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長山一樹氏セミナー「写真家が伝えるモノの見せ方〜モノ・ヒト・コトに焦点を〜」

3月9日、主催である名古屋伝統産業協会様のお力添えにて、長山一樹氏のセミナー「写真家が伝えるモノの見せ方〜モノ・ヒト・コトに焦点を〜」をMIJPプロデュースにて開催いたしました。

長山さんはphotographerとして第一線でご活躍されており、近年ではYouTubeで話題の「THE FIRST TAKE」の映像・写真の撮影監督を担当され、多くの層から支持を得ています。

会場は満席、始まる前から熱気がある中、長山さんは、スーツ姿でありながら、抜け感のある着こなしをされていて、座っているだけでも世界観やオリジナリティを感じさせる方でした。

セミナーは、わかりやすくChapter4に分けてお話しいただき、シンプルでありながら、上質で深い内容でした。

長山一樹さん

<Chapter 1 ブレない軸は「捨てる」>

軸は考えて生まれるものでもなければ、突然、手にするものでもない。
気づいたら、勝手にぶれなくなっていた、身についていたというもの。
ぶれない軸は追いかけず、まず忘れてください。

この長山さんの言葉に、冒頭から引き込まれてしまいました。

ぶれない軸を持つには順序が必要。
頭で考えず、まずは膨大な行動量が必要。次にスピード。
誰よりも早く、そして丁寧の速度を上げていくこと。
そうやった人が、気づいたらオリジナリティを持ち、上質なものを持っていく。

経験が少ないのに、文字情報だけで効率的にオリジナリティやクオリティを上げようとしても、それはコピーになってしまう。
順序を間違えがちな時代。
飛び道具を使って一発当てたいと思う人が多い。でもそれは、近道であるようで遠回り。
ものづくりやクリエイティブにおいて、夢のような飛び道具はない。
まずは土台を固めたもの勝ち。
そうすることで、びくともしないものが出来る。

長山さんの言われる通り。
情報過多な世の中で、軸に迷うと思っていた自分のおこがましさに、ハッとなりました。
軸を持たなければと思うあまり、それが目的になってしまっては、本末転倒。軸とはそういうものでは、確かに、ない。

もう一つ、長山さんがブレない軸を作った方法。

やりたいことを書き、それを片っ端からやってみる。
やることが増えると思いそうだが、やりたいことしかやらなくなっていく。
そうすることで、自分のイメージがついてくる。

私にとっては逆転の発想でした。
やりたいことをやっていくと、バラついてしまうイメージがあったからです。
でも、大人になり、自分の素直を見せていくことが難しかったり、ちょっと怖い気持ちがあったりします。
やりたいことをやることが、素直な自分を見せていくことにつながっていくのかもしれないと、新たな視点をもらいました。

真剣に聴き入る会場


<Chapter 2 ビジネスと芸術の境界線>

境界線はない。
芸術は好きなことができて、ビジネスは好きなことが出来ないは大きな間違い。
芸術であれビジネスであれ、あなたの色が出たものを欲しいと言ってもらうことが理想。
求められることは変わらない。

長山さんに、こうはっきり断言されると、胸がスッとする思いです。
私の中でも、作家と職人は何が違うのか?迷いと課題がありました。それに一つの答えを提示された思いです。
同時に、自分を上げていかなければいけないという重さも受け取りました。

色を求められるようになったから、境界線を感じなくなった。
言われたことだけをやっているようだと文句が生まれてしまう。

徹底した経験があるからこそ言える言葉に、さらに重さを感じました。
では、どうすれば自分の色が出るか。
それについても長山さんは、具体的な方法をお持ちでした。

インプットすることから始めるのではなく、やらないことを決めることから始める。
引き算をすることで、マトが的確になる。やることが明確になる。
そうすると本人ではなく、周りが少しずつ語り始めてくれる。
自分が色をつけようと考えるのではなく、引き算することで浮き出てくる。

色をつけるのに、引き算!またも逆転の発想でした。
自分を魅せるために盛りがちな世の中、言われてみれば、余計に見えにくくなっている感はあります。
自分で色をつけることに必死になるのではなく、周りに気づいてもらう。それには、周りの人に見えやすくしていくことが大切なのだと気づきました。

セミナーリーダーの栗田さん


<Chapter 3 工芸の未来「継承と破壊」>

変化を起こす際に、今まで積み上げたものを壊すという必要は一切ない。
いかに新鮮な見え方にアップデートをするかが大切。

技術を大事にするあまり、アウトプットが硬くなりがちで大多数の人にとってはつまらない。アウトプットは柔らかく。

私を含め、伝統産業においてアウトプットが硬いことは、当事者が気づかないことが多いように思います。
では、どうしたら柔らかくなるのか?

それは掛け算だと、長山さんは言います。

今の仕事という一つの点の中で何かを変えるのではなく、違うところに点をおいてみる。
掛け合わせる片割れを見つけること。
それには、趣味を趣味で終わらせず、仕事よりも本気でやることが重要。
そしてそれをアウトプットすること。
初めは、とやかくいう人もいるが、否定されるのは、中途半端だから。
やり続ければ、否定派の人たちが諦めて、肯定派になる。

そうなれば、そのうち点と点が線になっていく。
勝手に周りが結びつけて考えてくれるようになる。

言われる通り、一つのことで考えると行き詰まることはよくわかります。そうなると、壊すしかないか?奇抜なことをしないといけないのか?とさらに迷い、苦しみます。
他に点を置いてみるというのは、私の中で、やってはいけないことのように感じていました。でも、それは否定が肯定になるまでやり続けたことがないからだと、小さな視点で見ていたことが恥ずかしくなります。
点と点が線になるまで、やり続けてみたくなりました。

計算し尽くした遊び心あるスーツの着こなし

<Chapter 4 これから価値を産む方法>

ものに価値があった時代から、人に価値がつく時代になる。

素晴らしい技術で作られたものでも、作り手に魅力がなければゴミ同然になる可能性がある。

今までは仕事が早い、正確という能力で、人に価値がついていたが、どう頑張ってもコンピューターには敵わない。
それは価値でなくなる。

これは、私も痛切に感じていることです。
スピードと正確さを求めるならば、設備投資すればいい時代。そこで勝負をするのは、資金的にも困難ですし、ちょっと違う気がしていました。

では、何が価値になっていくのか?

それは人でしか出来ない価値。
言葉には出来ないけど、なんかいいよね、という人の味。

この味の出し方も、長山さんが徹底して意識されていることにヒントがありました。

いかに自然に見えるかを意識して、全く目に見えない、誰もみていないところをとことん細かくやること。そこを怠らない。
計算していない感を出すために、めちゃくちゃ計算してやる。

人間はそもそもアナログ。
やっている中身は、とことんアナログ。アナログを突き詰めていく。
そしてそれを、デジタルを使って、今っぽくアウトプットしていくことを忘れない。

柔らかい口調ながらも、第一線で活躍されている長山さんだからこその強さを持つ言葉。経験しているからこその嘘がない、わかりやすさ。
今回、4つに分けてお話くださいましたが、言われていることは全部つながっていました。

行動からしか始まらない。
まずは、やりたいことを手帳に書くことから始めたいと思います。

ありがとうございました


長山一樹氏プロフィール
1982年生まれ。神奈川県出身。 2001年に麻布スタジオに入社。
その後、2004年に守本勝英氏に師事する。2007年に独立し「S-14マネージメント」に所属して以来、さまざまなファッションや広告などで活躍する。
2018年には、初の個展「ON THE CORNER NYC」を開催。 また同年に、自身が長年愛用しているカメラのメーカー 「HASSELBL AD」の、ジャパン・ローカルアンバサダーに就任する。
近年では、YouTubeで話題の「THE FIRST TAKE」の映像・写真の 撮影監督を担当し、チャンネル登録者数は730万人以上と多くの層から支持を得ている。

INSTAGRAM kazuki_nagayama /  mr_nagayama

名古屋伝統産業協会
名古屋の伝統産業関係業界が密接に連携し、伝統技術技法の継承販路の開拓など事業の促進をはかり、その振興と市民生活の向上、地域経済の発展に寄与することを目的として昭和54年9月に設立されました。 

HP   https://nagoya-dentousangyou.com/index.html
                       


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