見出し画像

【開催レポ】竪穴式住居でキャンプ

今回の記事は、10/5〜10/26にかけて新潟県糸魚川市で開催された宿泊型プログラム「竪穴式住居でキャンプ ~5,000年前の生活からサステナビリティを考える~」の様子をレポートしたものです。

糸魚川市は山と海に挟まれながら新潟県の最西端に位置する市で、糸魚川静岡構造線が通る日本の東西の境界線上に位置しており、地質学的に非常に特殊な地域として全域がユネスコ世界ジオパークにも指定されています。また北陸最大級の縄文集落跡「長者ヶ原遺跡」もあることから、フォッサマグナミュージアムを中心に様々な領域の研究者も移り住んでいます。

2,000万年前にも遡る大地の変動が、現在を生きる私達の生活にどのように結びついているのか、長い長い土地の歴史を地質学的視点から紐解く中で、今回注目したのは「資源」というキーワード。大地のはたらきが生み出す石の資源、海がもたらす水産資源、森が与えた食資源などから、糸魚川を舞台に、枯渇する地球の資源をサステナブルに活かす社会を考えることができないか?そこで今回生徒達は実際に竪穴式住居に泊まり、縄文時代の知識を活かすサバイバルに挑戦しました。

約5,500年前〜4,000年前の縄文時代に自然環境との関わりの中で育まれてきた人類と資源との関係性に迫り、魚醤づくり体験、地域の高校生が立ち上げた能水商店への訪問など、現代を生きる糸魚川市の人々が、どのように土地の資源を生かし、サステナブルな発展を遂げてきたのかを学びました。

班ごとのチャレンジ

プログラムは5日間にわたって行われました。
day1&day2では、オンラインワークショップに始まり、全体ミッションと班ごとのミッションが発表され生徒達はそれぞれ自分の希望する班に入り、グループディスカッションを通して当日までの準備に入りました。

全体ミッション
各班のミッション

資源に挑む

day3からはいよいよ糸魚川市での活動が始まりました。
長者ヶ原遺跡では実際に一晩を過ごす竪穴式住居、5000年前の環境を再現するために整えられている森を歩き、5000年前の生活に思いを馳せました。

実際に宿泊をした竪穴式住居の前でピース。
実際に使われていた水源地や糸魚川市が再現を試みている縄文の森を散策。
食べられそうな木の実は落ちているかな?

班ごとの活動ではそれぞれの事前調査や準備を実践しました。
環境班は事前に現地へ100kg分の薪を依頼していたものの、火起こしに手こずり、食料班に「火はまだですか?」と催促されながら日没との戦いが繰り広げられました。

汗だくになってマイギリ式の火起こしに挑戦中の環境班。
最後には火打ち石での着火に成功し、無事に火を起こすことができました。
各竪穴式住居にも暖を取れるように火を焚べて周りしました。

道具班は食糧班などへ事前に聞き込み調査をし、現地で用意可能な「石」と「竹」を材料に、砕く、削る、切るなどの動力を使わない方法で、カトラリーや刃物を作り出しました。また野生動物を追い払うための音が出る獣害グッズも製作し、各竪穴式住居に配りました。

使えそうな石を吟味する道具班。
縄文時代から使われていた黒曜石を砕いた刃物が完成!
食糧班に実際の調理でも包丁の代わりに使ってもらったところ、ちゃんと切ることができました!

全員分の夕飯を用意するという重大な任務を担ったのは食糧班。調理方法は縄文方式を重んじて、主に「焼く」か「煮る」のみ。けれど事前の調査や実験を積んできたメンバーによりミッションは見事にコンプリートされ、みんなお腹いっぱいになりました!

事前に竹でご飯を炊く方法を実験してきたメンバーは、竹を切り出すことから手がけました。
見事に炊き上がった新潟の新米は、甘くてとっても美味しかったです。
ワイルドに焼かれた魚や肉達。
はらわたを取り除いた素材を自分達で捌くところから挑戦しました。

水班は事前に用意しておいてもらった雨水を濾過するために、鉱物の研究者と一緒にオリジナルキットを製作しました。また日本海から取ってきた海水から塩作りにも挑戦。ひっきりなしに動き回る他の班とは異なり、じっと待つことと向き合う活動となりました。

軍手や砂利を使ったオリジナルの濾過キット。
塩作りの様子。味は少し苦味があるものの、
調味料を使わなかった食糧班の作った夕飯とは最高のマッチでした。

あっという間に夜になり、頭上には満天の星空が輝いていました。けれど竪穴式住居での宿泊は、寒く、地面も固く、生徒達はなかなか寝付けなかったようでした。縄文時代の人々のタフさを身をもって感じさせる体験となりました。

誰かがすり潰したどんぐり。夕時。

資源を活かす現代の営み

day4は海洋資源を活かすことをテーマに、新潟県立海洋高等学校の実習船や養殖場の見学からスタートしました。

実習船の見学中。
養殖場ではヒラメの赤ちゃんを見ました。

午後は同校の高校生達が実際に開発した、魚醤作りにも挑戦しながら、廃棄される鮭を利用した「循環する資源」のあり方を学びました。

廃棄されるはずの鮭を持ち上げる講師の松本さん。
最初は観察していた人も気がつくと手が伸びて、魚を捌き身を切り刻む作業に参加していました。

2日目の宿泊先は地元の民宿です。1日目はお風呂に入れなかった生徒達。温泉に入って食事を囲み、地元の事業主さんから地元の資源を活かしたビジネスのお話を伺いました。

貸切状態の民宿「対岳荘」。
夕食後は地元の方々と語り合う姿も。

資源ってなんだろう?

最終日のday5は駅北広場キターレというオープンスペースで、まとめの作業をしました。ここでは自由にネットで検索をしながら、青い付箋には「今回触れてきた資源」黄色い付箋には「資源はどこにある?」ピンクの付箋には「資源って誰のもの?」をそれぞれ自由に書き出し、壁に張り出していきました。

「資源ってなんだろう?」とテーブルごとに考えます
それぞれの視点や考えを眺めながらのオープンダイアログ。
コモンズ論のような哲学的な意見もあがりました。
作業の後は参加者全員が修了証を受け取りました。
最後は記念の集合写真。

生徒達からの声

5日間を経験した生徒達からの感想を紹介します。

  • 正直なことを言うと、果たして3日間で仲の良い友達が作れるのか、充実した活動を送ることができるのか不安でした。ですが、1日目、会った瞬間から楽しく会話をすることができ、今まで触れたことのない文化に触れ、興味のなかった分野について知ることができて本当に楽しく、充実させることができました。

  • 縄文時代の竪穴式住居で寝るという体験はとても寒く、そして地面が固く縄文人達凄いな…と思いました。寝ることだけでなく、火起こしやお水の確保、ご飯の用意などがこんなに大変だったんだと思いました。当たり前に食べている食事に感謝だなと思いました。

  • 自分たちの創造力を活かして自信のついた経験になりました!

  • 私の「持続可能な社会」に対する意識・解像度が低いままこのプログラムに参加したのですが、このプログラムを通して、経済や環境的な問題ではなく、企業などさまざまな視点で「サスティナビリティ」を学ぶことができたのが一番大きいです。

  • 縄文時代の人の生活をしてみると、今私たちは資源に恵まれすぎているなと感じました。縄文時代の人は短いサイクルで復活する資源(どんぐりなど)を利用しているのに対し、私たちは何百年のサイクルで生まれたもの(天然ガスなど)を利用していると気づきました

  • 今回自分で体験学習に応募して実際に県外に行って今まで見た事なかったものを実際に感じることが出来ました。広い視野をもって何にでも挑戦することは大事だなと感じました。

  • 今回の体験を通して、みんなが一つの目標に向かって協力することの大切さや、思い切って行動をしてみること、何かを最後までやり切ることの大切さを学びました。

体験を通した学びの先に、画面の向こう側の情報に対する想像力やエンパシー、好奇心のままに動き出す原動力が芽生えていくのかもしれません。学園と一緒にプログラムをゲストあるいはパートナーとしてつくりたい!という方や団体様もしいらっしゃれば、ぜひお気軽にお問い合わせ頂けますと幸いです。