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芍薬ギャンブラー

唐突に皆様に問いを投げかけます!。
好きな花はなんですか?。
超素朴な質問です。
「黄色いバラとかピンクのチューリップ、ひまわり、水仙」
すぐに答えられる人もいるでしょうし。
「あれも好きだしこれも好きだし、ひとつだけ好きな花をあげるってできないなあ」
こんな風になかなか答えられない人もいるでしょう。
これはあなたの性格が優柔不断というわけではなくて単純に花の種類や名前を知れば知るほど選択の幅も広がるわけで、あれもいいしこれもいいしとなるんだと思う。

夏の湿気た空気を体感してるんだけど曇天が続きなんともすっきりしない風景に身を置いていると低明度に沈んでいる視界の中に輝くように揺れているアジサイの花にはハッと心奪われる。
この季節に好きな花はと問われると思わずアジサイと答えてしまうかもしれない。
それぐらいアジサイは魅力的。
園芸品種としてのアジサイは毎年毎年こんなアジサイあるの?というくらい進化し市場に出回ってくる。
アジサイは「紫陽花」という漢字自体も魅力的です。
この漢字を印象付ける「紫」という色。
アジサイの特徴を表す色なのですが、昨今ではアジサイは紫色もあるよね!ぐらいの認識。
赤やピンクがなんとなく主流、茶色やグリーンも。
そしてそれらが混在して一言では表すことができないような花色のアジサイも。
それに加えて、アジサイの品種、ガクアジサイ、ヤマアジサイ、アナベル、カシワバアジサイ、ピラミッドアジサイというふうに上げていくと紫陽花というジャンルの奥深さに目眩がしてくる。
アジサイという花のカテゴリー内だけでもどの花が好きという問いが成り立ってしまうほど。
でも今回はアジサイの話しするわけじゃなくて。。。というわりには結構引っ張ってるんだけど。
ということで急旋回。

分厚い魅力帯びたアジサイ帝国を向こうに回して、私はこの花が好きという対象に強力なライバルがいるんです。
というか、語られる魅力が広範囲であるがゆえにアジサイの方が逆に不利に見えてしまうほど、一点集中の魅力に満ちた花の存在。
それは芍薬という花です。
一年の中でこの花を楽しめるのは一瞬。
花屋の店頭に並ぶ芍薬の切り花は五月の一ヶ月間ぐらい。
多数の花弁が豪華に開いた花姿は一度見たら忘れられないし、季節限定という希少感も高ポイントの一つ。
アジサイの季節と対峙しているとかいう前提なんて関係なく、この花が一番好きという人はかなりいるだろうし、芍薬の切り花が出回ってくる季節を心待ちにしている人もたくさんいる。
花という概念を切り花とか鉢花とかでも区別できるような知識がつくようになってくると水仙やバラやチューリップやヒマワリ。。。季節を象徴するアイコンみたいな花から他の花にも目が徐々に向いてくる。
そうなると好きな花は?という問いに簡単に答えられなくなってくると書いたのは前述の通り。
まさにそういう広い視界に目が向き始めた人の前に表れてくる花が芍薬なんんだと思う。
芍薬の存在感は圧倒的で花屋の店先に並んでいるあらゆる花を脇役にしてしまう。
芍薬なんて花の名前知らない人でも花屋の中に立ってこの花を見たら「これください!」ってなると思う。
好みとか気分とかそういう抽象的な雰囲気を一蹴してしまう力がある。
などなど、魅力語っていくと延々と終わらないような気もするし、自分の語彙力じゃ何も伝わらないような気もする。
そういうことなので、芍薬ってすごいみたいなこと話すのはそこそこにしておこうっと。

切り花としての芍薬、花屋が扱う芍薬。
英語では「peony」。
この「peony」、芍薬以外に牡丹という花の名称でもあります。
芍薬よりも牡丹の方が知名度高いかもしれませんね。
「peony」が牡丹と芍薬を表す英語だからといっても、牡丹と芍薬という植物は同じではありません。
牡丹は牡丹だし、芍薬は芍薬。
似てるんだけどね。
詳しいことはその手の話する人にお任せするので知りたい方は検索してください。
花屋に並んでいるのは芍薬の切り花で、時には外売り場に牡丹や芍薬の苗が稀に並ぶこともあるかも。
というわけで、花屋的には芍薬と言えば、芍薬の切り花のことを指します。
切り花の芍薬は蕾の状態で入荷されます。
長い茎の先端にまん丸の蕾。
その様子はマリンバを叩く枹。
マレットというそうですけど。
学校で木琴やりましたよね?。
あの木琴叩く枹です。
蕾の芍薬はそんな感じなんです。
ところがこの芍薬の切り花にはちょっと問題があって。
蕾の状態が本当に開くかどうか。
この確率が超曖昧なんですよ。
日本人は花のコスパに結構こだわる人多いんです。
「持つお花はどれですか?」このセリフから入る。
そして、「もっと蕾の花はないの?」こういうツッコミ。
生花は生きてるし、生きてるからこその魅力。
だからこそ購入しようとしているんでしょ?。
なのに、目前の美しさより同じ金出すなら長く死なない花を求める矛盾。
コスパ重視ならフェイクフラワーにすればいいのに。
でも、生のお花を飾ってる私はドライや造花飾ってる人とは違うのよねみたいな顕示欲も満たしたい。
こんなややこしいリクエストを想定すると。
芍薬ってかなりリスク高い商材となるのです。
木琴の枹はウェディングドレスのスカートのように見事なヒラヒラの花を咲かせられるのか?。
ここで?マークがいくつもいくつも点滅しちゃう。
蕾の花を好むマダムたち。
芍薬はかたい蕾は残念ながらかたい蕾のままで終わってしまう確率が高いのですよ。
だからといって開いた芍薬の花の寿命は短い。
フワフワっの豪華な花は思った以上の速さでパラパラっと散っちゃう。
これじゃダメダメの花じゃない?ってなるところなんだけど。
この花に限っては、花持ちとかコスパの前提がぶっ飛ぶほどの力があるみたい。
毎年毎年、芍薬扱ってたくさん見ていても、今回の芍薬は綺麗に開くか開かないか?なんて全然わからない。
だから、開きかけの芍薬の花を仕入れることに努めているんですけど、それってなかなか手に入れることも難しいわけで。

毎年、芍薬の魅力をご存知の方。
初鰹とか初秋刀魚を楽しみにしているように芍薬の入荷を待ち焦がれている方たくさんいらっしゃいます。
木琴の枹のような芍薬の切り花が入荷、店頭に並びます。
芍薬を知っている方はこの木琴の枹って咲く確率低いなってわかっています。でもね、持ち帰らないことができないのです。
こちらからはいつも同じ返答。
「この芍薬は咲くかどうかはわからないですね」
心の中でも、「多分咲かないかな?」と思ってるし。
「だったら売ってんじゃねえよ」とお叱り受けても仕方ないんですけどねえ。でも、「咲かなくてもまそれはそれでいいわ」とおっしゃって買われていく天使のようなお客様が結構いらっしゃるんですよ。
木琴の枹とウィディンドレス。
雲泥の差じゃないですか?。
同じお金を出してさ。
結果が泥だったらこれほど理不尽なことはないわけだけれど。
お客様は投資する感覚で購入を選択する。
まさにこれってギャンブル。
そんなにも引力が強い芍薬という花。
スロットマシンにコインをどんどんつぎ込んでしまう衝動。
ウェディングドレス状態の芍薬の花の前に立つとその気持ちもわかりますよ。1度や2度はいいんだけど。
決してギャンブル依存症にならないようにお気をつけて!。

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