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『Ya No Estoy Aquí』フェルナンド・フリアス(2019 映画)

クンビア、またはコロンビア(Kolombia。国名ではなく音楽ジャンル)の音楽と、それを中心としたカルチャーが興味深い。服装、ヘアスタイル、ダンス、グループの仲間意識。

メキシコ北部の町、モンテレイ。貧しい少年ウリセスは、学校に行かず仕事もせず、仲間とつるむ日々を送る。救いは、大好きな音楽。
ところがある日、麻薬組織の抗争に巻き込まれ、やむを得ずアメリカに逃れる。不法入国した彼に行き場はなく、孤独感が募る。

ストーリーはシンプルで、今ひとつ、感情面の掘り下げに欠ける。ウリセスがコロンビア音楽と地元の仲間に愛着を感じているのはわかる。でも、最初から最後までそれなのだ。
愛着から出発するのはいいけれど、彼がなんらかの行動を起こし、それによって、なにかが変わるところを見たい。
タイトルのとおり、ウリセスは所在なさげで、「ここにいない(no estoy aquí)」。かつての仲間たちがほかの居場所を見つけていく中、ウリセスは自分の行き先を定められずにいる。

この映画の一番の見所は、冒頭にも書いたが、メキシコ北部の若者文化だと思う。
貧困や麻薬戦争といった背景も描かれている。
特に緊張感があるのは、突然の銃撃シーン。たまたま居合わせたウリセスは、瞬間的に物陰に飛びすさる。足のつま先を上に向けたまま、動かすこともできない。彼の恐怖感が、こちらの心に侵入してくる。


⭐︎食の場面
流れ着いたニューヨークで、中国系の少女リンと出会ったウリセス。食堂で話し込む。好奇心旺盛なリンに、彼は自分の仲間や音楽のことを語る。
コーヒー用の砂糖で、赤いトレーの上に星型を描く。星は彼のグループの象徴。


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