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流星ラジオ/3

流星。。。願い事を唱えようとしても、瞬く間に消えてしまう。その印象は儚いからこそ鮮烈なんだ。地上でうごめく諸々のノイズが上昇する。はるか上空で融合した無数の流星が地上に降り注ぐ。夜空を行き交う世界のきらめきを映し出す。流星ラジオはそんなイメージ。ここではないどこか。今ではないいつか。空間的、時間的にずれてパラレルに存在する様々な世界。自分が今生きている世界とは別の世界に身を委ねる。どっぷりと浸るような感じではなくてふと脳裏をかすめるように。自分を置いて旅立っていった人類の息吹の破片を遠く離れた場所で聞き流している取り残された自分。眠気を誘うような囁き声と間延びした音楽に被るプチプチノイズ。自分の世界観を共有したいなんて大層なものではない。ただい動いているからこそ発せられる生命の音を孤立した各々のフレームに届ける。君の孤独のために光るラジオ。。。ざっくりとした理念を言葉にしようとすると、こんな抽象的な文脈を延々とたらい流してしまっている。時間はどんどん過ぎていく。ここいらで一段落させて。要は流星ラジオのいう媒体のモチーフ=動機を綴ろうとしていたわけなんだ。話が飛んで行ったのでこの辺で手元に手繰り寄せて行きます。
実は、自分が思うラジオの漠然としたイメージが体現されたモデルがあります。もちろん従来のラジオも指標の一つなのですが。こういったラジオの枠組みを超えたメディアの可能性を感じさせるものがいくつかあるので紹介していこうと思います。まずは、You Tubeでアニメのワンシーンが延々とループされた画像をバックに24時間音楽が流れているチャンネルがあります。作業の邪魔にならないようなlofi hiphopというアナログ感漂う静謐な音楽が延々と続き、世界中から届くコメントが淡々と更新されて行きます。パソコンのモニターを覗き込んでいる大勢の孤独が一つの空想的なありもしない映像と音楽でゆるく繋がっている感じ。こちらは朝でもどこかは深夜かもしれない。空間的にも時間的にも異なる人たちがアラビア文字やアルファベットや絵文字でやり取りする不思議なコミュニケーション。まるで白日夢を見ているような錯覚。従来型のラジオという装置はまるで使わていないけれど、受験勉強のお供として聴いていた深夜放送のニュアンスに限りなく近いものを感じる。
次はTHE LOT READIOというラジオ局。ニューヨークの空き地に置かれたコンテナがスタジオ。そこでDJたちがライブ。軽食や飲み物のお店も併設されているので、空き地に置かれた椅子で飲料片手に音楽を楽しむことができる。You Tubeでネット配信もされているので、 DJのプレイの様子も音楽も世界中からライブを体感できる。lofi hiphopのチャンネルのように完全にバーチャルなメディアではなくて、リアルなアーティストがプレイしていて、その音楽を楽しんでいるリアルな聴衆がいる。同時に遠く離れた世界のどこかの片隅でも、その雰囲気に触れている聴衆も存在している。リアルなコンテナスタジオとネットを使ったラジオサービス。コロナ禍で急速に普及し始めた音楽LIVE配信のさきがけのようなコンテンツかもしれない。今でこそ当たり前ことなのかもしれないけれど、簡単にいくことはできないどこかの現実をモニターで体験できるのは楽しい。そして、そのリアルが存在する場所に行けたら。コンテナのスタジオに出かけてコーヒー飲みながらDJのプレイを楽しめたら最高だろうなあ。
そして三つ目はこれはラジオという概念からはちょっと離れているのかもしれないけれど。色々な面で刺激と影響を受けたコンテンツなので紹介しておきます。数年前の夏の夜。You Tubeを見ていてふと出会ったライブ映像。冗長で幻想的な音楽と共に車に搭載されたカメラで前方の風景が映し出されていく。どこかの異国の車窓の風景が延々と流れていく。ただそれだけのことなんだけど、目が離せない、ぐいっと心を掴まれる。そしてすごいのはこのライブは終わりが見えないということ。延々数時間。さすがに寝ようということになってその日はおやすみ。翌朝、PCを起動してYou Tube。まだやってる。ここは北の国、夏なのに寒々しい風景が広がっていく。見たこともない美しい世界。途中、休憩も挟む。車は道端の駐車場に待機。その間もカメラも音楽も止まらない。どこまで行くんだろう?このライブ。実はこれはsigur rosというアイスランドのバンドが流しているもの。この年にFUJI ROCKにこのバンドが来ることになっていて、馴染みがないので色々検索していたらたどり着いたライブ映像だったのだ。このライブ映像は3日間ほど続いた。音楽を延々と流し続けてアイスランドを一周したらしい。アイスランドの首都レイキャビクを出発してレイキャビクに帰ってきた。馴染みのあまりないアイスランドという国の風土をリアルタイムに極東の蒸し暑い空気の中で共感できるなんてとても貴重な体験だった。動機を心に抱いて行動を起こしたリアルな旅ではない。実際のトラブルやアクシデントとは一切関わることもない旅。それでも遠く離れた北の国の時間を共有したことは確かでアイスランドの魅力を知ることができたことは嘘ではない。ちょっとした日頃の生活の合間に大きな距離を移動できたし、こちらの現実から北欧の冷ややかな風景に逃げ込むこともできた。このライブのアーカイブはまだ残されているので、興味があったらぜひアイスランドの旅を体験して見て!。
こんな感じで自分がラジオ的なものとして興味深い試みを三つあげて見た。漠然とではあるが、こういう感じのものを流星ラジオのモデルとして思っている。ここに共通するキーワードというものはやっぱりインターネットかな?。ラジオと言えば電波なんだけど、ネットの可能性の魅力は大きい。それと従来のラジオの手法をとるとコストなどの現実的な困難さもあってハードルも高くなるかな?。ともかくネットを使って始める方が手っ取り早いという点も大きい。三つのサンプル。Lofi hiphopのYouTubeチャンネルからはインターネット。THE LOT RADIOからはリアルなライブの現場。Sigur Rosのライブ中継からは移動。インターネットという手段で放送という行為を行う。ライブでリアルな人々が集う場を作る。放送の拠点は常に移動する。こんな感じのコンセプトが思い浮かんで来る。

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