見出し画像

なんで見た目って気になるの?

こんにちは!
本日はアルビノ(注1)の当事者である神原由佳さんをお招きし行った、「見た目」に関するトークセッションについてご紹介します!

神原さんは、ソーシャルワーカーとして勤務する傍ら、アルビノや外見に症状があることで日常生活に支障をきたす「見た目問題」について、取材、執筆、講演等で当事者発信を行われている方です。

(注1)眼皮膚白皮症(がんひふはくひしょう)と呼ばれており、先天性の遺伝子の病気。肌や髪の毛の色を構成するメラニン色素が少なく、目の症状を伴うことが多い。(「小児慢性特定疾病情報センター」「CBCWEB 2万人に1人アルビノという病 認知されていない弱視との闘い」より)

見た目に関するイベントの実施

当学園には幅広く多様な生徒が在籍しています。そのため、生徒や教職員の多様性への気付きと理解促進や、多様な生徒にとって過ごしやすい学校づくりの一助になればと、これまでダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I)(注2)に関する課外学習イベントを数多く行ってきました。

(注2)「ダイバーシティ=多様性」、「インクルージョン=包括・受容」を掛け合わせた言葉。性別、年齢、障がい、国籍などの外面の属性や、ライフスタイル、職歴、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの個を尊重し、認め合い、生かし合うこと。

そこで今回はより様々な視点からD&Iを考えたいと思い、これまで取り組んだことがない「見た目」に関するイベントを実施しました。

この記事では「なんで見た目って気になるの?〜アルビノ当事者と考える”ふつう”とは〜」と題し、アルビノ当事者である神原さんから、「見た目」はなぜ気になるのか、そもそも「ふつう」とはなにかについてお聞きしたイベントの様子についてお伝えします。

神原さんの学生時代から考える「ふつう」とは。

まず、当日の前半は神原さんの学生時代についてお話していただきました。

ざっくばらんに学生時代の思い出についてお聞きしていると「部活の後に部活仲間と買い食いしたのが思い出」「アルビノのこともあり、プールは基本見学だったが、運動は苦手だったのでラッキーな面もあった」など、等身大のお話をしてくださいました。

そんな神原さんのオープンな空気感に、ぐっと生徒の距離も縮まった様子でした。

その後の質疑応答ではすぐに手があがり、様々な質問が出てきました。

ふつうとどう向き合ってきたか?」という質問には、

「高校生くらいまでは、黒髪・褐色肌といった所謂ふつうとされる姿になれないことが分かっていたからこそ、“ふつう”になりたいと願っていた。そんな時に、知り合いの話を通して“選べないものを諦めると選べるようになる”という言葉を知り、とても腑に落ちた。“ふつう”への執着を手放すことで、今の自分の姿でどう生きるかを自分なりに考えられるようになった。その言葉を聞いて以降、ふつうへの捉え方が変わった感覚がある。」

という、大切にしている言葉や、神原さんとしての“ふつう”との付き合い方について聞かせていただきました。

そして何よりも前半で印象的だったのは、全ての質問に対してチャット上で「ナイス質問!!」「とても良い質問と返答で心が晴れました!」など、質問に対する賞賛や共感の声、回答への感想・考えなどをそれぞれが伝え合っていることでした。

「ありのままの自分を愛す」って難しい

休憩を挟み後半は、タイトルにもある「見た目ってなんで気になるの?」について、神原さんにお話を聴きながら、参加者全員で考える時間となりました。

神原さんに、「見た目とどう向き合ってきたか」について聞いてみると、

「アルビノのことと、体型や容姿のことは自分の中では別問題として捉えていて、アルビノのことはある程度乗り越えた部分も大きいと思っている。でも、体型や容姿などは気になることも多く、まだまだ悩みはたくさんある」

という、今まさに神原さんが見た目とどう向き合っているかを素直に話してくださったことで「体型気になりますよね…ほんとにわかります」など、多くの共感が生まれました。

また、そこから「自身や他者に対して見た目でジャッジしない・フラットな視点を持つ」ためのヒントについて聞くと、

「例え同じ見た目でも、その日のコンディションとかで、今日はいけるとか、今日はもうダメだとか、揺らぐことは結構あると思う。最近は「ありのままの姿を愛そう」という考えもよく聞いて、かっこいいなと思う一方、自分で実践するにはすごく難しいとも感じた。」

「そこでたまたま、『ボディニュートラル』という存在を知った。私はその言葉を『自分の見た目のことを好きでも嫌いでもどっちでも大丈夫』という意味で解釈していて、それなら自然体で無理がないかもと思えた。だから、まずは『好きになれない自分もいる』と受け入れてあげられれば良いのかなと思うし、私もそうしたら楽になれた気がする。」

と、ボディニュートラルな考え方について教えてくれました。
「ありのままを愛すって難しい」という神原さんのオープンな言葉に激しく同意している人も多かったため、「好きになれない自分もいて良い」というメッセージには「その考え方素敵!!!!」「好きでも嫌いでもいい、大切ですね」「自分の見た目を好きにならなくても良いのか!!!」など、新たな気づきの声をたくさん聞くことができました。

まずは自分を大事にすること

あっという間に時間は過ぎ、最後に神原さんからメッセージをいただきました。

「見た目問題とかアルビノのこととか、社会的マイノリティの方のことについて知って欲しいということはありつつも、皆さん自分自身にも優しい人になって欲しいと思います。きっと自分に優しくできたら周りの人にも優しくできると思うし、みんながそれぞれ自分に対して寛容であれると、寛容な社会になっていくのかなと思っています。」
と、最後まで温かい言葉で寄り添ってくださった神原さん。

チャット上でも「自分の事、みんなでだいじにしよ…」「時間が過ぎるのが早いです!」「あっという間すぎて終わっちゃうのが寂しい」などの声があがる、充実の2時間でした。

生徒たち自身が作ってくれた「温かい空間」

今回見た目に関するイベントを実施するにあたって、
・見た目という深いテーマを取り扱うこと
・今まさに悩んでいる生徒も多く参加すること
から、参加する生徒一人一人が傷つきを負うことなく学びを深める場が作れるかどうかが一番大きな課題でした。

それに対し、安全な場を作ることができるよう、運営側で様々な準備を行いました。
全体の設計や質問の仕方など、意識したポイントは複数あるのですが、中でも入念にアナウンスを行ったのはグランドルール。

会に参加する全員が安心して居られるように定めるルールです。
今回は以下のグランドルールを案内しました。

口頭で説明をする際も、ルールがプレッシャーにならないよう、例えば②であれば、その場に居て話を聞くことや自分なりに考えてみること、質問をすることなど、それぞれができる範囲でのチャレンジをしてほしいと伝えるなど、伝え方も調整をしました。

そんな運営上の工夫や事前準備もあってか当日は、
生徒が自身の体験や見た目問題に対する考えについて勇気を出してお話をしてくれたり、
それに応えるようにチャット上でもそれぞれの意見に賛同したり、感謝や称賛を伝えたり、あるいは、自身の体験をシェアしてくれたりと、生徒自身が温かい場を作り出してくれました。

神原さんやスタッフもこのルールを第一に考え、会を進行したことによって、生徒自身も温かい空気を一緒に作っていってくれたように感じます。

可能性を引き出す「気づき」の場を作る

終わった後のアンケートでは

・いろんな人の見た目についての考えにふれ、自分の見た目にもっと寛容になろうと思えた
・自分を好きになれない自分を認知するだけでも一歩進めるという考えがとても素敵で、自分にとって新しい気づきになった
・自分のことをどう見ているかを考えるきっかけになった」といった見た目について向き合うことができた

という声から、

・私にとって、人生を変えうる経験だった
・皆さんが真剣に話を聞いていて、温かな雰囲気に包まれていたのが本当に素敵で涙が出ました

といったイベント全体のメッセージや安心感に対する感想も多くみられました。

また、
・今後も、ルッキズムや見た目問題についての講演会や、生徒同士で話し合えるようなワークショップを開催してもらえたら嬉しい。絶対に参加したい。
・体型や容姿などのことに関してもっと深く話したくなった
といった課題に対して積極的に取り組んでいきたいという声もありました。

終わりに

実施して、生徒たちの感想や意見を見た上で感じたことは、
確実に「気づきの場を必要としている人がいる」ということ。

特に今回のイベントでは、他者とともに生きるヒントや、自身を受容するきっかけとなる「気づき」を得られた生徒が、感想からも多いように見受けられました。
その「気づき」はきっと生徒、そして社会が変化する一歩になります。

今後も様々な場や人と連携しながら、「気づき」の機会を作っていきたいと思っています。
★一緒に気づきの機会を考えてくださる方
★こういった場づくりに関心がある方
★企業、活動の取り組みとして協力したい方
など、ぜひ一緒に活動ができたら嬉しいです。ぜひご連絡お待ちしております!

最後に、お忙しい中ご協力いただいた神原さん、学園TAのみなさん、そして参加してくれた全ての生徒のみんなに、心からお礼申し上げます。ありがとうございました!