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プロジェクト、リーダーの資質があばかれる

私が転職したソニー子会社は、入社した当時大崎駅近くにありました。
子会社でしたが、これでもソニーなのというような古びたおんぼろのビル内で仕事をしていました。
まぁ、当時のソニー本社ですら工場の跡を利用していたのですから、見栄えなど気にしない企業体質だったようです。
この大崎エリア、数年後に再開発をする計画ができており、子会社は移転しなければなりませんでした。
現在では、むかし通っていた飲み屋もなくなり、再開発が無事終了し見事な街並みに変貌しています。
古きよき思い出のひとつは消え去りました。。。

私の上司は、この本社移転作業をおこなう責任者でしたから、私もいっしょになって準備作業を手伝っていました。
創業期の日々は、日中の業務だけでも大変でしたが、そのなかで移転準備作業をするのです。
当然ですが、準備作業は夜、いや夜中にやるのでした。
毎日、本社移転の準備作業がスタートするのは、21時ごろだったでしょうか。

会社内には、上司と私の二人しかいません。
静まり返ったおんぼろビルの閑散とした社内で作業をするのでした。
上司は、なんと懐かしい模造紙を取り出してきます。
なにをするのだろうと、不思議に思っていると、移転先のビルの図面を参考に、各部門のレイアウト図を模造紙に書くのでした。
移転先のビル図面を100分の1に縮小し、模造紙にオフィスとなる図面を書いていきます。
それができあがれば、デスクなどを同じように100分の1に縮小し、色付きのコピー用紙で作成します。

これが出来上がってから、いよいよレイアウト図面の展開がはじまります。
先ず、動線を決めて、そこから各部門ごとのレイアウトを決めていきます。
当方もない作業でした。
徹夜で作業して、運営会議(主要な責任者と役員が集合する)へ報告すれば、各部門の責任者から強烈なパンチを浴びせられ、私たちが決定したレイアウトはあっという間にゴミ箱いきです。
あぁ、また今夜も徹夜か。。。

この会社、こんなことをよくやるのです。
一見すると無駄なように思えますが、各責任者へ当事者意識をもたせているのです。
面積は、そんなに広くていいのか。
家賃も高くなるが、稼げるのか、と。
機能性は、必要な機材は配置されているのか等々。
必要な売上とコスト、あるいは計画性や機能性と聞けば、責任者は、真剣に部門面積やレイアウトを検討してきます。
一概に広い面積ばかり要求するわけにはいかなくなるのです。
責任者(課長)へ将来の売上予測は、人員の増員計画は、と次々に課題が突き付けられます。

まさにリーダー(課長)の能力が見て取れ得る瞬間だったでしょうか。
大胆な面積を要求し、将来の事業計画を持ち出す責任者、あるいは少ない面積でよいという自信なさそうな責任者など、このようなプロジェクトをやると、残酷なようですが、それぞれの事業を担うリーダーたちの仕事における能力があからさまになります。
私がいたソニー子会社という企業は、現場に権限を委譲しているのですが、その現場を預かる責任者(リーダー)は、利益責任を負っていますから、このような仕事をやることで、責任者の仕事に対するリーダーシップや能力まで把握されることになります。
自由闊達とは、実は強烈な厳しさ(責任と能力)の裏返しの言葉です。

私もその厳しさを味わうことになろうとは、このときは考えもしていませんでした。
上司から学んでいたことが、私の窮地を救ってくれましたが、KO寸前でした。
このとき、私は、まだ上司の仕事を他人ごととしかみていなかったようで、
ビジネスの厳しさは、自分が当事者になることからはじまるのでした。
この話は、また別な機会に書くことにします。


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