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16 旅の大きな収穫

巡礼者によってさまざまだろう。

ぼくの場合。

もうそれが巡礼のどこで起こったか、いつだったか、全然記憶にない。ことは次のように起こった。

・その日もテクテクと激痛の走る左足をがまんしながら歩いていた

・雨は降っていなかった

・そして午後、力尽きた

・もう、だめだ。どっかで休もうと思った

・人気のない松林を見つけてそこで横になった

・小一時間ほどして目を覚ました

・そして、このように思った。

 「何故、自分はあくせくこの道を歩いているのだろう?こんな風光明媚な土地を歩ける機会なんて人生何度もないのに。もうちょっとゆったりとして、食べ物や飲み物や風景や巡礼者との触れ合いを楽しめばいいのに。慌てて旅をするメリットがどこにあるんだ?この巡礼ってもしかしたら、自分が今まで気づいていなかった自分の悪しき人生の縮図じゃないのか?」

もちろん、このように考えたからといって、何十年もかけて自分が身につけた習慣が一夜にして変わるはずもないが、この気づきは巡礼後、徐々に自分の人生のあり方を変えていった。

他の人にはあたり前のことかも知れないが、自分をボロボロになるまで追い込まず、疲れたら休み、疲れを取り、落ち着かせ、そして気を取り直して前に進む。そんなスタイルに変わっていった。

旅の大きな収穫の一つは、客観的に自分を見つめ直し人生を変容させることだった、と言えるだろう。

つづく