てくる「デンデラ野」を目指し、駅からバスに乗った。
車内で、小柄なおじいさんが夫に話しかけてきた。
私は隣で聞きながら、ひどく驚いていた。
おじいさんの言っていることが、一つもわからなかった。なにか聞き取れるだろうと耳を澄ましても、やはりわからない。
東北近辺出身の夫は、ある程度は内容がわかった。道端の石塚の由来についての話だったと、あとで教えてもらった。
同じ日本の中で、こんなギャップがあるものかという、鮮烈な記憶だ。
タイトル画像は、その数年後に再訪した時の写真。庚申塚。
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