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愛がすべてならいいのだが 「シンデレラ」(2021)

”ヒロインの白ドレス”の事例が、またひとつ増えた。
カミラ・カベロが主演する『シンデレラ』。
舞踏会のシーンで、カミラのドレスは白(淡いピンクにも見えるが、ほぼ白)。

最近では、シチリアに行く前に見たヴィスコンティ『山猫』も、ラストの舞踏会シーンで、ヒロインは純白のドレスで現れる。
画面の上で、白は映えるのだろう。
ヒロインは白。ウェディングドレスのように白。

「シンデレラ」の内容について。
本作のシンデレラは、ドレスデザイナーを夢見る少女。王子の求婚も、夢を諦めたくないからと断る。しかし、継母に無理やり結婚させられそうになる。そこに現れる救世主は、シンデレラへの思いを捨てきれなかった王子。

自分の夢か結婚か、という2択の結論として、「愛があれば大丈夫」はあまりに安易ではないだろうか。
そもそも夢(あるいは、職業)と結婚の二項対立は、それ自体、既におとぎ話だ。むしろ、現在の女の子たちを苦しめているのは、その両方を手に入れなければならないという圧力だろう。もっと言えば、上手く両方を獲得したとしても、たとえば子供が生まれると、時間が圧倒的に不足して消耗するという現実だ。

そして、残念ながら、それを解決するのは愛ではないと思う。
パートナーとお互いを尊重し合うことも不可欠だけれど、それ以上に、社会の問題だろう。映画が歌い上げるように、「愛がすべて」だったらいいのだが。
おとぎ話を現代風にアレンジするなら、そこまで踏み込むべきではないだろうか。あるいは、おとぎ話にとどめたかったのだろうか。

音楽とダンスは楽しい。ホワイト・ストライプスのseven nation armyが使われていたのは、思いがけずうれしかった。

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