見出し画像

【続編⑪】第四章〜第二節 「2.ウォーキングのチェック方法 ③心拍数のチェック」 これならできる!運動指導初心者の指南書〜特定保健指導、介護予防指導などで必ず役立つ!

③心拍数のチェック

 最後のチェックは、運動中の「心拍数」です。

 はい、ここでもう一度! 「運動は諸刃の剣」を思い出してください。

 健康の柱は「食事」と「運動」ですね。「食事」については、「あー、食べ過ぎた。。。死にそう〜」なんてことがありますが、それで亡くなったという人は聞いたことも見たこともありませんね!

 でも、運動は「うー、頑張り過ぎた。。。苦しい〜」と言って倒れ込んで、そのまま病院行きという話は聞きます。実際のお話なのですが、30年ほど前のことです。私の知り合いの方のご主人でマラソン大会の途中でハートアタックで亡くなったという悲しい出来事もありました。

 ですから、運動はそのやり方次第で、効果もあれば、怪我、最悪は死に至ることもあるわけです。

 運動の種類、強度(時間、回数)、頻度がその時の自分に適当か? 無理はないか? を確認することは、運動を楽しく、効果のある、しかも長く続けていく上でとても大切のことになります。

 そして、確認する時に「客観的な数値」と「主観な自分の感覚」の二つをバランスよく利用していただきたいのです。

 まずは「客観的な数値」ですが、その運動が自分にとってまずは安全で、且つ効果的なのかどうかが大切になります。

 運動中のリスクマネージメントはとても重要です。手軽にできるウォーキングやジョギングですが、頑張り過ぎて心臓はアップアップ、あるいは足が動かなくなって倒れ込む、みたいな事態は避けなくてはならないです。

 では、これを回避するためにはどうするか。

 そのひとつは、運動中の心拍数を管理することです。今はウェアラブル端末なるものがたくさんありますので簡単に、しかも正確に調べることできます。また記録も自動的にしてくれますね。できればそうしたデバイスを活用していただくのが一番よろしいかと思いますが、実際お金もかかります。

 そこで、まずはお金をかけず、しかも以前から長く利用されている手首で心拍を測定する方法をご紹介しましょう。

 まずは、自分の手首で脈拍を取ることはできますか? 手首の親指付け根あたりに反対の手の人差し指、中指、薬指を揃えて指の腹で触れてみてください。心拍を指の腹で感じると思います。この状態で1分間測定してください。
※この時、腕は心臓の位置よりも上に上げないでください。脈が取りづらくなります。

 時々ですが、この手首での脈拍計測が難しい方がいらっしゃいます。その場合は、首の頸動脈で、先ほどと同じ3本指で脈点を見つけてみてください。または、運動直後であれば心拍が強く打っているので、心臓あたりに直接片方の手を置いて測定することもできるかと思います。

 ついでですので、安静にしている時の自分の脈拍を測っておくことをお勧めします。心拍は健康のバロメーターです。また、この後で説明しますが、運動中の適当な心拍数を求める時にこの安静脈を用いる場合もありますので、ぜひこの機会に調べてみてください。

 調べ方は簡単。朝目覚めた時に横たわった状態で1分間測定して下さい。そのまま眠ってしまわないようにご注意くださいね!(笑)

 この安静時心拍数ですが、通常、健康な成人であれば、1分間に約60~100回で、加齢とともに最大に発揮できる心拍数は少なくなっていく傾向にあります(*参考4)。

 また、安静時に1分間の心拍数が50回以下を徐脈、100回以上を頻脈と言います。こういう方は、健康診断時や循環器の医療機関などにご相談の上、運動を始めていただくことをお勧めします。

 さて、運動中の心拍数を手首で心拍をとる方法を説明します。

 本来は運動中の心拍を測りたいのですが、手首で脈拍を取る方法は運動しながらでは難しいので、運動直後に10秒間測定する方法で、運動中の測定の近似値とします。

 その10秒間の測定した心拍数で、今実施していた運動があなたにとって安全で、且つ有酸素運動としての効果(脂肪燃焼)があったかどうか評価をします。

 自分にとって、安全で効果のある心拍数のことを「目標心拍数」と言います。この目標心拍数の簡易の求め方は下記の公式を用います。

 目標心拍数 = 138 ー 年齢/2
 
 安全で効果がある運動にするためには、どのくらい心臓に負荷をかければ良いかというと、いわゆるニコニコペースで行える負荷となります。

 このニコニコペースの運動は、心拍数や血圧を危険なレベルまで上昇させず、また、疲労で筋肉が動かなくなるところまでには至らせない運動強度になります。

 このニコニコペースの運動は、自分が最大にがんばれる心拍数(最大心拍数:220-年齢))の50%と推定されます。

 この50%が先ほどお示しした「目標心拍数」で求められた数字になります。

 もっと正確に目標心拍数を調べたい方は、下記の「カルボーネン法」で計算してみてください。

目標心拍数=(最大心拍数〔220-年齢〕-安静時心拍数)×目標運動強度(%)+安静時心拍数

 ここの「目標運動強度」は40〜60%で、生活習慣病の予防などの効果が得られて安全に行える運動強度とされています。

 話を戻しまして、簡易計算法での目標心拍数(138-年齢/2)の利用の仕方を具体的に説明しますね。

 年齢は60歳の方とします。

 まず、目標心拍数は下記の計算で求められますね。

 138-60/2=108拍

 60歳の方は、108拍が目標心拍数となりますね。

 次に、この60歳の方がウォーキングしました。ウォーキング直後に10秒間脈拍を測ったところ20拍だったとします。

 先ほど説明しました通り、この20拍は10秒間の測定です。1分間あたりに換算するので6倍して120拍となります。

 ということは、先に求めていた目標心拍数108拍よりも12拍多い心拍だったとなります。

 先述しましたが、その運動が安全で効果的かどうかを確認するためには2つのチェックが必要でしたね。

 一つは「客観的な数値」でした。もう一つは、「主観的な自分の感覚(疲労感)」でしたね。

 先ほどの60歳の方は、客観的な数値としては108拍が安全で効果的な目標心拍数なのですが、実測はそれよりも12拍多かったわけです。

 そうすると、客観的な数値だけで判断すると、これは負荷が強過ぎる運動であったということになります。

 でも、「主観的な自分の感覚」として、「まだこのままウォーキングできるな!」であるなら、数値上はオーバーしてますが、疲労感は問題ないわけです。

 であるなら、目標心拍数の108拍に下げる必要はありません。

 その60歳の方にとっては、その運動の負荷は、現状の体力で十分対応できているわけです。そうであるなら、ぜひ、そのままの運動負荷が「ややきつい」と感じるくらいまで運動の負荷を上げていって下さい。

 この「主観的な自分の感覚(疲労感)」を「自覚的運動強度」と言いますが、自分としては、「楽」から「ややきつい」と感じる程度が、運動負荷として適当であるとしています。

 「客観的な数値」と「主観的な自分の感覚」をバランスよく使うことが重要と申し上げましたが、その使い方としては、まずは、実際にウォーキングなどの運動をしている最中の疲労感がどうであるか、ということを押さえて下さい。

 その疲労感が『楽〜ややきつい』というものであった時に、運動直後の心拍が自分の目標心拍数とほぼ同じであったとするなら、安全でかつ効果のある運動ができたということになります。

 もし、運動の最中に「苦しい」と感じるようであれば、その運動負荷はあなたの体力に見合ったものではない危険なレベルのものですので、負荷を下げましょう。

 そして、その時の心拍を測ってみたところ、自分の目標心拍数よりも実測値が低かったとするならば、体力はまだ低いレベルと判断できますので、まずは今の運動よりも少しで良いので時間を増やす、少しだけ早く歩いてみるもいうレベルから始めて、いずれは目標心拍数を目指していけば良いのです。

 逆に、目標心拍数よりも実測値が高かった場合は、その日の運動は頑張り過ぎたかもしれませんので、もう少し負荷を落として、目標心拍数となる負荷であらためて運動をしてみて下さい。でもその時、自覚的運動強度が「楽〜ややきつい」レベルであれば、その負荷で運動を続けても良いでしょう。

「客観的な数値」と「主観的な自分の感覚」。いずれも大切なことなのですが、まず重きを置いていただきたいのは、「主観的な感覚」です。

 数値はもちろん多くのデータをもとに研究された結果から導き出された計算で求めたものですから信頼のおけるものではありますが、一つの目安、参考値として捉えることが大切と思います。我々の体は日々、いや、その瞬間瞬間で変化しています。

 昨日と今日では、数値は変わらなくとも感覚は違っていることの方が多いと思うのです。

ですので、自分の体のからの声をよく聴いてほしいのです。

「今日の調子はどうかな?」と自らの体に聴きながら運動を実施して下さいね。

【コラム】
先ほどご紹介しましたウェアラブル端末は身につけたままですので、四六時中、心臓の状態を記録してくれています。運動中においては負荷が強過ぎていないかどうかも教えてくれます。また、脈拍の乱れ(不整脈)を教えてくれるものもあります。睡眠中の脈の状態も測定しています。こうした実績が積み上げられて来て、医療現場にも活用されつつあり、信頼の高いものとなってきていますので、改めまして、このウェアラブル端末のご利用をお勧めします。

*参考4- 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/undou-kiso/shinpaku.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?