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気功生活 Vol.129

2022.3.11 発行

咲く
ひとつ、ふたつ、
そして一斉に。

【目次】
心の平和  天野泰司
平和の一歩を共に / 講座ノート
気功暦できました / 春の養生
つれづれ湯遊記6  あや
The Book of Life 1/28・2/25
講座案内
初節句  吉田純子
会員の継続をどうぞ



心の平和


                          天野泰司

冬を越えて
 京都では、寒さも底を打ち、おだやかな春の気配が感じられるようになってきました。
 本来なら、心おだやかに過ごしたい季節のただ中に、ウクライナへの軍事侵攻は本当に胸が痛みます。一刻も早くこの誤った行いが終結して平和が戻り、被害を受け傷ついている全ての人が速やかに回復して欲しいと、今、誰もが願っているでしょう。
 けれども、紛争に乗じるようにして、日本も軍備を拡大増強すべき、極論は核を持ちたいなど、平和的でない手法で平和を維持しようとする不自然な動きが一方で露出しています。現在でも日本の軍事費は世界第9位、軍事力では5位との分析もあり、それをさらに拡大することを世界の誰が望むのでしょうか。強力な軍と兵器があるから安心だ、などというのは幻想です。懐に銃を忍ばせて、喧嘩をしないから私たちは仲良しだ、と。それでは冷戦的な嘘の平和はあり得ても、本当の意味での平和が実現することは不可能です。
 力を持てば力に頼り、平和的な交渉能力や問題解決力も低下していきます。真の平和を実現するためには、武力的な威嚇ではない、相手を思いやり、こまやかに支え合うような、平和的な手法を開拓していかなければなりません。
 それが唯一の被爆国でもある日本の役割ではないかと思います。

暴力の根っこ
 私たちの心の中には、自分の思い通りに何かをコントロールしたいという欲求が根深くあり、思い通りにならないことに対して、力でなんとかしようと無理してしまうことがあります。でも、どんな手段であれ、相手を力で従わせようとするのは全て暴力なのです。
戦争は遠くの出来事ではなく、私たち自身が、身近な人や知らない誰かに、有形無形の暴力を気づかずに使ってしまっていることがある。そのことを自覚しておく必要があるでしょう。
 人間の本性は慈愛に満ちています。生後13ヶ月という長い期間、完全な依存状態にあって、誰かの愛や慈しみがなければ、決して生きていくことができません。他の動物は、生後間もなく立って歩き、食べる力を持って生まれてきますから、この差は圧倒的です。
本来親切で、やさしくて、人のためになることを進んで行おうとする人間が、暴力的になってしまうのはなぜなのでしょう。
 争いや暴力の根っこには、一方的な思い込みと、身体感覚の鈍りがあります。そのために柔軟な思考ができず、何がどう異常なのか細かく感じる力も低下するので、物事が順調に進むはずがなく、うまくいかないと、力で押し通そうとしてしまう。
 暴力を無くしていくためには、私たち一人一人が、観念的なとらわれから自由になり、いろんなことに繊細に気づくことができる身体感覚を養う、言い換えれば「思考と身体の自然性」を高めていくことが大切です。そうすれば、物事がスムーズに進み、対立や争いは減り、身のまわりの平和と幸福が実現していくでしょう。

健康と平和
 また、他国や他人に対してだけでなく、「自らに向ける暴力」も存在します。例えば、体調が崩れると、なんとか立て直そうと必要のない努力をしていることが多いものです。熱が上がれば下げようとし、咳が出れば出ないように、痛みがあれば止める。一時的に必要なケースもありますが、どれも生理的な働き、自然な働きにブレーキをかけることになり、体が鈍り、経過が乱れます。
 健康のためにと頑張ったのに、却って害することは、数多く存在します。これはある意味、自分自身への暴力だと言えるかもしれません。予防という名目で打つワクチンもまたしかり。打つ影響は大きいので、肝臓へのてあてなど、アフターケアは必ず行なってください。

対話の能力
 体が望んでもいないことを、「こうしないといけない」「こうするしかない」と一方的に押し付ける。けれども、体は対話を望んでいるかもしれません。「今は暖かくして、もう少し熱を出したい」「しっかり咳をして胸や背中をゆるめたい」「無理に動かず楽な姿勢でじっとしていたい」……。そうした、私の中の声にならない声に耳を傾けることから、体が望んでいる通りの最善の選択、「自然の経過」が実現していきます。
 「これは良いこと、悪いこと」と意識で制御して行動している間は、その分、どこかに負担がかかって、無理や対立が生じます。それが、目に見えない争いや葛藤の元になっていることに、私たちはなかなか気づくことができません。ひとたび心身がゆるむと、自分を鞭打っていたことに気づき、ゆとりができると、精神が体を縛っていたことにも気づく。そして、好ましい変化が自ずと生じていくのです。

平和への道のり
 私は、気功をする習慣が世界中に広がってほしいと思います。一日の中のほんの15分、わずか一パーセント程度の時間を、自分自身との対話のために用意するのです。このことの効果と影響は計り知れません。
 例えば、「心がおちつくやさしい気功」は、初めての方でも、動画にそって動いてみるだけで心身の深いリラックスを容易に体験できます。視聴回数12万回。その一回一回に心身の変化や自分への気づきがあり、継続していくことで、人生が変わるような体験をされる方もあります。
 「体をゆるめ、心を落ちつける」。ただそれだけのことが、想像もつかないような、大きな力を秘めています。人種、民族、国籍、信仰、貧富、貴賎、老若、男女の別を問わず、誰もがいつでも実践することができる。そして、心身の根源的な変化は、健康状態はもちろん、精神活動や生活の仕方、仕事や対人関係にも大きな影響を与えていきます。
 最初に実るのが、心身の平和。心身をゆるめて緊張をほどき、体の中を非武装化していくと、自然でありのままの生き生きとした私が立ち現れてきます。健康で幸福になっていく流れが確実にそこにあります。
 次は、生活の平和。心身にゆとりができると、無理のない、ベシベカラズのない非暴力的な暮らし方に。ちょうどよい具合に人生を楽しみながら生きていくようになるでしょう。
 そして、その結果として実現していくのが、本当の意味での社会的な平和です。戦争や暴力はいけないことだから、してはいけない。それはもちろん当然ですが、「してはいけないからしない、させない」というあり方の中にも依然として暴力の火種があります。だから、物理的な平和が維持されている間に、軍備を増強するのでも、また何もしないのでもなく、根底にある火種そのものをどんどん減らしていくことが必要です。
 私のゆとりと平和は、相手へのこまやかな気遣いや思いやりへと発展し、自他を隔てていた境界もなくなっていきます。そうした人たちが暮らす、心からお互いを敬い、大切にする世の中では、「しない・させない」ではなく、当然のこととして争いが「自ずとなくなっていく」のです。この違いはあまりにも大きく、全く新しい世界がここから開けていくでしょう。
 最初は、自分一人です。自分の平和は自分でしか実現できない。でもそれができるようになれば、誰もが自分と仲良くなり、お互いに仲良くなり、全体としての平和が実っていくでしょう。簡単でやさしく、心地よい方法で、自然の懐へ、本来の平和へと還っていきましょう。

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