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支援付き住宅 首都圏の状況(認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)

抱樸が初のクラウドファンディングに挑戦した「コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援」の中心事業「支援付き住宅の全国展開」において、各地で担っていくパートナー団体の一つであり、首都圏を中心に活動する認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの大西さんにお話しをお伺いしました。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの活動

当団体は2001年に設立し、生活相談支援事業としては、年間で約4000件ほどある生活相談を受け、面談・電話・同行支援を行っています。

住まいに困っている人の入居支援として、これまでのべ2400世帯に対して保証人の提供や、約900世帯の緊急連絡先の引き受けを行ってきました。
2018年には、認定NPO法人として初の宅地建物取引業の免許を取りました。これを受け、当団体が物件探しを行うこともあります。

もやいでは、こうして、生活にお困りの方の居場所を確保するための支援事業や政策提言を行なっています。

コロナ禍での支援事業の変化

コロナ禍で相談件数は明らかに増加し、例年の2倍ほどに相談が増えている状況です。感染症対策も兼ねて、相談事業の一部をメールやオンラインで行うなどの対応をしています。

また、通常の活動にプラスして、毎週土曜日に新宿の都庁の下で食料品配布を行なっています。
配布場所の近辺で野宿をしている方というのは数十人程度であるため、コロナ以前は食料品配布を行うときはその方々がお見えになるくらいの規模でしたが、2020年の4月の段階で既に100人ほどがきていました。最近では400人近くの方が受け取りにいらっしゃいます。
受け取りに来る方の多くが、野宿をしているわけではないけれど、ネットカフェに寝泊まりしたり、友人宅を転々としたり、近いうちに会社の寮を出なければならないなど、さまざまな理由で住まいを失っている方々です。

例年に比べて相談件数は1.5倍から2倍ですが、食料品配布はコロナ禍でこの活動だけでも延べ2万2000人分の食料を支援していますので、今までに見ない規模になっています。
SNSでお知らせしていることもあるからか、これまでの路上での支援活動ではあまり多く見られなかった女性の方も、毎回数十人近くいらっしゃるようになりました。今までの路上支援活動ではほとんど見られなかったことが起きていると思います。

生活困窮者に向けた住居支援の不十分さ

東京では、住まいがない方の公的な政策においての受け皿が劣悪な環境であることが多いです。
東京は他の地域に比べて家賃が高いため、生活保護基準の家賃上限5万3700円の中で家を探すこと自体がとても大変で、施設を運営する側も財政的に厳しく、良い条件で住まいを提供することが難しくなってしまうんです。

支援施設の衛生面や広さについては長らく問題視されていましたが、大きな改善は見られませんでした。
コロナ禍になって失業したなど初めてこうした状況で困窮された方の中には、そうした環境下に慣れていない方が多くいらっしゃいます。
加えて、女性の相談も増えていますが、子連れの方などが住まいを失ったときに頼れる場所は多くありません。これまでの支援施設の中には携帯電話を取り上げる施設もありますし、困窮の結果、性的搾取の対象になってしまう女性の方もいます。

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そうしたところに対して、私たちの団体でももっと支援をしていきたいと考え、居宅保護の原則がもっと守られ、入られる方のニーズに応えられるアパート型のシェルター事業を始めました。

抱樸さんのご支援のもとで、5部屋を借りることができています。そして、これまで計12名の方々を、この5部屋でサポートすることができました。

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コロナで相談に来る方の中には、これまでは労働市場にいた方、なんとかギリギリでも生活ができた方も多くいらっしゃいます。
コロナ禍で失業したり住まいに困窮したものの、ケアがついている施設には入る必要はなく、そうした苦しい時期にしっかりと支援することができれば、ご自身の力で立っていける人もいらっしゃいますから、そうした方のサポートができるアパート型のシェルターを運営していきたいと思っています。

もやいの住宅支援事業と課題について

コロナ禍になって相談件数が以前よりも倍近く増えている中、シェルターを提供するには圧倒的に数が足りていない状況です。
そのため、相談をしてくださる方全員にはお部屋を貸すことができないのが現状で、私たちでは、既存の制度としてある、生活保護の受給者などが入る無料低額宿泊所(無低)や自立支援センターでは支援が行き渡らない若者や女性の方を中心に、住む場所を用意しています。

住まいを失った方の中には、家族との関係、DV被害、派遣切りと就職難、精神的な持病があるなど、みなさんさまざまな事情を抱えています。
現在ある既存のシェルターの中には、先ほどお伝えした通り、環境が整備されていなかったり不十分なこともありますし、法的枠組みの中で支援を受けようとすると、家族に連絡がいったりと紋切り型の対応をされることもあります。

私たち民間の団体の強みは、あくまで当事者に寄り添った立場で相談を受けたり、いろんな方との間に入っての交渉や同行に立ち入ったりすることができることだと思います。

実際に入居された方に対しての支援としては、ある程度はご自身でできることも多いということや、昨今の状況を踏まえて、訪問は最小限とし、電話やメール、チャット等で相談を受けたり連絡を取り合ったりすることが多いです。
相談を受けていく中で、マイナンバーカードの作成、滞納していた税金の対応、家探しや求職活動、学び直しといった、自立に向けてのそれぞれのニーズが見えてくれば、それに合わせて共に動いていきます。心身の不調に備えた緊急時の対応も含めて、広く支援ができるようにしています。

また、支援型住宅事業を行なっていく上ではなるべく良い環境を整えたいと思っていますので、家具や家電、電話、ネット環境を設置することで利用者の方の負担を減らすことができていると思います。

今後も、まだまだ支援や理解が十分に行き渡っていない、若者や女性、外国籍の方、セクシュアルマイノリティの方など、既存のしくみからはこぼれてしまう方々をサポートできることを私たちの強みとして支援活動を行なっていきたいです。

ただ、支援住宅の数はまだまだ足りていません。
住まいを失った方が自分の力で立っていけるように生活を支援するためには、ある程度整った環境で住んでもらいたいと考えている以上、多くの財源を必要とします。
ですから、団体で支援事業を行うと同時に、政策提言もしていかなければならないと感じています。

生活困窮者の住まいに対する社会の意識に変革を

コロナ前からわかっていたことではありますが、コロナによって、生活に困窮した方の住まいの環境が十分でないことが改めて明らかになりました。

東京で家を失った際に入ることができる住まいの中には、健康で文化的な最低限度の生活、その人の尊厳が守られないような環境の住まいもあります。
生活が苦しくなってしまうことは、それだけでつらいものなのに、そこからさらに我慢を強いられてしまうのは、とてもハードなことです。
まずは、安全で安心できる住環境が確立されることが社会のベースになって欲しいと思います。
お金がないというだけで自立への道のりが厳しいものとなってしまう社会であってはならないと思います。

しんどい時にもゆっくり休めるような場所が最低限用意されることが、社会の当たり前の基盤となることが大事だと思います。

寄付してくださった方へのメッセージ

まだ制度にはなっていない部分でこぼれ落ちてしまう人がいる現状に関して、支援を求める人がいても、その当事者の方がお金に困ってしまえば十分な支援を受けることはできません。
そこには、誰かが費用を調達して支援をしていかなければならなくなります。

今回のクラウドファンディングのような新しい取り組みは、ニーズはあるけれども法的に届いていかない人に向けて、先駆けて支援ができるしくみだと思います。
今回私たちが支援活動を行うことができているのは、こうしてご寄付くださったり、こうした活動を支援してくださる全国の皆様のおかげです。
ですから、心から、お礼を申し上げたいと思っております。本当にありがとうございます。

一方で、今回だけで終わらせてしまうのではなく、このような支援が届くことを、しくみとして社会に残していきたいと思っています。
ご寄付が原資となるということは、ご寄付が続かなければ事業継続もできなくなってしまうことになります。そうしていかないためにも、施策にしていくことが重要だと考えています。

備えがなくても、誰もが安心して住むことができ、暮らしていける当たり前の生活を守っていく政策実現を目指して、抱樸さんなどとも共に頑張っていきたいと思っております。
引き続きのご理解、ご支援をよろしくお願いします。

いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。