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空間認知能力

「学力低下の原因に」

ゆとり教育の実施以来、子ども達の学力低下が叫ばれてきた。しかし、学力低下はそれ以前から始まっていたように思う。今、何故、子ども達にボール投げを指導しなければならないのか、これが最も大きな原因ではないのだろうか。20年ほど前からスキップのできない子が目立つようになっていた。当時、私は小学校受験を担当していた。小学校受験では、新たに行動観察という、プリントや面接以外の試験項目が出てきた頃だ。この頃から、ボール投げができない子どもも目立つようになっていた。

20年前は、各家庭にファミコンが普及していた時代でもある。この頃から、子ども達は外ではなく、室内でファミコンに興じることになる。次第に広場から子ども達が消えていった。また、同時に広場も消えていった。子どもは遊びの中で様々な事を学ぶ。父親もそれを理解しているから、子どもを外に連れ出し、様々な運動を教えた。小学校で習う運動の殆どは、父親や友だち、上級生との遊びから学んでいた。鉄棒やジャングルジムは高さ感覚、逆さ感覚を養い、ボール遊びは、距離感、目測、位置関係、力配分、平衡感覚などを鍛えていた。まさに「空間認知能力」を養っていたことになる。ここで、自然と算数的な見方や考え方を、具体的に学んでいた。

遊びだけでなく、家の手伝いなども社会経験を含め、具体的学習の場となっていた。教育は、教室という空間だけで学ぶものではない。具体性があることで「ことば」もより生きてくる。空間認知には、判断力や思考力、そして記憶力という、私達にとって重要な能力が備わっている。

私は、小学校受験だけでなく、中学受験も担当した。ここで役に立ったのは、幼児教育だった。算数ができない、国語ができない、難しい文章問題も、基本は幼児教育の考え方が役に立つ。子どもにとって、学習を支えるものに「遊び」があることに初めて気付かされた。子ども達が苦手な、単位換算、割合、距離・道のり・時間、これらの要素は「空間認知」という能力を高める「戸外遊び」にあった。教室の中で求めることのできる学習では理解できない、具体的要素が遊びの中にたっぷりと詰め込まれていた。しかし。平成の時代、外で遊ぶ事が難しくなってきた。広場も少なく、ボール遊びも規制されている。それを解消すべく、合宿活動や幾多の催し物から、子ども達の感性を高める工夫がされている。

これらの背景から、子ども達の能力は環境で大きく変化することがわかる。実は大人も同じだ。幼児教育を行う者として、大切な指導の中に「空間認知能力」を指導対象にしているのはその為だ。

2012/84


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫


石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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