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壁から瓦まで赤色の街並み?備中吹屋

異次元空間は、世界のヘンテコを追う同人誌「異次元空間」のオンライン版で、風変わりな場所と構造物の紹介がメインです。

日本を象徴する色と聞いて浮かぶのは赤色ではないだろうか。物を赤色に着色するための顔料に使われているのは酸化鉄(べんがら:弁柄)である。べんがらは硫化鉄鉱石を加工して作られるが、日本においては昭和中期までの長い間、たった一箇所のみで作られていたという。

今回の異次元空間では、べんがらの産地、日本の色:赤色のふるさとだった備中吹屋を紹介する。

こちらは駐車場にあった案内看板である。ベンガラ色の町並みが残る保存地域は、吹屋ふるさと村として紹介されている。

集落に足を踏み入れると、そこはメインストリート沿いに赤っぽい色の街並みが続く。このような色をした街並みは日本広しといえども備中吹屋だけであろう。

赤銅色の石州瓦とベンガラ色の外観で統一された、見事な町並みが整然と続く吹屋の町並み、この町並みこそ、江戸末期から明治にかけ、吹屋の長者達が後世に残した最大の文化遺産です。
豪商が財にあかせて建てた豪邸は、全国各地に見ることができます。しかし、吹屋の特異な点は、個々の屋敷が豪華さを纏うのではなく、旦那衆が相談の上で石州(今の島根県)から宮大工の棟梁たちを招いて、町全体が統一されたコンセプトの下に建てられたという当時としては驚くべき先進的な思想にあります。
昭和49年には岡山県のふるさと村に認定され、昭和52年には文化庁から国の重要伝統的建造物群保存地区に、そして令和2年6月19日に「『ジャパンレッド』発祥の地~弁柄と銅の町・備中吹屋~」として日本遺産の認定を受けました。
高梁市観光ガイドウェブサイトより

ベンガラ色の古い街並みが並ぶ集落は、見て歩くだけでも十分楽しめる。このような美しい集落が岡山県にあることは、世間にはあまり知られてはいないのではなかろうか。広い無料駐車場もあるのにもったいない話である。

集落一帯の屋根に載るのは赤みがかった石州瓦だ。石州というだけあって、石見地方(島根県)由来の瓦である。

石州瓦の原料は、県西部で採れる良質な粘土と、松江特産の来待石からつくる釉薬(ゆうやく)です。それを1200度を超す温度で焼き上げると、独特の美しい赤い色が生まれます。
この高温は品質にもつながっています。セラミック製品は高温で焼くほど高品質になるといわれ、他の瓦産地に比べて窯の温度が群を抜く高さの石州瓦は透水や凍結、積雪の重み、塩害などの耐久性にも高い評価を受けています。
島根県ウェブサイトより

ひと目では同じような家々も、一軒一軒に特徴があることに気付く。写真左の家は2階の一部になまこ壁を用いている。しゃれた装飾だ。

集落から少し離れた場所にある展示館、べんがら館では、明治時代のべんがら製造工場を再現した施設の中で、べんがら製造について学ぶことができる。

ベンガラは硫化鉄鉱石を50日間も燃焼させ続けることで硫黄分を取り除き、さらにいくつかの工程を経て不純物を取り除いて粉状に加工したものと説明されている。赤色の顔料がかつてこうした手間を経て作られていたことに驚くばかりだ。

現在のベンガラ製造は人工硫酸鉄法に切り替わったため、備中吹屋でベンガラが製造されることもなくなってしまった。

ベンガラ館には製造工程ごとに再現された建屋がある。ベンガラを沈殿する建屋では、大きな水槽が室内にいくつも並んでいた。

他にも、ベンガラ館では「焼き」や「脱酸」といった工程を紹介している。こうした手間のかかる複雑な工程を考えると、この備中吹屋だけでしかベンガラが製造されなかった理由も分かる。

日本唯一のベンガラ製造によって栄えた備中吹屋も、今や当時の繁栄を残すのは街並みだけである。

ストリートビューの全天球画像では、備中吹屋の統一感あるベンガラ色の街並みをみることができる。

日本にはまだ見ぬ不思議な光景があるものだ。

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