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ホタルが出る廃墟?横須賀の坂本谷戸

異次元空間は、世界のヘンテコを追う同人誌「異次元空間」のオンライン版で、風変わりな場所と構造物の紹介がメインです。

ホタルが出る場所というのは全国の自然豊かで水のきれいな場所でよく見られる謳い文句ではあるが、横須賀には廃墟をホタルの里にしようと整備した一帯があるという。

今回の異次元空間では、横須賀の坂本谷戸を紹介する。

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最寄りとなる田浦駅は、山と山に挟まれた場所に位置する駅だ。ホームが短いため、11両編成の場合は一部車両のドアを閉じたままにするドアカット扱いで有名である。

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田浦の市街から地図を頼りに歩いていくと、廃墟方面への細い道が分岐する。

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横須賀線の小さな踏切があった。右に小川が見えているが、この川沿いにホタルが生息しているということらしい。田浦ほたるの里づくり事業が平成14年から16年にかけて行われていたようだ。

田浦地域内のホタルが生息する一帯を、人々が憩い、情操を豊かにすることのできる「ホタルの里」として維持・発展させるとともに、地域の美化活動の推進と自然に恵まれた地域環境の保全を図る市民協働事業(平成14年度から16年度に実施)
横須賀市ウェブサイトより

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細い道が二つに分岐すれば集落の入口である。

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数件の建物が荒れるに身を任せていた。ここが知る人ぞ知る田浦の廃墟、坂本谷戸(ゴーストタウンT)である。

左の建物の入口に立てられたコンパネに「ハチ注意」と書かれているように、付近はスズメバチがよく出るようだ。実際にスズメバチに遭遇したレポートもウェブでは公開されている。なお、筆者はハチ対策として3月に当地を訪問した。

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ホタルの里(坂本谷戸)と書かれた看板が立っていた。このあたりは坂本谷戸と呼ばれているようだ。

谷戸(やと)とは丘が侵食してできた谷のことで、低い丘が多数みられる横浜から横須賀あたりにかけては谷戸で耕作したり家を建てて住む人が多くいる。近年では谷ゆえの土地の狭さ、階段と坂の不便さもあって谷戸の空き家化が進んでいるそうだ。特に人口減少が続く横須賀では大きな問題になっており、市は空き家バンクを作って希望者に積極的に空き家を整備し提供している。

廃墟だらけの場所にホタルを見に来るのはそれなりに精神が強くないと辛いような気もする。

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建物には関係者以外立入禁止の看板が貼ってあった。ここはもともと湘南田浦ニュータウンとして整備するために一帯の立ち退きが行われたものの、開発が頓挫したためそのままにされているという。2013年に開発が再開される動きがあったものの再び中止になっている。

田浦町4・5丁目のホタルの里の土地に関して伺うと「この街のホタルの里は、ある開発業者が所有している土地です。12~13年前に業者による買収で60戸が立ち退きました。更地にすると税金がかかるため、廃墟のまま放置されているのです。開発計画が具体化すると、この事業は終わってしまいますが、私たちとしては成り行き任せで静観しています」という。
はまれぽウェブサイトより

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住居の周りは立ち退き当時の生活用品がそのまま残されていた。道が細く車両が入れない谷戸地域のため、引っ越しするにあたり最低限の荷物のみ搬出したのかもしれない。

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こちらは隣接する別の場所にある廃墟だが、訪問時には焦げた瓦礫が積み上げられていた。近隣の方によれば不審火が起きた跡だという。

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こちらの地区は、林にも近く、より自然に還っているように感じた。

Google Mapの全天球画像を動かしてみると、廃墟の周辺が分かるだろう。

さて、これまで見てきた坂本谷戸であるが、現在はもう存在していない。Google Mapの航空写真を見ても、付近は更地になっており、産廃を詰めたフレコンバッグがいくつも置いてあるのが分かる。

調べてみると、当地は2017年4月には立ち入りができなくなっていたようだ。記事によれば、跡地は(仮称)湘南田浦メガソーラーになるという。Yahoo地図では、さらに開発が進んだ時点の航空写真も見ることができた。

田浦町4丁目地域内の市道の一部通行止めについて
田浦町4丁目において、(仮称)湘南田浦メガソーラー事業の手続きを進めている区域内で、居住者のいない空家地区となっているところがあり、不審火や不法侵入などの事案も発生しています。
つきましては、田浦警察署と協議のうえ、防犯・防災対策として、下記のとおり市道の一部を通行止めとする措置を実施しますので、お知らせいたします。
横須賀市ウェブサイトより

都心回帰志向の今では、駅から遠い郊外の住宅地は流行らない……ということなのかもしれない。宅地から事業変更が行われたようだ。

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ニュータウンからメガソーラー発電所へ。時代に翻弄された坂本谷戸一帯も、これでいよいよ決着がつくのだろう。

日本にはまだ見ぬ不思議な光景があるものだ。

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