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肉離れのお話

肉離れと聞くと、スポーツ歴がある方は馴染み深い症例ではないでしょうか?
ジャンプ動作や走る動作で起こることはご存じかと思いますが、各スポーツ固有の動作により損傷しやすい筋肉に、違いがあることは御存じでしたか??
これからご紹介する筋肉の肉離れは「なぜ起こり・どのスポーツに多いのか??」を、筋肉の走行と筋繊維の形状から詳しく解説していきたいと思います。



大腿四頭筋損傷


大腿四頭筋は太ももの前側の筋肉のことで、下記の四つの筋肉が集まった名称のことを呼びます。

大腿四頭筋の各筋肉の解剖図


・「大腿直筋」(最も痛めやすい)
・「内側広筋」
・「外側広筋」
・「中間広筋」

大腿直筋に最も多くみられ、サッカー選手や短距離走選手で多い怪我の一つと言われております。
発生率が高い要因として、大腿直筋は筋繊維の形状が羽状筋という点が挙げられます。


・大腿四頭筋の筋繊維の形状

紡錘状筋と羽状筋の違いについて


筋繊維は紡錘状筋、羽状筋の二種類をベースとして分けられ、大腿直筋の繊維は羽状筋で、筋肉の繊維が斜めに走っています。
大腿直筋は、「筋肉の繊維の数が多く、面積が大きいため」力を発揮しやすいと言うメリットがあります。
しかし、筋繊維が真っ直ぐ走っているわけではないため、そこに捻りの走行が加わることで、力の伝達効率が悪くなり負荷に耐えられず損傷が起きやすいとも文献上で考察されています。

羽状筋は筋繊維数が多く、断面面積も大きいため
大きな力を発揮しやすい徴があります。


紡錘状筋は力の方向に対して平行に走行しているため伝達効率が高い。


・大腿四頭筋損傷の特徴


本症例の特徴は、サッカーでボールを蹴った際や短距離走などのダッシュでの負傷が多く、そのほかにもバレーボール選手がブロックする際のジャンプ動作の際に痛めやすいです。

受傷要因は、筋疲労、左右の筋力のアンバランス、大腿部前後の筋のアンバランス、柔軟性不足などが挙げられます。
特に大腿四頭筋の柔軟性が低下すると骨盤が前側に引っ張られ「反り腰」の状態の方はなりやすい印象があります。

また、サッカーでボールを蹴る動作で負傷する際は、ボールの蹴るポイントが悪い時や 蹴る側の脚を後ろに大きく振った際に筋肉が引き延ばされる負荷(遠心性収縮)が強く働き、そこから筋肉が強く収縮させるときに負荷に耐えられず筋繊維の一部に損傷が起き、結果として痛みが引き起ります。

ボールを蹴る際に後ろに大きく振ると大腿直筋に引き延ばされることで損傷が起きます。


・大腿四頭筋損傷の症状


肉離れの症状は軽度・中等度・重度の 3 つに分類されます。

・軽度損傷:痛みがあるものの、日常生活を問題なく過ごすことが
      可能です。
      炎症による軽い腫れが見られたりします。
      (膝は 90 °以上曲げることができます)

・中等度損傷:筋肉の繊維が部分断裂を起こし、場合によっては陥凹が
       見られます
。(太ももを触っていくとへこみを触れることが
       できる状態)
       炎症症状も強く痛みもより強く見られます。
       可動域制限が出現し、 (膝は 90 °以上曲げるのが難しい)

・重度損傷完全に断裂している状態となるため陥凹が確認できるほか、
      膝関節を曲げることがとても難しい状態になります。
      腫れもひどく、時間経過とともに内出血も出現していきます。 
      (膝を 45 °以上曲げることができない状態)


・大腿四頭筋損傷の治療


治療内容としては 重症度によりますがまずは痛みの緩和のためにアイシングを行い、患部の部分に対して圧迫を加組織の早期修復を目指します。
荷重歩行の制限により患部の負担を減らし急性期を過ごします。
その後、症状経過によって筋力強化や再発防止のためのストレッチ指導を行い日常生活の復帰を目指します。
※アスリートの場合は競技復帰に向けて徐々に状態の様子を見ながら運動強度を上げていきます。



ハムストリングス肉離れ


運動中・または日常生活の中で、静止状態(あるいはそれに近い状態)から急に走り出したり、段差を踏み外した際に足で踏ん張ってバランスを取ろうとした際に太ももの裏に痛みを感じたことはありませんか?

上記などで、太ももの裏に痛みを感じた場合、「ハムストリングス」という筋肉の損傷が疑われます。
ハムストリングスと聞くと、運動をしてる・または運動をしていた方にはなじみ深い筋肉と言えますが、一般の方の場合、「??」となりますよね?
こちらでは、「ハムストリングス」とは何ぞや?・痛めやすい理由などを解説していきます。

・ハムストリングスとは


ハムストリングスというのは太ももの裏に走行している3つの筋肉で構成されています。


・大腿二頭筋(長頭、短頭)
・半腱様筋(最も痛めやすい)
・半膜様筋


ハムストリングスは主にお尻の付け根の部分(坐骨結節)から太ももの裏を経由して ハムストリングスはすねの外(腓骨)につくものと、脛の内側につく 2 つのパターンがあります。
肉離れが多い部分としては内側を痛める割合が多い傾向にあります。

・ハムストリングスの筋繊維の形状


前述の筋繊維の分類では「ハムストリングス」の筋繊維は羽状筋と紡錘状筋が混在する特殊な構造をしています。
大腿二頭筋長頭および半膜様筋は羽状筋であり、半腱様筋および大腿二頭筋短頭は筋線維長が長く、長い収縮範囲を持つ紡錘状筋であると言われています。
紡錘状筋の特徴としては筋繊維の走行が平行に真っ直ぐ走っているため、力の伝達方向に適しているといったメリットが挙げられます。

・ハムストリングスの受傷要因


受傷要因は、大腿四頭筋と同様に、 筋疲労・左右の筋力のアンバランス・前後のアンバランス・柔軟性不足などが挙げられます。

特に損傷の発生率が多い場面は「陸上の短距離選手のスタートダッシュ時」・「野球の走塁時で一塁ベースに駆け抜ける際」に起きやすい印象があります。

理想としては下半身と上半身が一直線上に真っ直ぐになることでハムストリングスに
対して負担も減り、力の伝達も効率よく行われるフォーム。
ただ、青線のように上半身が前傾に倒れこむことで、ハムストリングス
に遠心性負荷が 加わり損傷するリスクが上がってしまいます。

短距離選手のクラウチングスタートの際は、スタートダッシュ時に下半身が伸びきる形を取ります。
この時に上半身もその延長で真っ直ぐ一本の線のような姿勢を保てれば良いのですが、肉離れを起こす際に下半身が真っ直ぐ伸び起るのに対して上半身が一緒に起き上がることができず、前傾してしまい上半身と下半身が分離してしまいます。
その結果、ハムストリングスに遠心性収縮(筋肉が伸びきった負荷)が起きた状態で地面を蹴りだす動きになることで負傷が起きると考察しています。

このように上半身が前傾し、足を前に出すとハムストリングスは
引き延ばされた状態に加え、地面からの反発でより引き延ばされ負傷します。

野球の走塁の場合では、一塁ベースを必死に駆け抜ける際に大きく足を踏み出し、着地する際に地面からの反動で膝が完全に伸びきる状態となります。そこで遠心性収縮を強めてしまう結果 、負傷するというケースが多いと言われています。ハムストリングスの怪我は野球のプレー中で、65%が走塁中に起こり、そのうち59%が一塁ベースの駆け抜け時に起きると言われています。

ハムストリングスの怪我は野球の中で 65%が走塁中に起こり、
うち 59%が一塁ベースの駆け抜け時に起きると言われています。


上記、二つのスポーツでの受傷フェーズで損傷メカニズムを説明しましたが、日常生活でも同じような形式でも十分に起こりえます。
例:・「下に落ちている物を拾う際に足をのばしたまま、上半身だけを
     曲げてものを拾う時」  
  ・「歩いている時、急な段差でバランスを崩し下半身で踏んばって
    支える際」  などなど。


・ハムストリングス損傷の症状


受傷後の症状は、太ももの裏側の内側に痛みを訴えることが多く、歩行時痛・疼痛性跛行(びっこを引いた状態)が出現します。
損傷部分を押すと痛みを訴え、腫れや内出血・他に筋肉をたどりながら触ると凹んでいる部分が確認できるなどの症状が見られます(中等度~重度)。
うつ伏せの状態で寝た際に、筋肉が伸びる(伸張性ストレス)と疼痛増強により膝を伸ばせないといった状態になってしまいます。

受傷して数時間経過したときの状態(中等度の損傷)

また、受傷時に損傷した部位からは出血が起こります。
これについては、患部の修復を行う際に「血種」を形成し、修復促進の補助を担います。
ハムストリングスの肉離れは再発率の高い怪我と言われています。
その理由は、上記で記した「血種」が残存し、損傷した筋肉自体の柔軟性の確保が難しい点が挙げられます。


・ハムストリングス損傷の治療


当院での治療内容は、受傷直後は安静を優先とし、スポーツ活動は中止を推奨しております。重症度が高い場合は荷重負荷軽減を目的に松葉杖を使用をしていただきます。
痛みや腫れが引いてきたら、柔軟性の確保のためストレッチを行っていきますが、修復度合いによって再度、患部を痛めることもあるため運動強度はこちらで管理させていただきます。

尚、当院は再発のリスク軽減するために患部の負担がかからないフォーム習得をするかがカギと考えております。
競技復帰や運動強度の設定は注意して運動指導を行っていきます。



下腿三頭筋肉離れ


ふくらはぎの怪我は幅広い年齢層で起きる怪我になります。
ふくらはぎに筋肉は腓腹筋(外側頭、内側頭)、ヒラメ筋の 2 種類が大きな筋肉として存在します。

ふくらはぎ(腓腹筋、ヒラメ筋)の解剖図


・下腿三頭筋の筋繊維の形状


筋繊維の形状は大腿四頭筋と同じ形の羽状筋です。そのため、大きな力を発揮しやすい筋肉となります。
主に、つま先立ちの時に使われる筋肉ですが、歩行時もつま先で地面を蹴りだす際にも活動するため、日常生活でも自然と使われる筋肉になります。
スポーツ時は、テニス中に起きやすい怪我と言われており、
別名「テニスレッグ」とも呼ばれます。

テニスのサーブ時の着地の時に痛めることが多い。


この時の伸びきっている左足に負荷がかかり怪我として起こることも


・下腿三頭筋損傷の病態

肉離れは遠心性収縮がおこる、 二関節筋( 2 つの関節をまたいでつく筋肉のこと)で起こしやすいと言われています。
腓腹筋に力が入った状態で膝関節が伸ばすと逆方向に筋肉は引き延ばされます。特に、テニスのサーブの時はこのような形にとなりやすいため発生率高いです。また、ボールを追っている時などのダッシュしている時にふくらはぎが伸び切っている足に起こりやすいです。

その他にも、ランニングやダッシュなど走行時にも発生しやすく、十分なウォーミングアップができていない状態や、疲労が蓄積され筋肉の柔軟性が低下している時に急激な筋収縮が起きると痛めるリスクが高くなります。

腓腹筋の内側頭に損傷が起きやすい。

下腿三頭筋は腓腹筋の内側頭、外側頭、ヒラメ筋の三つの筋肉で構成されており、 内側頭での負傷率が一番高いと傾向にあります。


・下腿三頭筋損傷の症状


主症状は 足首を上げる動作時に痛みや足関節の可動域制限が見られ、歩行時痛や荷重をかけた際に痛みが出る症状が見られます。

・軽度損傷:比較的腫れや内出血は見られることはなく、痛みがあるが
      日常生活では 支障はなく過ごせることが多いです。

・中等度損傷:筋肉の部分断裂が起こっているもので軽い内出血や
       筋肉をたどっていくと凹みが触れることができます。
       患部を押すと痛みが生じ、また歩くのも難しい状態です。

・重度損傷:筋肉が完全断裂もしくは重度の部分断裂が見られます。
      腫れがひどく内出血も見られ、損傷部に凹みも確認する
      ことができます。

怪我をして数日たつと内出血が出てくる



・下腿三頭筋損傷の治療


治療内容としてはまずアキレス腱断裂と類似するため鑑別検査を行います。 当院での治療内容は、受傷直後は安静を優先とし、スポーツ活動は中止を推奨しております。重症度が高い場合は荷重負荷軽減を目的に松葉杖を使用をしていただきます。

急性期症状の軽減が見られたら、徐々に運動療法に移行し、足首の運動を行いつつ温熱療法にて筋の回復と柔軟性の獲得を狙います。
その後、段階的に運動強度を上げていき、チューブトレーニングなどで筋力強化を行い競技復帰を目指します。


当院では、これらの症例に対し一定の治療期間をしっかり設けて、患部の除痛・安定した筋力バランス獲得・エラー動作の修正を段階的に行い完治および、再発防止を目指してまいります。
ご来院の際は、当院独自の治療メゾット「施術×トレーニング」でお身体の変化を実感してくださいませ♪

当院の「肉離れ」の独自治療メゾットの一部を公開♪

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