見出し画像

ししょうせつ・1

自分は幸せなことにほぼ毎日外に出なくてはいけないという要件がある。つまりは、生きながらえるためには外に出て金を稼がなくちゃいけないんだな。部屋にこもったままでいたいのはやまやまなんだけれどさ。こもったままで心臓動かし続けていくような能力がなくって。そういうわけで人様に自分の時間を売って対価いただくために外に出るという次第。こういう悲観的な物言いするのは得意技なんでほっといてもらって。この外因のおかげで悶々とした自分と自分の蜜月時間から解放される。まさにこうやってキーボードを打ちながら自問自答しつつ自己嫌悪に塗れてる。現実の時間が出動のアラート?アラーム?を鳴らす。即に作業中断でしょ!。の冷静な判断は制御不能に陥り。アプリ→オフ→PC→シャットダウンの動作にもたつく。世間様に目をつけられないように自分を殺した衣服纏い。財布、ポケットに入れて。充電途中の携帯のコード引き抜いて、バックにイン。イヤフォン耳に装着。さ。準備OK?。靴履いて。ドアを開けて。う、ちょっと寒い。もう一枚羽織っていくか。再び部屋に戻る。5分ロスしてる。さあ急ごう。ドアを閉めて。一階への階段降りる。あ、今日はゴミの日じゃん。ちょっと嫌な感じで台所にゴミ溜まってるんだった。階段駆け上ってドア開けてゴミ袋ひったくってまた外に出る。ゴミ置場にゴミ捨ててと。さ、今度こそ任務終了だな。耳につけたイヤフォンに軽快で気持ちいい音を流す。今日は相対性理論。。。いや、DAOKOにしたよ。風景も音楽に合わせて動き出す。坂道を下る。右側の法面にはレンガの間にシダがいい感じで生えていてちっちゃなロックガーデンみたいだ。坂を下り切ると、登校途中の小学生たちの隊列が見えてくる。子供達の集団なんだけど、通勤満員電車のサラリーマンのような静けさがちょっと違和感あるよ。これって全員マスクしてるから絵的にも会話が少ないという印象持っちゃうんだよな。マスク?。。。やばい。マスクしてない。忘れた。世界を席巻する禍のおかげで、マスクをつけるというやんごとない習慣が外歩きには必須条件になっている。マスクしていないことで公権に拘束されたりといったことにはならない。でも、公共の道徳というもっとたちが悪いものがお互いを監視しあってるものだから。従わざるを得ないんだな。マスクを忘れた自分に相当の腹立ちを憶えながらここまで進み終えた道を逆走する。帰宅するまでは登りたくもない坂道をあくせく登る。今度は法面のロックガーデンなんて目にも入らない。耳に流れ込むDAOKOの声は自分を励ます応援歌。今日は一体何度目の帰宅か?。イラつく心持ちを深呼吸でごまかしながら。部屋のドアを開ける。この際、靴脱ぐのももどかしい。土足で乗り込みテーブルの上に置いてあるマスクの袋を破る。不織布のマスク握りしめてとにかく再出発だ。人生に無駄なことなんて何もない。。。そんな名言じみた言葉に唾吐きたい衝動を抱えながら、どんより灰色の雲に押さえつけられた空の下。坂を転げ落ちるような気分で歩む。登校小学生の行列はまだ続いているみたいだ。時間というものは遠慮なくきちんと進んでいるはず。それ相応の時刻はすでに刻み込まれている。でも、自分が捉える目の前の風景に追いついた感→安堵感。苛立ち伴った焦燥感なんてすぐさまに忘却の彼方になっていく。人は忘れることで前に進むことができる。格言が点灯。消滅。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?