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N高とは「枠(わく)」ではなく「一番下にある板」〜奥平校長にインタビュー

取材・文:滝谷佳代

開校6年目のN高等学校。S高等学校も含めると2万人の生徒が在籍しているマンモス校だ。その学校を作った人、奥平博一校長を知っているだろうか?普段どういう仕事をしているのか知っている生徒は少ないだろう。その疑問を解決すべく奥平校長に話を聞いた。

奥平 博一(おくひら ひろかず)校長
N高等学校の校長

開校当時からめちゃくちゃ楽しかった

ーー約2万人の生徒が自分の学校に在籍しているのはどのような感覚ですか?

最初は1500人ぐらいで始まりましたが、2万人になっても思いは変わっていないっていうのが感想ですね。でも考えだすと眠れない夜があります。365日、角川ドワンゴ学園は動いていて、何もしてない日っていうのはほぼないんです。職業体験とか海外留学とか通学コースとかスクーリングとかいっぱい。ふと、うまく回ってるかなって考えだす時があります。

ーー開校当時はどのような感覚でしたか?

開校する前からめちゃくちゃ楽しかったです。おもしろい学校になるなって思いました。今でもそう思っています。

ーーこれだけの人が集まると思っていましたか?

半々ですね。開校して1年目ぐらいで、もっともっと集まってくれるかなっていうのを実感しました。でも、これだけの人が集まってくれるのは本当にすごいなって思います。

ーー約2万人の生徒がN/S高に集まってどのような思いになりましたか?

単純に嬉しいですね。全日制の一般的な学校は「1つの枠のようなもの」だと思っています。でも枠って限界があるじゃないですか。N/S高は「枠」じゃない。「一番下にある板」みたいな感じです。そうしたら、みなさん1人1人が何を考えてどんなことを希望しても、なんでも受け入れることができるんです。枠って考えたらきついなって思うけど、単純に1枚の板の上にたくさんの人がのっているだけだから、2万人になろうが、たった1人の生徒だろうが、学校と1人の生徒との関係性は一緒です。

外に向けて発信していくのが仕事

ーー校長先生の主なお仕事はなんですか?

取材を受けたり、行政的なものも含めて「N高ってこうですよ」って外に向けて発信したりしていくのが僕の仕事だと思っています。

ーー校長をしていて大変だったことはなんですか?

そんなに大変だったことはないです。皆さんご存知かわからないんですが、学校って開校するのに事前準備がいるんですね。僕自身が沖縄に行ったのは2014年の10月なので、開校の1年半前ですね(2016年4月に開校)。校舎を探したり、利用の交渉もしてきました。この学校をやるっていう覚悟と決意を持ってやっていたので、大変なのは当たり前です。なので、やるしかないかなって感じでしたね。

ーー校長をしていて嬉しい瞬間はなんですか?

いつか生徒が来てくれて、いろんな活動が始まることを楽しみに作ってきました。だから今日この時も嬉しいです。

ーー学校の運営で意識していることはなんですか?

先生たちにも話をしているんですけど「枠」にはめるっていうのは大人からしたら楽なことなんですよね。でも、自分の人生しか知らないだけでいろんな人生があるわけじゃないですか。だからできるだけ否定しない、否定できる根拠がないですから。生徒のみなさんが言うことは否定せずに可能性を探ってもらうっていうのが根底にあります。

ーーN/S高等学校では様々な前職をもつ先生がいますが、その採用基準はなんですか?

学校とはこうだ、教育っていうのはこうだっていう固定概念をもっていない人です。なので通学コースは、いろんな企業で働いた人が多いかもしれないですね。世界は広いから固定概念を持たない方がいいと思っています。そして教育も未来に向けて考えてくれる人がいいと思っています。

N高生だったらずっと旅をしている

ーーN高の強みはなんだと思いますか?

うちの学校は「学習」じゃなくて「学び」だと思っています。学びっていうのは自分が本当にやってみたい勉強をそれぞれやってくれたらいいんです。僕ら教師は一番下にいるからいろんな方向に向いている人がいても大丈夫。でも他の学校だったら時間割が決まっていて、数学の時間に英語やったら怒られますよね。当たり前ですけど。そういう考えのなかでやるんじゃなくて、どんどん自分の発想で自分のやりたいことが本当にやれるような学校になっていける、それを受け入れられるっていうのが強みだと思います。

ーー高校時代に経験して良かったことはなんですか?

旅に出て場所を知ったり、いろんな人と会話したのはすごくタメになっています。1つしか答えはないって思わなくなりました。もっと知らないことってあるよねっていまだに思っています。そういう思いを持てるのはいろんなことを経験したからかもしれないですね。

ーー校長先生の高校時代にN高があったら入りますか?

入ってると思いますよ。僕も高校時代は好き放題やってました。春休みはお金を貯めるためにアルバイトをしていました。夏休みは終業式が終わったら家に帰ってすぐにリュックを背負って、始業式まで旅に出ていました。だからもちろん入ります。

ーーN高に入ったら旅をたくさんしますか?

夏休みだけじゃなくて、ずーっとどこかを回りたいですね。

ーーということは、通学コースではなくネットコースになりますか?

通学に行きたいかもって思うかもしれないですが、とことん自分の知らない場所に行ってみたいですね。今でもそう思っています。

私はN高に2年間在籍しているが奥平校長とは初めて会話をした。すごく優しくてニコニコしながら質問に答えてくれ、わざわざお礼の手紙をくれた。その手紙には校長先生のお仕事について追記があった。

”一つ大切な仕事を言うのを忘れていました。それは「生徒の皆さんと話す」ことです。だから、昨日の会(インタビューした会のこと)は、私の仕事であり、最も楽しい時間でした。”とのことでした。

奥平校長だったからこんな素敵な学校ができたんだとインタビューを通して思った。また今後、校長先生のプライベートな話、校長先生の原点について話している記事も配信していくので読んでほしい。


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