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顔も名前も知らなかった人と結婚した話

去年の7月、事実婚していた旦那と籍を入れた。付き合って8年目で正式に夫婦となった。私は付き合い始めた当時顔も名前も知らなかった人と結婚した。

私と旦那が知り合ったのは某ゲームだった。別にアクションゲーとかではなく、アバターを着せ替えしたり家を作ったりするゲームの中旦那はよく配信をしていた。
当時はツイキャスも主流ではなかったし、インスタとかもなかったので海外で使われていた配信サイトを通して配信して、コメントはゲーム内でやるみたいな感じだった。実況するようなゲームでもなかったので、ゲーム内での配信と言えどゲームはあくまでコメントをするためのツールで配信はほぼラジオを聞いている感覚だ。
旦那の配信はめちゃくちゃ面白かったので、私は当時ただのファンだった。配信するよと言われればコメントするためにゲーム内での旦那の家に前乗りして「ごめんなさいお風呂入るから少し待ってて下さい」とか言ってた。
その時そのゲームで配信するのは一時的なブームになっていたので、配信者は結構いた。色んな配信を聞いていたが、圧倒的に旦那の配信は面白かった。

旦那とはスカイプで繋がっていたけれども個人的に話したことはなかった。ある日突然個人的なチャットで「ニラって水玉病なん?」って言われた。
水玉病はアーバンギャルドの曲名で、当時はアーバンギャルドのこと好きな人のことを水玉病と呼んでいた。旦那と個人的に話したこともなく、アーバンギャルドの話なんて配信でもしたことがなかったのでビックリした。というか、まず旦那がアーバンギャルドを知っていることに驚いた。
「そうですけどなんでですか?」って聞いたら「アイコンが赤白の水玉だから」と言われた。確かにスカイプのアイコンを赤白の水玉柄にはしていた。が、それだけでアーバンが好きなことを見抜かれたことはなかった。個人的に話し始めたのはこれがきっかけだった。

旦那は宮崎出身で、18歳からバンドをやるために福岡に12年ほど住んでいたらしい。私は生まれも育ちも福岡だったため、そこでまず意気投合した。更に私はビジュアル系が好きで、旦那がやっていたのはビジュアル系バンドだったのでビジュアル系の話がめちゃくちゃできた。
地元でバンドマンをやっていた旦那から「地元のバンドで何を知っているか」とチャットで聞かれた時に答えたバンドが、あまりにもどマイナー過ぎて旦那曰く「久しぶりに声に出して笑った」らしい。今考えるとなんであのバンドの名前が咄嗟に出たのか分からないが、旦那は私のことを「面白れー女」と言っていた。

相変わらず私は旦那の配信のファンに変わりはなかった。でも、個人的な交流をし始めてからは段々と「この人のこと本当に好きかもしれない」と思い始めた。
福岡に住んでいたことは知っていたが、よく聞くと私が当時通っていた高校から一番近いコンビニで働いていたらしい。それが同時期過ぎて未だに「あの頃実はもう会っていたかもしれない」と話している。そこから旦那は引っ越して、福岡の天神のコンビニで働いていたらしいのだがそこは私が天神で遊ぶ時によく行くコンビニだった。
地元の話もできるし、ビジュアル系の話もできるし、とことん話が合うので画面越しだが本当に話すのが楽しくて気づけばめちゃくちゃ旦那のことを好きになっていた。
また、旦那も私と話すことがとても楽しかったらしく私が「あなたの事が好きです」と言った時「私も好きです」と言われた。当時はお互い顔も名前も何も知らなかった。

私はフットワークが羽毛布団の如く軽いので、両思いなのを知ってから二日後、実際旦那が住んでいる埼玉に会いに行った。今考えるとネットで知り合って顔も名前も知らない相手に急に会いに行くとか、下手したら事件沙汰だ。
ネットで知り合った人に会うのは本当に危険なので真似はしないで欲しい。
別に今の今まで彼氏がいなかったとかじゃないのに、旦那との初対面は異常に緊張していた。実際会うとなんか違うって思われるのが嫌だった。
二日滞在して、その間会って帰る予定が初めて会って二日目にして唐突に「私はこの人と結婚したい」と思った。
それを素直に言うと「俺も同じことを思っていた」と言われた。会って二日目にして二人で結婚することを決めた。意味のわからないくらいのスピードだ。結局二日で帰らず、旦那の家に泊まらせてもらって二週間一緒にいた。

複雑というか、当時は本当に殺されるかもしれないと思っていたので誰にも話せずにいたのだが私と正式に付き合う直前まで旦那には同棲していた彼女がいた。私と付き合いたいからって強制的に追い出したらしく、当時は元カノから「二人とも殺してやる」と言われていた。真面目に人に殺されるかもしれないと怖かったのがもう懐かしい。

二週間一緒にいて、私は一度実家に帰って二日くらいで戻ってきた。戻ってきたというか、完全に引っ越した。親に「ネットで知り合った男性と一緒に暮らすことにした」と言うと烈火の如く怒られた。まあ正直当たり前な話だ。危険すぎる。親とは喧嘩になり最終的に「そんなに言うなら出て行け」と言われて出て行った。
旦那の当時の家(今住んでいる家でもある)は元々同棲用に借りたものだったので、二人暮らしになんの不便もなかった。
知り合ったのが4月で仲良くなり始めて二週間くらいで何も知らないのに付き合い始めて、初めて会ったのは6月。そして同棲を始めたのも6月、全部が全部早すぎる。
同棲を始めることにして、私たちは婚姻届を書いた。結婚するという目標を立てておかないとダラダラと同棲し続けてしまうと思った。

私は旦那と知り合う前、というか旦那の配信を聞いているだけだった時代仕事もしておらず丸一日ゲームしかしてないクソゴミニートだった。
同棲を始めてすぐ仕事を見つけて、仕事をしながら今の今まで全くしなかった家事を全部やった。
一人暮らしの時ですらやらなかった自炊を始めて、掃除に洗濯に全部私がやっていた。実家でも一切やっていなかったので、後々親から「天変地異でも起きたのかと思った」と言われた。
旦那に尽くしたかったのもあるが、私にはもう帰る場所がなかったのでなんとか同棲を成功させたかった。というか旦那と結婚したかった。

毎日仕事しながらご飯を作って、家事をして旦那を支えてようとしていたけれど、まあそんな簡単に結婚とかできるわけなかった。当時旦那はコンビニの店長をしていて、ある程度収入はあれどとてもじゃないけど嫁を作って養っていく給料は貰ってなかったため結婚はまだできないと言われていた。
同棲し始めて、私は「毎日毎日一緒にいるのになんでこんなに楽しいんだろう」と思っていた。旦那も私と一緒にいるのがとても楽しいと言ってた。大変なことはたくさんあったけど、旦那と一緒にいることが楽しくて色々頑張れた。
当時まだ配信を続けていた旦那の横で私はその配信を聞いており、時に笑い過ぎてリスナーから「後ろで大爆笑してる声が聞こえる」とか言われていた。一緒に暮らしていることは全然隠してなかったし、リスナーの人たちは私以上に過去の旦那のことを知っている人が多かったので「〇〇(旦那のハンドルネーム)良かったね」と言っていた。
因みに私は実際会ってから数ヶ月経ってもハンドルネームで呼ぶのも敬語も取れなかったが、旦那から「もし死にそうになった時「ニラに連絡してくれ」と言っても誰にも伝わらんだろ」と言われて本名で呼べるようになった。
旦那は面白おかしく正しいことを言うタイプだ。

色々経って4年目くらいで、旦那が正式に社員として会社に就職した。のと同時くらいで、妙な背中押しがありとりあえず事実婚をすることにした。
私は事実婚に対して前向きな考えを持っている。正直名前が変わるか変わらないかの違いで、役所にも「妻(未届)」で提出し直したし、旦那の扶養にも入った。
その年に結婚指輪を買いに行ったのだが、お互い結婚指輪を買うという経験が皆無すぎて何故かイオンモールで探したのが二人して馬鹿すぎて笑える。結局伊勢丹で買った。そしてウェディングをすることも決めた。
はなから式を上げるつもりが1ミリもなかったので、身内を呼んでフォトウェディングをした。未だにめちゃくちゃいい経験だったと思っているし、式をしなくてもウェディングドレスを着れたのは本当に嬉しかった。

去年、私のお家騒動があり正式に籍を入れることにした。そもそも事実婚していたので、生活は何も変わらないし一人で婚姻届を出しに行って、全ての名字を変える手続きをした。超大変だったので、日本は早く夫婦別姓を認めて欲しい。
年度末の旦那は仕事が猛烈に忙しい。普通にブラック企業なので、辞めてほしいなぁとか思っている。
あんなに「生活が安定しないと結婚なんて無理」と思っていたのに、辞めてほしいし辞めてもどうにかなるやろとか思ってるのが自分自身の大きな成長だと思う。
私はどうでもいい事ですぐ不安がって、しょうもないことを延々と気にするタイプだ。病気なのもあるのだが、将来のことを考えすぎて不安になってしまう。でも今は死ぬまで旦那と一緒にいたいし、逆に将来のことを考えると仕事は辞めてもらってもいいなと思う。
とにかく一緒にいる時間が欲しい。私は旦那と家で過ごす時間が好きだ。本当に楽しい。今年で一緒に暮らし始めて9年も経っているのに未だに楽しくて面白い。

別に運命とか一度も感じたことはない。でも今の旦那との出会いと結婚は運命的だなとは思う。
顔も名前も知らない人と付き合って、一緒に暮らして、結婚もした。
旦那は私のことが大好きだ、私も旦那のことをが大好きでそれは出会った頃から何も変わらない。


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