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社会とのつながりを紡ぎなおす――就労支援の現場から【NPOほうぼく活動報告】

NPOほうぼくは「ホームレス(社会的孤立)」と「ハウスレス(経済的困窮)」の問題を分けて考えています。住居はあっても必ずしも「ホーム」があるとは限りません。今回の活動報告は、そんな社会とのつながりを失ってしまった人たちが職を持ち、働くことができるようになるためにサポートする就労支援の現場からです。「働くこと」は人との絆をつくり出すプロセスのひとつです。そのため、仕事を持つことは経済的自立を実現するだけでなく、社会とのつながりを持つことでもあります。そんな人生の新出発の支援をしている大山知絵さんにお話しをお聞きしました。

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社会とのつながりをつくる支援

――――――まず、就労支援ってどういうものなんでしょうか。

大山:はい、この支援事業は北九州市から委託されて2015年に始まりました。うちは生活保護世帯の方、また生活保護は受けていないけど引きこもりのようになかなか家から出れずに困窮している方なども対象に就労のサポートをします。仕事をしたいけれど、自分に合った仕事がわからない、社会に出ていくきっかけがなかなかつかめない、人とのコミュニケーションが難しくハローワークに行くこともハードルが高かったりする、そういう人たちの支援をするのが基本的な仕事です。当事者と話し合いながら、少しずつ社会とのつながりをどうやってつくっていくかを相談して、進めていきます。

――――――支援内容はどのようなものでしょうか。

大山:面談とプログラムをセットにしています。まず話を聞いて、その人の課題や得意分野を整理すること、そして本人にもそれを理解してもらうよう努力します。最初からどんどんハローワークに行ってくださいみたいにすると、場合によっては失敗経験を増やしてしまい、余計に苦しくさせてしまうこともあるからです。同時に、研修プログラムも行います。ビジネスマナー研修からものづくりなどの簡単な作業まで、様々なプログラムがあります。一緒に過ごす時間、集団でなにかをやる時間を通して、一人ひとりの課題や得意分野が見えてきます。だいたいの人は1年ぐらいでプログラムを終えます。

物資整理

コロナ禍における支援、その難しさ

――――――新型コロナの感染拡大以前と以後では支援のあり方は変わりましたか。

大山:もう、まったく変わりましたね。結局、私たちの支援は「会う」ということを基本にしていたので、それができなくなると支援内容も大きく変えざるを得えません。緊急事態宣言の前は集団での取り組みは控え、個別支援に切り替えるということをしていましたが、緊急事態宣言後はそれもやめようということになりました。ですので、現在は電話と郵便が基本になっています。郵便でのやりとりでは、例えば自分の取り扱い説明書ということで、何に興味があるのかや一番大事にしている時間を書いて、こちらに送ってもらったりしています。ところが、これが意外とよくて、みんな深く考えて書いてくれていて、その人の人となりがとてもよくわかるんです。なので、これは普段の支援でも使えるかもと思ったりもしています。でも人によってはそういうことが苦手な人もいたりするので、もうその時は電話したり、メールしたりしますね。それでほとんどは連絡が取れています。

――――――難しい中でも新しい発見もあったんですね。就労支援ということで、支援している人たちの就職活動へのコロナの影響はありましたか。

大山:本人への影響としては、当然、怖くて家から出られないという人はいます。 またそれとは別に、求人に応募しているけど面接の日程が延びているとか、ちょっといつになるかわからないという話は聞いてますね。あとは、見学や体験みたいなことができなくなって就職活動が進まなくなったりもしてます。 なので、当初予定していた計画が2、3ヵ月止まっている感じです。

点繋ぎ①

簡単な課題の提出もしてもらう。個性の違いがここからも。
カバー画像のひまわりの折紙は、コロナ感染防止で集合できなくなったのでパーツ見本を郵送して作品づくりして頂いたもの。

「細く繋がっていることが心強い」――再出発のために、再出発のあとに

――――――大山さんはどんな時に支援活動のやりがいを感じますか。

大山:やっぱり支援した人の変化が見えた時です。1年でどう変わるの?と思うかもしれませんが、本当に人って変われるんですよね。私たちが期待していた以上のことを返してくれる人もいます。それと、支援が終わった人から連絡がきて頑張っていることを知った時はすごく嬉しいですね。私たちが関わった人たちには毎年、年賀状と暑中見舞いを出しているんですが、その返事の中で印象に残っているものがあります。もう何年も前に関わった人なんですけど、「細くつながっているんだなというのをいつもはがきで確認できています。それが心強いです」というお返事をくれたんです。私たちがやってきたことが繋がっているんだと感じました。私たちとしてはいつも後ろで支えているよ、という気持ちなんです。実際に、支援を終了した人が困った時に連絡をくれる場合もあります。そうやって困った時に助けを求められるのは大事なことなんです。私たちとしても、そういう場所でありたいと思うし、支援中にそういう関係を作れるかどうかはとても大きなところです。なので、マニュアル的な支援のあり方ではなく、その人に何が必要か、その人が幸せになるためにいま何ができるかを常に考えますね。支援が終わっても、どこかで支援が繋がっていけばいいなと思っています。

――――――とても大事なお話しだと思います。では、最後に何か伝えたいことがあれば教えてください。

大山:これはコロナに限らずなんですが、社会に「ちょっとした配慮」がほしいんです。私たちが支援している人の中には、発達障害など少しだけ人とのコミュニケーションが苦手だったりする人たちもいます。でも、なかなかそれを理解してもらうことが難しい。やっぱり仕事となると効率の世界なので。でも、一緒に働く人がちょっと配慮してくれるだけで全然支障なく仕事をできる人たちもいます。やっぱり、人には得手不得手があるから一人ひとりのいいところが活かされて、みんなで助け合って、みんなで幸せになれる社会になればいいなと思います。今回の新型コロナで働き方をはじめ、社会の状況に応じて生きるには、いろんな課題があるということを多くの人が感じ始めているように思うところもあります。そういった中で生きづらい人が少しでも生きやすい社会になるといいなと思うし、自分もそこに少しでも貢献したいなと思います。

s-パソコンプログラム

意外なところで得意分野が分かったりもします。(コロナ禍前に撮影)


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