こわい夢のこと

薬を飲まずに寝た日はきまってこわい夢をみるようになりました。薬を飲めていない不安によるものなのか、だいぶ脳みそがやられているけど催眠作用のある薬のおかげで普段は回避できているのか、こうなってはもうわかりません。これは先日の、比較的文字に起こせる程度のこわさの夢の記録。

1.

侘しい公園の夕暮れ時で、すべての固有色を呑み込む強烈な茜色の日差しを浴びている。敷地の隅に流れる川に浸ってわたしは動けない。水深は6センチ程度で、かろうじて透明であるがすぐに泡立つ不潔な水。いちども日光を浴びたことが無い萎びた草木に囲まれている、できれば目を合わせたくないような川である。
すぐ先の簡易的な橋に、ウェーブがかった黒髪に薄い顔立ちの青年が腰掛け、私の存在を認知していながら意地悪に無視するように、しかし確かに私に聞かしつける(見せつける、のようなニュアンスで)ように本を朗読する。
10メートル程先の公園の中央のほうに目をやると虫が何十羽も群れて飛んでいる。虫はトンボだが、からだは嫌につややかで太い。百足に翅が生えたようである。
遠くの羽虫から自らの周辺に意識がもどると、ふいに頭に虫がとまっているのに気付く。触らずともやや重いそれは、発達したあごで私の額を食んでいる。
辛抱たまらなくなって川から腰を上げ走る。
気持ちの悪い羽虫の群れを横切る。
追う者も目指す場所もないが、逃げている。


ここでいちど目が覚める。
水をのんでトイレに行ってまたベッドに戻り、眠りました。


2.

中央線のホームで音楽を聞いている。いつものように羊文学を聞いていて、彼らの作品のジャケットの多くはボーカルの塩塚モエカの写真なのだけど、夢の中ではすべて知らない人の顔写真であった。突如Bluetoothイヤホンの接続が切れてしまって、スマホから直に音楽が流れだす。周囲の人びとが一斉に顔をしかめる。曲を止めるにはジャケット画像を強く押さなければならず(夢の中ではそういうことになっていた)、そのたび押した場所に沿って画面の中の知らない人びとの顔がひしゃげ、絶命する。顔面のかたちの粘土を指で押して、ぐにっと変形するような感触。それでもすぐに他の曲が流れ、わたしは焦って画面を強く押し、また絶命。アップテンポに曲が流れ、知らない顔を潰し、絶命。塩塚モエカの美しい歌声、周囲のしかめ面、焦り、親指に力を込め、絶命。軽やかなロックサウンド、冷や汗、痛そうな顔、絶命。骨、眼球、絶命。歯茎、血、肉、絶命。顔を上げると、周囲の人々の顔が私が潰した人たちになって、みなこちらを見ている。絶叫。


初めて自分の声で目が覚めました。

ただグロい夢でまだよかったなあと思います。私ひとりで完結する夢でよかった。

こわかったー
もっと動物と草原で戯れる夢とかをみたいです。

(おわり)

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