見出し画像

【支援の現場とコロナ禍】大阪・釜ヶ崎支援機構から

これまで抱樸の取り組みやコロナ禍に対する対応などを支援に携わる人の声からお伝えしてきましたが、今回は大阪市西成区で活動を続けるNPO釜ヶ崎支援機構の山田理事長にお話を聞きました。(2020年6月8日)
西成区には、日本でもっとも野宿生活者の密度が高い釜ヶ崎(あいりん地区)と呼ばれた地域があります。釜ヶ崎支援機構の法人設立は1999年ですが、それ以前より多くのボランティアによる困窮者支援が行われていました。抱樸理事長の奥田も、学生時代に「釜ヶ崎」を体験し、この活動に入りましたし、抱樸のスタッフの新人研修として「釜ヶ崎ツアー」を行ったりもしてきています。「景気の調整弁」として切り捨てられた労働者が集まる「釜ヶ崎」を知ることで、日本の状況が見えてきます。

kama_2018_12遠藤智昭

                    撮影:遠藤智昭(2018年12月)

NPO釜ヶ崎支援機構について

釜ヶ崎支援機構の支援事業は多岐に渡りますが、就労機会提供事業と寝場所提供事業が主なものになります。55歳以上の日雇い労働者を雇用して、大阪府市の委託を受け、公共施設や道路の除草、清掃、ペンキ塗りなどの作業を実施し、野宿を余儀なくされる高齢労働者に働き口を提供しています。また、釜ヶ崎支援機構が運営する萩之茶屋シェルターには、最大で500人ほど宿泊できるようになっており、シャワーや休憩所などを利用できるようになっています。

画像1

ーーーコロナ禍で支援のあり方はどう変わりましたか?

行政と話をして、コロナ禍でもこのシェルターを閉鎖するわけにはいかないということで、感染症対策の徹底を心がけています。現時点で一人も感染者を出していませんが、三密を避けるためにさまざまな取り組みをしています。まず、宿泊所では宿泊できる最大人数を減らす決断をしました。最大532人が宿泊できるのですが、現在は200ほどまで利用できるベッドの数を減らしています。利用できる2段ベッドも、2メートルの間隔を開けるために一つ飛ばしで利用してもらっています。そのベッドもやがて一つ一つ天井から吊るしたカーテンで仕切り、一人で利用できるように工事しました。利用者のベッドの場所も固定式にし、宿泊所利用者以外の人は立ち入りできないようにしました。利用者の方はマスク必須、検温、問診を実施し、体調に不安のある方は簡易宿泊所を利用してもらったり、病院に行ってもらったりと様々な対応をしています。特にお年寄りで感染した場合のリスクが高くなる40名の方は、近くの簡易宿泊所のオーナーに相談して、泊まれる場所を1ヶ月単位で借り、そこで寝泊まりしてもらっています。また、手が触れるところの消毒、空間清浄機の導入なども実施しています。就労事業においても感染症対策は大変です。器具の消毒、毎日200人以上の検温・問診、移動するための車も密を避けるため定員を減らさなければなりません。コロナでベッドにカーテンを取り付けたり、日常的な消毒の作業、検温、体調管理など様々な仕事が増えました。しかしながら、行政からかさむ人件費のサポートが受けられるかどうかまだ分からないのが不安です。

ーーーほかにコロナウイルスの影響はありますか?

コロナウイルスの問題以降、若い人がここに来ることが多くなったように思えます。当然ですが、コロナウイルスで日雇い派遣の求人が減っている。特に4月以降には、その相談が多くなったので、相談会を実施しています。もちろん相談してもらったところで仕事もすぐにあるわけではないので、まずは住所を登録してもらい、困っている方がすぐに生活保護を申請できるように行政に要望書を提出しました。コロナウイルスが落ち着くまで、そしてそれから徐々にもとの社会に戻っていく数ヶ月間はそれでしのいでもらうしかなさそうです。

ーーーこれからの支援のあり方への変化は?

さまざまな年齢、事情の方が貧困、野宿状態になっているということから、様々な段階でのサポートが必要ということを感じています。相談しに来られる方の中には、生活保護を受けることに抵抗がある方もいます。なるべくシェルターなどではなく、安いアパート借りてそこで仕事を頑張りたいという人も多くなってきましたし、その方の生き方もサポートしたいと思っています。例えば、私達は就労事業とシェルターをセットでサポートの形として、来てもらうことができればですが、まず路上で困るいうことは無くなってはいます。しかし、その方がこれから自立していく上で、たとえば一人暮らし用の安いアパートをどうやって確保するか、などステップを踏んだサポートを作っていけるかがこれからの課題と感じています。

ここでまずは落ち着いてもらい、就労支援相談を各所と連携し増やしていきます。一泊500円、1000円のドヤ、3万円のアパート、というように収入に応じて、どんどん自立できるようになっていければと思っています。しかしながら、近年この釜ヶ崎、新今宮エリアはかなり地価がどんどんあがってきている。なかなか住居確保が難しくなってきている。抱樸さんや他の地域組織と連携して、知恵を借りながらやっていきたいと思っています。

いつまでも日雇いの特別清掃の仕事を紹介する事業とシェルター事業の2本セットだけでは、様々な人をサポートすることがむずかしいです。まず、コロナウイルスが収まるまではこのシェルターに包摂できる人数を200人以上に増やすことができない。もちろん、個室を完備したシェルター施設をいまから増やすことも様々な理由でできません。

またコロナウイルスの第一波が収まってもすぐに仕事はなかなか元には戻らないと思います。企業もコロナウイルスで大変だから、派遣の仕事などが見直し、統廃合されて仕事の量は減るでしょう。だから市場経済的な理論で仕事を生み出すのではなく、府市と連携して、釜ヶ崎支援機構が受託している特別清掃事業のような社会的な、地域の事業を創り出していかないといけないと思います。

野宿者の高齢化も心配しています。働けなくなった高齢者のことのことも考えないといけません。生活保護を受けてもらって、はい、さようなら、というわけにはいかないでしょう。金銭管理、服薬管理、病院動向、健康管理などいろんな問題もある。依存症の人もたくさんいるから、ケースワーカーさんと連携しながら自立してもらうプロセスを踏んでもらっています。自立までには数年かかり、繰り返し支えていかないといけないので、どうしても人手が必要です。

画像3

                    撮影:遠藤智昭(2018年12月)


【ご寄付のお願い】
NPOほうぼくは、コロナで家や仕事を失った方に素早く、また継続して支援を届けることを目的として1億円のクラウドファンディングに挑戦しています(~7月27日)。共に前を向ける未来をつくるために、「今」皆さまのご支援が必要です。ご協力よろしくお願いいたします。

※ご支援は上記の「READYFOR」サイトよりお願いいたします。noteの「サポートする」からクラウドファンディングへのご寄付はできませんのでご注意ください。


いただきましたサポートはNPO法人抱樸の活動資金にさせていただきます。