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もう一つの感覚教育

「感じる心」

中京地区にある塾の先生から、研修の依頼と、現在指導している生徒の諸問題についてのご相談を受けました。内容は、子ども達の感受性の低下です。感受性の低下と成績に相関性があるのではないかという指摘に、私も同じ考えを持っています。国語指導からの指摘でしたが、思考という観点から見れば、算数学習にも関係してきます。

子ども達は、大人が考えるより敏感に社会のストレスを受けています。社会全体を覆っている閉塞感もその一つです。子どもの達の会話から、対中国問題にも複雑な思いと抵抗感、そして違和感を感じているというのです。「最近、益々素直ではなくなってきた子ども達」という印象を持つ方が多いようですが、その一つの背景に、中国問題もあるというのはいささか驚きです。確かに、非常に申し訳ない言い方をさせて頂ければ、「悪いことをしても謝ることをしない、しなくても通じる」という国際社会では大人であるはずの中国を疑う気持ちがあるようです。子ども達の感じるのはストレスだけ、それではあまりにも情けない。彼らには感じて貰いたいことがたくさんあります。

大人社会のストレス、そして、子ども社会にもストレスがあります。そのストレスの中に、コミュニケーションが含まれるようになりました。人と関わり合うことが「煩わしい」「面倒くさい」1人の方が良いと考えるようになっていたのです。しかし、もうすぐ2年になる、東北関東を襲った大震災と津波被害から、人と人との繋がりを再認識するようになって来ました。想像を絶する自然の猛威、そしてもう一つ、想像を絶する大被害、これらのストレスはじわじわと私達の心を蝕んでいきます。突然の変化に、心が追いついていかない状態です。子どもは、幼い頃から多くのコミュニケーションをとらせる必要があります。それも自然に。直接向かい合って話すという、コミュニケーションの基本を学ばせる必要があります。考え方を共有する大切さも学ぶべきでしょう。

我が国だけでなく、世界的にヒステリック状態を起こしているように感じているのは私だけでしょうか。私は、まず大人達が落ち着きを取り戻すことが大切だと思います。私達は、2年前から「感覚教育」を教育の一つの柱として掲げてきました。一般的には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の5つですが、そこに、前庭感覚という平衡感覚、固有感覚と呼ばれる身体の内側にある感覚、これらを統合することで、人の心身は保たれています。「感受性」が欠けているという指摘も、「感」という文字が示す通り、感じることが出来なくなってきているのが原因の一つです。塾の先生からの指摘は、そのまま、幼児期に於ける感覚的刺激の薄さを示していると思います。「幼児に学ぶ」幼児期の指導の重要性を改めて感じる指摘でした。

2013/2/12


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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