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10月5日2022

(続き)

苔の林を進んでいく。駐車場は満杯だったけど、ここはまだ静謐な空気に包まれている。ただただ美しい。人がこうやって踏み込んで行っていいのだろうか?。そういう罪悪感を感じないわけにはいかない。ま、そんなこと言っても、山行すればそんなところばっかりだ。日常のうさも現実だし。こういう世界も現実なんだ。どちらが正しいわけでも、どちらが美しいわけでもない。ただ、生きているうちに様々な現実を少しでも多く見てみたいし、感じてみたい。そんなことはさておき、苔の林をしばらく行くとニュウへの登山道の標識が現れる。それが指し示すニュウに足を進めていく。木の根っこが地面からニョキニョキと現れ勾配もどんどん急になって歩行も困難になってくる。いよいよ登山が始まったなと感じさせられる。道にちょっとしたスペースがあるとザックを下ろして休憩している人々がちらほら。苔の森にもやっぱり人の息吹も満ち溢れているんだな。動いていると気づかないだけ。歩みを止めれば人の気配はちゃんとする。人混みは嫌いだけど、人がいないと生きていけない。さて、先を急ごう。しかし白駒池の周辺から大分奥へ上へと。林はすっかり深い深い森へと。さっきまでの人の気配も全然なくなった。目の前に倒木。道を塞いでいる。越えようにも越えられないし、木の下をくぐるには相当這いつくばる必要がある。這いつくばる方法を選んで倒木を越える。しかしこんな障害物、みんなはどうやって越えていくのかな?。ちょっと不安がよぎって、YAMAPをチェック。あ、めちゃ道違ってるじゃん、この道でもニュウに行けるけど、30分程度遠回り。元の道に戻ろうか?。でももう半分以上進んでいる。ちょっと逡巡したけど、このまま行こう。あと15分ぐらいで正しい?道に戻れるはず。しかし、ここからけっこう険しい道になってくる。岩もゴロゴロしてきて、頂上に近づいているんだなって感じもする。ちょっとした孤独感を味わって山の中を彷徨っている気持ちに襲われていたけど、やっぱりアプリのYAMAPの地図は最強で、ちゃんと道を確認できる安心感は素晴らしい。遠くに熊鈴の音や人の声もしてくる。本道の合流も間も無くだな。合流の標識が表れて、道を歩いていく人を確認。おお、ちゃんと戻れたか。ここからニュウの頂上まではもうすぐのはず。ますます険しくなる道。ん?。ここ登るの!!といった岩場が現れる。これはストック使っていると邪魔だし、手を使わないと登れない。ストックを一本畳んで。さらに両手に軍手装着。歩くだけのトレッキングを超えた手を使った岩登り的な登山。ま、ほんのちょっとだけどね。でもこういうの面白い。はあはあ言って登っていくと視界が開ける。超絶の絶景。眼前に天狗岳が見える。身近な岩にもたれて一息入れる。天狗岳だけじゃない。硫黄岳の爆裂火口も微かに見える。これが八ヶ岳なのか。凄いな。来てよかった。そして近くで人の声。近くで人の声。今日はいい天気だねえ。富士山もよく見える。目前の八ヶ岳に目を奪われて、富士山のことなんて忘れていた。まだ冠雪していない富士山がちゃんと見えてる。いつ見ても富士山はご褒美。今日はご褒美をもらえたってことだ。そして視線を移すとニュウの山頂。うわっ、めっちゃ岩山じゃん。あそこ登るのか?。動画で見ていて、あんなとこ自分が登れるのか?。と思っていたけど、迷うことなく歩を進める。もう一本のストックも畳んでリュックに収納。ここからは両手使っての登り。滑り落ちたら笑えない。大怪我だ。慎重に!!。でもさほど恐怖は感じない。それよりもこの爆風。岩を登るにつれて体ごと持っていかれそう。必死に死が見つつ登る。岩にペンキで記された○印。その印を越えると山頂。めちゃ狭い。なのに人がひしめき合ってる。でも人混みという印象はない。みんながみんな空間を譲り合って360度の風景を共有している感じ。座ってお昼を食べるって雰囲気じゃないけれど、人々はみんな笑顔。いい感じ。ひとしきり写真と動画撮ったら、さあ、次の人にこの絶景を譲りましょうか。しかし、登ってきた道を降るのかという踏ん切りをつけるのは難しい。ここで初めて恐怖を覚えるわけ。下りようと決断する時が一番嫌な瞬間。そんなこと言っててもしょうがないけど。降りる方向には下に点のように見える白駒池。遠方には浅間山かな?。マジで転げ落ちないように岩を降りていく。降り切ったところでもう一度山頂を振り返る。天気に恵まれて本当に良かった。八ヶ岳の神様、ありがとうございました。(続く続く)

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