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政府が示した『2030年のメタバース観』納得の理由

 2023年5月、総務省がパブリックコメントで「2030 年頃を見据えた情報通信政策の在り方」に関する意見を募集していました。

「2030 年頃を見据えた情報通信政策の在り方」  部会報告書(原案)

 この報告書からは、AI・メタバース・Web3等世界的にも注目を集めてる要素を日本でどう扱うかについて民間や官僚の間を隔てずに本気で考え、政府にも取り込もうとしていることが強く伺えます。

 特にAIに関心が強く、政府としての関わり方やどう取り入れていくようにするか、分からないながらも模索しているような現状を感じます。

政府が示した『2030年のメタバース観』

(3)新たな生活・経済活動の場の登場(メタバース等)
① アバターを通じて、フィジカル空間ならではの様々な制約から解放されて、サイバー空間で生活あるいは社会経済活動を行う。
(中略)
ウ AI や XR 技術の発展により、コンテンツの表示方法が変化し、提供されるコンテンツをそのまま視聴するのではなく、自由な視点から視聴したり、好みに応じてコンテンツを組み替える、自身がコンテンツの一員となることができる
エ サイバー空間で閉じた活動では、エコーチェンバーが発生しやすいと目されている中、AI のサポートによる多数の人々の連環により、ユーザの嗜好を踏まえつつも、多様な情報に接触し、意見の異なる人々との交流も広がる。

「2030 年頃を見据えた情報通信政策の在り方」  部会報告書(原案) 太字は著者

 かなり解像度が高く、現在の延長線上となる使用方法を想定しているのが伝わります。

 このような素晴らしい報告書案ですが、憶測、仮定が多く含まれていることも事実であり、説明不足な部分や分かりずらい場所などもありました。今回はメタバース関係の記述のみ拾い上げます。

メタバースは、現時点で定義は確立されていないものの、ユーザ間でコミュニケーション可能なインターネット上の仮想空間で、現実と同じ体験、現実では実現困難な非現実体験、あるいはシミュレーションが可能となるため、ゲームをはじめとしたエンターテイメントのほか、ビジネス(web 会議や商品販売等)の活用、教育、働き方、地方創生等の社会課題の解決にも資するものと期待されている。

p14

 「メタバースは、現時点で定義が確立されていないもの」、とある通り多種多様な定義が存在しますが、日本バーチャルリアリティ学会が定める定義や、バーチャル美少女ねむ氏が提唱する定義等が主流になっていくことが望ましいと考えられます。

下記の条件を満たすものを、特にメタバースと定義している
1三次元のシュミレーション空間(空間)を持つ
2自己投射性のためのオブジェクト(アバター)が存在する
3複数のアバターが、同一の3次元空間を共有することができる
4空間内に、オブジェクト(アイテム)を創造することができる

バーチャルリアリティ学

(1)空間性:三次元の空間の広がりのある世界
(2)自己同一性:自分のアイデンティティを投影した唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界
(3)大規模同時接続性:大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界
(4)創造性:プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく、ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり創造できる世界
(5)経済性:ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界
(6)アクセス性:スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶ事ができ、物理現実と仮想現実が垣根なく繋がる世界
(7)没入性:アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており、まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界

メタバースの定義七要件 - 『メタバース進化論(技術評論社)』

 しかしこのような定義はまだ一般的に周知されておらず、自称専門家などが自分の都合のいいように定義を広めている状態となってしまっています。まずはそういった状況を政府として変えていかないことには、今後もこういった曖昧な状況が続いてしまうと思われます。

 その中の「メタバースは黎明期であり、国際的にも共通する概念や定義がない」という文があるのですが、国際的にも概念や定義が無いという事は無く、各種学会が定義を提唱しています。定義の問題こそ、日本がイニシアティブを持って取り組んでいくべき部分ではないでしょうか?

https://ieeexplore.ieee.org

 AI Web3 メタバース といった必ずしも同一分野ではない知識を網羅し、専門性の高い分野についても取り組んでいく姿勢が強く見えました。
 一方で文面からは苦戦している様子も伝わってきます。新しい技術がひっきりなしに出てくると検討の余地もなく導入されて失敗してしまう可能性があり、慎重に検討を進めているようです。

 今後、技術が進歩していく中で、AIによるフェイクニュースやメタバース関係での犯罪が大きくなっていくことも十分考えられます。技術としては二つともとても素晴らしいものなのに、悪用されてばかりでその素晴らしさが伝わる前に悪者扱いや犯罪の温床として認識されてしまうのはとても残念です。特にメタバースはニュースになったように児童ポルノとして使われてしまったことを考えると、今後もメタバース空間特有の、犯罪や被害、出会いなど規制などが進む可能性が大きく考えられます、行き過ぎ規制にならないようにある程度の周知を徹底して自己防衛ができるようにしつつ楽しめるようにすることがもっとも重要だと思います。

 「知らない人とSNSをしない」という教育から「何がだめで何がいいか」を正常に判断できる教育や、大人と相談して使っていける環境を整備するなど、切り離すのではなく、共存してうまく付き合う方法を探していかないといけないと思います。

 AIもメタバースも今後どんどん発展していくことを考えると著者としてもワクワクが止まりません。気軽に人と会えて、実際には行えないようなシュミレーションを気軽に楽しみ、AIの協力で色々な複雑なシステムが組みあがりそれをみんなで使える、何かしらの事情で部屋から出られない人でも誰かと会える、景色が見れる、そんな風に人と人がつながっていくようなメタバースになったり、人を全力で支えてくれるAIになってくれるといいと思います。

著者:練り物ちくわ
校正:SUKANEKI


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