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デイヴィッド・チャーマーズ『Reality +』目次と小見出しの私訳

バーチャルリアリティの哲学的問題についてデイヴィッド・チャーマーズの最新刊『Reality +』が興味深かったのでKindleで入手して斜め読みしてみました。

キャッチーなタイトルですが、手堅く思想史・哲学史を踏まえた議論を展開していました。詳しくは別記事を執筆するつもりですが、2進法や普遍記号学を創始したライプニッツの重要性を再認識しました。

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「バーチャルリアリティは物理的現実よりも純粋な現実である」というキャッチーなアピールに当初は違和感がありました。しかし、ライプニッツのような哲学的試みを下敷きにして読めば腑に落ちるものですし、何よりも私たちが直面するバーチャルリアリティの実装された技術を見ると、その哲学の具体化を実感します。数学的言語で世界を創造するというライプニッツの世界観が具体化された現実に驚きます。

とても興味深いチャーマーズの『Reality +』の目次と見出しだけ私訳したものを下記に掲載します。間違いが数多くあると思いますので、読まれた方は気軽にご指摘ください。


導入部 テクノ哲学の冒険

第一部 バーチャル世界

第一章 これは実在する世界なのか?
・荘子の胡蝶の夢
・ナラダの変身
・プラトンの洞窟の比喩
・三つの質問
・知識への問い:私たちはバーチャル世界にいるのかいないのかを知ることはできるのか?
・現実への問い:バーチャル世界は現実なのか幻覚なのか?
・価値への問い:私たちはバーチャル世界で善く生きることは可能だろうか?
・中核の哲学的問い
・哲学的な問いへの回答
第二章 シミュレーション仮説とは何か?
・可能な世界と思考実験
・SFにおけるシミュレーション
・シミュレーション仮説
・あなたがシミュレーションの中にいないと証明することはできるのだろうか?
・あなたがシミュレーションの中にいることを証明することはできるのだろうか?
・シミュレーション仮説は科学的な仮説だろうか?
・シミュレーション仮説とバーチャル世界の仮説

第二部 知識

第三章 私たちは対象を知っているのか?
・外部世界についての懐疑主義
・感覚があなたを欺いていないということを、あなたはどのように知るのか?
・あなたは夢を見ていないとどのように知るのか?
・デカルトの邪悪な悪魔
・邪悪な悪魔からシミュレーション仮説へ
・懐疑主義のためのマスターアーギュメント
・我思う、ゆえに我有り
第四章 私たちは外部世界の存在を証明することができるのだろうか?
・神はその問題を解決することができるのだろうか?
・現象は実在と等置することはできるのだろうか?~バークリー「存在は知覚」~
・シミュレーション仮説は無意味なのだろうか?
・シミュレーション仮説は矛盾性を含むものなのだろうか?
・ラッセルの単純さへの依拠はシミュレーション仮説を除外するのだろうか?
・私たちがシミュレーションの中にいないことは明白であろうか?
第五章 私たちはシミュレーションの中にいることは確かなのだろうか?
・シミュレーション議論
・その議論の展開
・数多くのシム市民は存在するのだろうか?
・私たちはシミュレーションから自立した特別な存在であろうか?
・祖先シミュレーションと人間に似たシム市民
・結論

第三部 現実

第六章 現実とは何か?
・存在するものとしての現実と、複数ありうる世界としての諸現実
・何が現実であるかについて考えるための5つの方法
・存在としての現実
・因果効力としての現実
・精神から独立したものとしての現実
・非現実的ではないものとしての現実
・純粋性としての現実
・シミュレーションされた現実は現実的であるだろうか。
・形而上学としてのシミュレーション仮説
・哲学の歴史における幻覚を見ていないという見解(デカルト)
第七章 神は隣の宇宙のハッカーなのか
・神とは何か?
・神の実在を求める議論
・神の実在を求めるシミュレーション議論
・シミュレーション神学
・シミュレーションと宗教
第八章 宇宙は情報でできているのだろうか?
・形而上学:水(タレス)から情報まで
・情報の多様性
・構造的な情報
・情報とは物理的である
・情報の物理学
・すべてはビットから生まれ、そのビットの背後にはものがあるという仮説
・すべてはビットから生まれるという純粋な仮説
第九章 シミュレーションは宇宙をビットから創造したのだろうか?
・二つの仮説は同一のお話
・シミュレーション仮説
・すべてはビットから生まれたという仮説
・シミュレーション仮説からすべてはビットから創造されたという仮説に至るまで
・どのようにして私たちはビットからものまで至ることができるのか?
・シミュレーション実在論
・棚卸

第四部 リアルなバーチャルリアリティ

第十章 バーチャルリアリティのヘッドセットは現実を創造するのだろうか?
・バーチャルリアリティとは何か?
・バーチャルリアリズムとバーチャル虚構主義
・バーチャルデジタル主義
・バーチャルの猫は本当に猫なのか?
第十一章 バーチャルリアリティ装置は幻想を創り出す機械なのだろうか?
・バーチャルリアリティは幻覚なのだろうか?
・色とバーチャル上の空間、そして物理的な現実
・鏡像は幻想なのだろうか?
・バーチャルリアリティは幻想なのだろうか?
・場所ともっともらしさの幻想
・物理的な身体とバーチャルな身体
・幻想を創り出す機械か、それとも現実を創り出す機械か?
第十二章 拡張現実はもう一つの事実へと導くのだろうか?
・拡張現実におけるバーチャルオブジェ
・拡張現実からもう一つの事実へ
・近い将来の拡張現実
・物理性とバーチャル性の連続体
第十三章 私たちはディープフェイクに騙されることを避けられるのだろうか?
・ディープフェイカーは実在するのだろうか?
・ある像が実在すると私達はどのようにして認識するのだろうか?
・フェイクニュースの問題点はなんだろうか?

第五部 精神

第十四章 バーチャル世界では精神と肉体はどのように相互作用しているのだろうか?
・デカルトと精神ー肉体問題
・バーチャルリアリティにおける精神と肉体の相互作用
・様々なバーチャル世界に存在する精神と肉体
・結論
第十五章 デジタル世界において意識が存在することは可能だろうか?
・意識という問題
・他者の精神という問題
・機械は意識を持った存在でありうるのか
・結論
第十六章 拡張現実は精神を拡張することは可能だろうか?
・拡張された精神
・拡張された精神を追究した議論
・拡張された精神にもとづく様々な結論

第六部 価値

第十七章 あなたはバーチャル世界で善く生きることは可能だろうか?
・価値とは何か?
・バーチャルリアリティからはどのような善きものが見失われているのか?
・バーチャルリアリティに長時間滞在すると何が見失われるのだろうか?
・Terraformがもたらすリアリティ
・価値の源泉とは何か?
第十八章 シミュレーションされた生活において何が問題なのか?
・倫理的な理論
・様々なシミュレーションと道徳的地位
・様々なシミュレーションの様々な倫理
第十九章 私たちはどのようにしてバーチャル社会を構築すべきなのだろうか?
ユーザーのための倫理
クリエーターのための倫理
バーチャル世界における政府
バーチャル世界における平等と公正

第七部 根本諸問題

第二十章 バーチャル世界では、私たちの言語は何を意味するのか?
・言語の哲学
・ツイン地球とシム地球
・地球とシム地球の間を行き来すること
・パトナムが論ずる外在主義とデカルト的懐疑論
第二十一章 粉塵はコンピュータプログラムを実行させるのか?
・実世界におけるコンピュータによる計算
・粉塵は生命を生み出すのかという議論
・原因と結果を尊重する
・因果構造主義
第二十二章 リアリティは数学的構造なのか?
・科学は世界について何を語りうるのか?
・物理学はそのまま数学なのだろうか?
・粉塵の中に物理学はありうるのだろうか?
・構造主義からシミュレーションリアリズムへ
・構造を実現するのは何なのか?
・カントの謙遜
第二十三章 私たちはエデンの園から堕ちた存在なのか?
・現象的イメージと科学的イメージ
・現象的イメージの再構築
・現象的イメージと科学的イメージにおける空間
・バーチャルリアリティにおける固体、色、そして空間
・リアリティは幻覚なのだろうか?
・不完全な実在論
・プラトンのイデアと、エデンの園からの堕落
第二十四章 私たちは、夢の世界の中にあるボルツマン脳なのであろうか?
・局地的なシミュレーション
・限られた時間でのシミュレーション
・不完全なシミュレーション
・あらかじめプログラムされたシミュレーション
・神と邪悪な悪魔
・夢と幻覚
・カオス仮説とボルツマン脳
・結論:リアリティから逃れることはできない

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