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【動画ブートキャンプからブランド人へ】タカオミインタビュー(後編)/人の評価を気にするからこそ自分らしく生きる

NewsPicksアカデミアの動画ブートキャンプの後、NewsPicksやZOZO TOWNからも動画制作の依頼を受けるようになり、自身のサロン「タカオミ動画編集室」を開設、新しい動画の表現を突き詰めて続けているタカオミさん。インタビューの後半では、そんな彼の美意識と素顔に迫ります。

クリエイティブは妥協のないスポーツ

――タカオミさんは、なぜそこまで動画に打ち込めるのですか。

僕は音楽で一度挫折しているんです。ミュージシャンになりたくて、高校を辞めてギターを弾いていたのですが、意志が弱くて、努力しきれませんでした。今から思うと、ミュージシャンになる資格はなかったと思います。失敗したときに「そこまで本気じゃなかったし」という言い訳をどこかで自分の中に作っていたというか。

でも、やりたいものから逃げたら駄目だと覚悟を持った瞬間があったんです。クリエイティブも本当はスポーツなんだなと。

――スポーツですか。

スポーツ選手は、毎日トレーニングして大会やオリンピックのためだけに人生のすべてを注ぎますよね。
もしスポーツ選手が自分の中に隙を作って、「まあちょっと遊んでいた時期もあったんで」ということを言ったとしたらすごくダサいですよね。結果がすべての世界だから。「じゃあやれよ」と突っ込まれます。
それと同じで、たとえ負けてもこれ以上の結果は俺には出ないというとこまで行かないと、クリエイティブもなし得ないと僕は思っているんです。

――動画はそういう覚悟でやっているんですね。

はい。僕はトロントで映像制作プロダクションをやっていたのですが、本当にしんどかったです。本気でがんばって作った映像が、数十回しか再生されてないとかざらにあって。なんかもう、先の見えない道をただ走り続ける感覚でした。光が当たらない、絶望的な状況。何で作っているんだろうと思いました。

でもやり続けました。たかだか1年間程度ですが、トロントで日本のカルチャーを映像で提供するメディアを作って、鳴かず飛ばずもあれば反響があった動画もあったし、何が正解か分からない状況でしたが、やり続けたんです。

――やり続けられるほど、動画が好きなんですよね。

僕も明石さんと同じ、動画狂なんですよ。動画を始めたきっかけは、ミュージックビデオを作ろうとして、素人ながらスマートフォンで撮影したものを、何時間も編集し続けたことでした。

それ以来、動画を作る合間に動画を作るようなことをずっとしているんです。動画バカですね。ずっと動画を作り続けているし、作ってないと不安です。

試して飽きるを繰り返し、動画に出会った

――そういう、やり続けられるものにはどうしたら出会えたのですか。

色々試しましたね。Webデザインもやったし、コーディングも、アプリのプログラミングも、バイオリンもやりました。かっこいいから。

――バイオリン、死ぬほど似合う(笑)。

やってみようと思ったら、まず教科書を買って、やってみるんです。そして数日で飽きたら、それ以上はやりません。

――よく打席に立てといいますが、やっぱり立たないと分からないですもんね。

自分ですら覚えていないですけど、一時的にハマることは何個もやっていて、飽きたら忘れるんです。僕はいっぱい飽きてきた気がします。

――人からどう見られるかは、あまり気にならないのですか。

気になりますけど、それで僕の評価が下がるとは思っていません。多分、人の評価を気にしているからこそ、自分らしく生きているんです。僕が自由にやっていれば、僕が何をやっても「それがタカオミだよね」ということになるじゃないですか。変に型を作ってしまうとそれから外れること気にしてしまいますけど、自分は自分でいればいい。それを周りに悪く言われるようなことはないと思うんです。

編集はジグソーパズルの組み立て作業

――動画制作のどんなところが面白いですか?

今、アウトプットを作る方に寄っているんですけど、本来は企画とか構成が好きです。
凝り性だから編集も納得いくまでやってしまうことがほとんどですが、もし自分より編集がうまい人間と組めたら、すべて任せたいですね(笑)。

――編集にもタカオミさんらしさが出ていると思いますが。

企画とか構成が、例えばジグソーパズルの完成図の絵を描くものだとしたら、編集はパズルを組み立てる感覚なんです。ゴールに向かってロジカルに作り上げるような。ゼロ、イチのクリエイティブではないという気がしてしまうんです。

もちろんゴールに対して、どういう表現方法を取るかとか、どういう編集方法をぶつけるかというのはクリエイティブですが、僕のしたいことは100%そこではないのかなと。こういう構成で作ったら面白いとか、絶対人は最後まで見るということを考える方が好きなんですよ。

――でも編集も、ゴールは一つだとしても、行き方って何通りもあるし、ベストな行き方を選べるのはセンスなのではないですか。

センスについてはよく分からないんです。僕は、経験則とかロジックで組み立てるということをしているから。

映画を見ていて、なぜこのシーンがこういう風に描かれているのかを考えると、それはこういうことを表現したかったからという理由がわかりますよね。その積み重ねです。そういう引き出しをいっぱい増やしておくことで、逆にこういうことを表現したければ、こういう方法を取ればいいということがわかってきます。これは僕の中ではセンスというより、知識の蓄えなんですよ。

――日々、人の心の機微を観察して、心理分析みたいなことをひたすらロジカルにやっているんですね。

感覚とロジックを厳密に分けられない分野ではあるのですが、完全に感覚100%ではないと思っています。

動画が時代に求められている

――どんなところに動画の可能性を感じていますか。

今、テキストコンテンツでいいものがたくさんありますが、あまり読まれないですよね。僕もだんだん読まなくなってきています。有料購読していたnoteも、読まなくなりました。

やっぱり写真や文章は、アテンションを集めることに関して動画には勝てないと思うんです。人は動くものを無意識に目で追ってしまいます。そして動画には時間軸があって、画があって、言葉もあり、音楽も、音もある。すべてを内包したメディアです。そういう意味で最強のメディアだと思うんです。

――時代も追いついてしまいましたよね。Twitterのタイムラインで自動再生されるとか、動画を見ると容量使ってしまうというような時代でもなくなってきました。しかも数分のダイジェスト動画が強い。いくら面白くても何時間も見続けられないですから。

今、ちょうどWEEKLY OCHIAIのダイジェストを制作していますが、ダイジェストに関しては、箕輪厚介さんからアドバイスをもらったんです。全体をまんべんなく紹介するのではなく、話を一つ完結させた方がいい。その方がよく見てもらえると。だから1分間だけでも面白い、それだけで起承転結があるものを作るようにしています。

――その方が刺さるし、一部がこれだけ面白いなら全部面白かろうと思ってもらえると。

「面白かろう」というような思わせぶりではなくて、結論を言ってしまってますね。「あれ見ちゃったら、別に本編見なくてよくない?」というぐらいのものを作っているつもりです。

クリエイター、タカオミが目指す道

――これから動画でどんなことをやっていきたいですか。

面白いコンテンツを持つメディアは、それをパブリッシュしてより広い人にリーチする方法を、多く持ってた方がいいと思うんです。そのひとつの方法として、動画はかなり強いアイテムですよね。だからどういう団体でどんな動画を作るにしても、コンテンツを広める最適な方法を見つけるために、タカオミ動画編集室で、その演出方法や表現方法を研究したいと思っています。

――明石さんからは「弟子」認定もされて、ツイッターでアドバイスももらえていますよね。

もう格闘家の師弟という感じですよね。合宿で作品をぶつけて、拳で殴り合った結果です。ちゃんと作ろうという意思があることを、見せられたのかなという感じですね。それまで僕は箕輪編集室で表面的な動画を作っていましたが、合宿ではクリエイティブに対する姿勢を作品で示すことができたのかもしれません。

アカデミア合宿のあと、明石さんとお食事に行く機会があって。そこで、ONE MEDIAでトライアルとして実際に動画編集に携わることも決まりました。

――合宿で優勝した後の、NewsPicksとの仕事のスピード感もユーザーベースならでは。その動画の再生回数も30万回を越えました。これからのタカオミさんの活躍が本当に楽しみです。

今日はありがとうございました。

(終わり)

【動画ブートキャンプからブランド人へ】タカオミインタビューの前編はこちら↓


写真:池田実加
編集:柴山由香

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