見出し画像

算数ができない

「暗記とイメージ」

足し算や引き算など、幼児期から学ぶ子どもの数は増加しています。ところが、小学生になって計算が出来なくなるのは何故でしょう。幼児教育を受けてきた子どもが、「幼児期にあれだけ計算の学習をしてきたのに、小学生に上がるとその効果はあまりない」と保護者の方からの嘆きの声をよく聞きます。様々な幼児教育を見ていると、知識偏重になりすぎていることに気付かされます。本来であれば、その先の学習に繋げることを大切にしなければいけないのですが、保護者から指導の成果を求められることで、幼児の得意な暗記や暗唱に走りすぎる傾向があります。健常児であれば、詩の暗唱は得意なはずです。すると、計算も同様に「暗記学習」と化してしまいます。1+1=2であることを、繰り返しすり込まれていきます。時には、1+1=2、1+2=3、1+3=4と答えが順番に並ぶ計算練習さえあります。刷り込み型指導は、数の概念は後回しにされます。

また、昨日もお伝えしたように、指で行うのは計算ではありません。しかし、幼児期の指導や、最近では小学校でも指を使わせて計算問題を解かせるという例もあります。「便利さは必要ない」と申し上げました。当初は便利な「指計算」も、その先に待ち構える桁数の多い計算で大変苦労することになります。安易な指導が子ども達を苦しめます。

計算指導の前に、量としての数を体感すること、操作することを、少し時間はかかりますが多く体験することが大切ではないでしょうか。そこに、タイルを組み込み、数をイメージします。暗記で答える1+1とタイルで学ぶ1+1は大きく違います。特に、1+0などでは、間違えてすり込まれると後の矯正は厳しくなります。しかし、タイルであれば、具体的な操作と”もの”があるのでイメージだけでなく、矯正も簡単です。

イメージ力は多くの体感や体験からより強くなります。そこに、もう一つ大切なものがあります。もじとことばです。計算問題でも、問題文をしっかり読むことを習慣づけて下さい。計算問題だから、いちいち読まなくてもよいとは思わないで下さい。例えば、「次の計算をしなさい。」と問題文があります。このような場合、毎回同じことばが並びます。それでも問題文を必ず読みます。毎回同じだからという意識が、大切な指示を見落とす原因となります。計算問題も読むことをお薦めします。それは、答え合わせでも同じです。特に、計算を暗唱している子どもには、ことばを発することで確認が出来ます。その際、初期の場合は、タイルを使って「いちたすさんはよん」と答え合わせを行います。

目で確かめる(タイル)答え、ことばで確かめる答え、耳に聞こえてくることで確かめる答え、発したことば、タイル、聞こえてくることばがイメージへと繋いでくれます。

基礎だから簡単という発想は捨てて下さい。1+1など誰でも出来ると考えてしまうことが、子どもが学ぶ初めての算数の指導をねじ曲げてしまうのです。つまり結果重視へと進んでしまいます。「アリの1とゾウの1合わせて2」「リンゴ1とりんご1合わせて2」子どもにとってどこかに疑問の残る計算ではないでしょうか。一方は質も大きさも大きく違うものの計算、他方は同じ種類で同じ大きさの計算、どちらも答えは2。大人は、直ぐに数字で数を教えます。でも、例えば2という数字は、あらゆる「に」という数を表しています。このように抽象化されたものを直ぐに扱うと、大人にとっては便利のようですが、子どもには理解しているようで理解出来ないものとなります。

このように、出来ているように見えても、理解しているとは判断できないのが幼児期です。そこに、大人感覚で抽象化された数字を、何の指導的意図もなく使ったり、言語指導を系統的にせず、詩を丸暗記させいかにも知性を感じさせるような指導を展開してみても、それ自体、子どもの真の能力とはなりにくいのです。暗記も、数字の導入も、指導の流れとして組み込まれなければ意味はありません。幼児期は、直ぐに計算ドリルなどを行うことは避け、具体的な数を数えたり、分けたり、合わせたり、とったり、残りを数えたりという動作や操作を数多く体験させましょう。これが、数のイメージ作りのスタートです。

2013/8/2


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?