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全身麻酔もロボット。未来のような今のはなし。

こんにちは。今日は全身麻酔についての話です。

表題にあるように、2024年現在ロボット麻酔というものが運用され始めております。医療に馴染みのない方はもちろん、他の手術室に勤務される方においてもまだまだ認知されていない分野だと思います。

特定看護師として麻酔に関わるなかで、指導医の下でロボット麻酔を使用する機会が多々ありますので、そうした立場から少しだけご紹介させていただきます。

※記載の内容については、医学的情報を含むため参考程度にお読み下さい。

ロボット麻酔とは

ロボット麻酔と呼称していますが、これは正しい名称ではありません。

麻酔科学会的には「全身麻酔用医薬品投与制御プログラム」と読んでおりおます。長ったらしいですが、麻酔を行うための薬を自動的に投与してくれるシステムのことです。

2024年現在では、日本光電が発売しているAsisTIVAが国内で唯一稼働しているロボット麻酔になります。

AsisTIVAとは

AsisTIVAは、患者から得られる様々なバイタルデータを収集し、それをもとに全静脈麻酔(TIVA)における3種類の薬剤(ディプリバン、レミフェンタニル、ロクロニウム)の投与を制御するシステムです。

本体はPCとシリンジポンプ3台が連結した筐体からなり、麻酔器のバイタルデータと連携することで作動できます。連携はとても簡単で、慣れればセッティングは通常の麻酔準備とほぼ変わりません。

Asis TIVAの概要

AsisTIVAは全身麻酔の導入から術中維持まですべて管理可能で、導入時のシークエンスは以下のように決められています。

AsisTIVAでの麻酔導入シークエンス(あくまで参考)

  1. レミフェンタニルの投与を開始

  2. レミフェンタニルがCe 0.5γに到達したタイミングで、ディプリバンの投与を開始。

  3. BISが60以下、又はディプリバン投与から3分が経過した時点でロクロニウムを投与。

  4. 挿管が完了したら麻酔維持モードへ変更。

上記のような手順でロボット麻酔が自動で麻酔薬の投与を制御します。
基本的にはボタン一つで実施してくれるので、薬剤投与に関してはシリンジポンプを触る必要がなく、操作は簡便です。

導入時の注意点

麻酔導入時にはレミフェンタニルをCe0.5γと比較的高用量で使用します。これにより、特に高齢者などでは鉛管現象による換気困難が生じることがあり、換気が難しい患者では特に注意を要します。

また、筋弛緩薬の投与タイミングはBIS値に依存しますので、換気が難しくてもBISがなかなか下がらないと筋弛緩が投与されなくてマスク換気に苦しむこともあります。

ですが、基本的には問題なく導入されることが多いので、症例を選んで使用すれば安全に導入できると思います。

麻酔維持について

ロボット麻酔では、BISとTOFを主に指標として使いながら投与量を調整しています。複雑なので詳細は説明できませんが、BISが安全域になるようでディプリバンの投与量を自動で制御し、ディプリバンの投与量に合わせてレミフェンタニルも自動で制御されます。

したがって、BISが高くなりがちな症例(例えば頸部操作や若年患者など)では、ディプリバンの投与量が多くなりがちであり、それに伴ってレミフェンタニルの投与量も多くなります。

レミフェンタニルが高用量になると血圧低下が生じやすくなりますので、昇圧剤の持続投与は比較的標準で行うことが多いです。

こうした問題点を除けば、ロボット麻酔は自動で麻酔深度を維持してくれますので、比較的安心して見ていることができます。筋弛緩薬もTOF1以下に保つよう持続投与されるので、これもショット注入の必要性がなく簡便です。

今後の麻酔の未来とは

当施設ではこのロボット麻酔を使用してPS1-2の患者に対して全身麻酔を行っています。特定看護師としても、ロボット麻酔を使用できる麻酔科医師の監督のもと使用しており、より安全な麻酔管理に寄与しています。

ロボット麻酔は、数的制限のある麻酔科医師の省力化に寄与するだけでなく、今後増えていくであろう特定看護師やPAN(周麻酔看護師)などのコメディカルが関わる麻酔管理においての安全性の向上にも役立つ技術だと思っています。

まだまだ発展途上ではある分野ですが、今後輸液管理や昇圧剤の自動制御などの技術も開発されつつあるため、そうした技術を上手く活用しながら安全に麻酔を実施できるようにしたいですね。

今回はロボット麻酔についてご紹介しました。
麻酔の話や特定看護師についてご興味がありましたら、ぜひコメントしていただけると幸いです。




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