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2008年6月8日 午後0時半 秋葉原路上

「衝動」5年めを前にして

早いもので、あれから5年が立ちます。6月8日、午後3時過ぎに知人から電話が入りました。「舞が、舞が」そのことば聴いて全てを悟りました。滝野川在住、芸大4年の女子大生、ニュースからは、秋葉原で凄惨を極めた殺傷事件が発生したと何度も繰り返し流していました。その中に、芸大の女子大生が含まれているとニュースでは伝えていました。その後、北区滝野川在住であることも伝えられました。脳裏に一人の女性が浮かんでいたのです。
私は、北区の文化財団と教育委員会が主催する音楽イベントで「音フェス」というアマチュアバンドコンテストの審査委員をしていました。そのコンテストで、プロ顔負けの司会をしてくれていた女性がいました。脳裏に浮かんだのはその彼女でした。「まさか、舞ちゃんでは」と。しかし、知人の電話でそれが現実となったのです。彼女は、大学卒業後、音響関係の会社に行くことが決まっていました。その後、北区文化財団の方、音楽関係者、音フェスのスタッフと共に上野のお寺で行われた通夜にいき、「舞さん」とお別れをしました。その姿は、生前の優しい彼女そのものでした。今でも亡くなられたことが信じられません。

衝動的事件はその後も数件あります。「自制心」と「想像力」の欠如、被害に合われた方々は、そんなことばでは済まされないほど、憤りを感じています。私は、それから暫く秋葉原に行けませんでした。ところが、月刊私塾界が初めて行う「幼児フェア」にオープニングのセミナーを担当する決まりました。その会場が秋葉原だったのです。私は、暫く外部活動を控えていたのですが、これをきっかけに暫くぶりに外部活動を再開したのです。セミナー開始の前、彼女が倒れた場所に出向き、手を合わせてきました。興学社の現幼児部門であるプリンスジュニアの方々にお会いしたのが、この会場で、そして現在に至っています。

今、石川メソッドと呼ばれている教育法の中に、食育、水について多く触れているのは、この事件をきっかけとしています。それまでも関心はあったのですが、食品添加物との因果関係、脳の機能障害など、教育だけでなく、発達認知心理学、そして食育という多面的な分析が必要であると思っています。自分の活動が、教育という人にとって大切な部分を扱うだけに、この事件は多くの問題を投げかけていると受け止めました。私自身、教育的活動により、情動的犯罪を未然に防ぐことが出来ればと考えたのです。教育の本質は、ただ学習一辺倒ではなく、その人全体を人として成長発達するアシストではないかと思っています。当然、学力向上は、私たち民間教育に従事するものにとって当たり前の目標でもあります。しかし、私自身、この事件から学んだものは、自らの言動と行動で示していかなければと心に誓っています。

事件後、毎年6月が近づくにつれ、教育の原点を振り返ることが出来ます。

武藤 舞さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
貴方のことは、決して忘れてはいません。

合掌

2013/6/7


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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