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Box, Inc. CEO、共同創業者兼会長のアーロン・レヴィ 氏「日本のSaaS Shiftを加速する」速攻書き起こし

今日は虎ノ門ヒルズで開催されているSaaSWayカンファレンスに参加しています。今回のセッション内容は以下の通り。

SaaSは米国と同様に日本でも広まるのか? その広がりを加速するためには何が必要か? SaaSを急成長させるために欠かせない企業文化とは何か? 全世界で95,000社以上の企業、Fortune 500の70%および、日本でも4,800社以上の企業、日経225の45%で利用されているグローバルSaaSの代表格であり、クラウド・コンテンツ・マネジメントのリーディングベンダーBox。 その創業者でありCEOであるアーロン・レヴィ氏にストレートに質問をぶつけ、日本でのSaaS導入の促進や、SaaSへのビジネスモデル変革に対するヒントをお話しいただく。

Box, Inc. CEO、共同創業者兼会長のアーロン・レヴィ 氏のプロフィールはこちら。

2005年にもう1人の共同創業者であるCFOのディラン・スミスとともに事業をスタート。Box製品およびプラットフォーム戦略のビジョンのもと、人々が仕事をする上で最もセキュアなコンテンツ・コラボレーションと、直感的なユーザーエクスペリエンスの提供に注力してきた。人々、そして企業・組織の働き方を変え、ビジネスを変革させることをミッションにBoxを率い、2005年4月よりBoxの取締役を務める。2003年から2005年まで南カリフォルニア大学に在籍した後、Boxを創業。

では、書き起こしていきます。

Q.9万社以上に使われているSaaSです。こんなSaaSは日本にはないので、ぜひ質問していきます。Boxの立ち上げストーリーを教えてください。



A.まず数名の友人と2005年に立ち上げました。会場にいる方々は小学生くらいのときでしょうか。我々は大学3年生でした。その時、シンプルで単純な方法を見出そうとしました。どんなファイルでもアクセスできるもの。ブラックベリー・・・。覚えてます?今、あんまりよくないですよね。

その昔、ブラックベリーがありました。IEもありました。あー、反応がないってことは誰も使ってないんでしょうね。

(会場爆笑)

テクノロジーは高く、しかも遅かったんです。スピードアップし、安くする未来をその時、想像しました。ものすごくシンプルな方法でどこからでもアクセスできる方法を考えたんです。box.netを作りました。.comは高くて買えなかったんです。

共同創業者はポーカーがうまく、100万円稼いでくれたんです。その資金を最初使いました。Boxは簡単に共有できる、という宣伝文句で世界中のユーザーが使い始めました。そして大学をやめてバークレーに行き、4人で仕事を始めました。Boxの設立をしました。VCから資金を集めたいと思ったのですが、嫌だと言われたんです。レガシーテクノロジーとは戦えないと思われたんですね。

そこで、B2Bに本格参入しました。エンタープライズ向けにしたんですね。

Q.なんでB2CからB2Bに変更したんでしょうか。B2Bって地味なイメージがあると思うのですが。

その時、20才でした。その時のエンタープライズ市場は本当つまんなかったんです。まったく面白くなかったんですね。そこで問いかけました。コンシューマー向けのものを企業向けに導入したらどうだろうか。従来型の複雑で重いものではなく、簡単で使いやすく使いたいと思えるものですね。エンタープライズ分野を破壊することで、我々も変わる。その上で、中核としてコンシューマー向けのようなものを企画しました。良い顧客体験を考えました。公平でわかりやすいものにして、複雑なものはやめたんです。

Q.B2Bならではの外せないポイントはなんでしたか?

大手の企業とやっているのが大事でした。大企業に対して、提供しないといけないので、コンサルなども必要でした。これをB2Cのテクノロジーと組み合わせて提供しようと考えました。エンドユーザーがシンプルに使えるものを追求しました。サインアップを簡単にでき、しかもフリーミアムで。これをエンタープライズ向けに導入しようと思ったんです。

Q.なぜ、アメリカではこんなにSaaSが広がったんでしょうか。

まずは、SaaSの成長が日本でもあると思うんです。より多くの日本企業はSaaSが使っています。アメリカの方が先に始まったのは事実ですが、それはセールスフォース 、AWSなどが先行したからでしょう。グローバルトレンドとなった今は、こういった技術を導入しています。

アメリカの企業の社員はもっと不満を持っていたということでしょう。他のソフトをダウンロードしていたんです。実際、これはルール違反だったんですが、みんなやっていたんですね。勝手にダウンロードしていたんですね。自分たちでソフトを持ち込んだわけです。

Q.日本でSaaSが増えるためには?

それぞれの従業員がもっと良いサービスを追求すること、既存のシステムをよりよくしようと思うことではないか、と思います。日本のITのリーダーがこんなことを言いました。「もっと要求してほしい。組織のほうから要求してほしい」。

ITの人ではない人がもっと要求すればよくなると思います。組織の中で革命を起こす方法を考えてほしいと思います。

Q.より多くのSaaSのことを知ってほしいですね。ところで、意外と役職の人より、現場の方が「役に立つ」と感じることって大事ですよね。さて、大企業についてです。Boxはなぜ、大企業に導入されたのでしょうか。成功要因を教えてください。

非常に幸運でした。日本で既に5000社います。私たちはユニークな課題に挑戦したんです。簡単でiPhoneのようにシンプルなもの、コンプライアンス・セキュリティーもクリアしているものを作ったんです。

大事なのは、「問題にフォーカスすること」。それをユニークな方法で乗り越えると差別化することができます。

安全性、使いやすい、シンプル。これが大事なんです。Slack、Zoomは全て満たしています。

Q.セキュリティーに関しては最初からかなり投資されていると聞いています。

まずデータそのものの暗号化が必要です。セキュリティー的な観点からやる上で監査する必要があります。コンプラアンス遵守も必要です。でも、ユーザー自身が簡単で楽でないと思っています。複雑なシステムじゃないといけない、と思っている人が多いんです。25個ボタンがないといけない、と考える人が多いんですが、シンプルにしないといけません。

Q.大企業だとどうしても機能が増えるんですが・・・

ここからのアドバイスは大企業にするか倒産するかどっちかなんですが・・・。お客様がカスタマイズしないといけない、と思い込みますが、それは避けた方がいいんです。カスタム化しない方がお客さんにとっていいんです。シンプル化のアドバイスが大事なんです。カスタム化の幅が低ければ低いほどその方がいいんです。カスタマイズはしないほうがいい。全く逆なんです。iPhoneってカスタマイズできないですよね。それと一緒です。

Q.カスタマイズしすぎると集合知を活用できないですもんね。

はい、さらにカスタマイズすると、お客様が古いバージョンで閉じ込められてしまいます。それ以上、前にすすめない。いつも陳腐化してしまうことになっています。せっかくイノベーションをやっているのに意味がない。だから、カスタマイズを終わらせましょう。

Q.Boxの高成長を実現する企業文化について教えてください。

とても静かな文化です・・・。あ、冗談です。

文化はコラボレーション、オープン、イノベーション、非常に早く進むカアルチャーです。会社の環境としては、迅速にやり、アイディアを聞くということです。一番の新人やサマーインターンかもしれません。そういうアイディアがとても良いことがあるんです。

誰からもアイディアを聞き、フィードバックするんです。

Q.アジャイルに開発することを自社でやっていくわけですね。

はい、お客様のために、ということをひたすら考える必要があります。お客様中心に考える必要があるんです。

Q.カスタマーセンターの文化は?

お客様の声を聞くことです。全ての従業員がお客様を大切にし、反することをやっていれば、これは違うということを学んでもらいます。例えば、車の会社のトヨタもお客様の声を常に聞いています。確実にお客様について考える・バリューを考えるのが大事です。

Q.お客様は神様だ、みたいな考えかたが日本にはあるけど、そことの違いってどこですか?

例えば、トヨタに行って、6車輪つけてほしいと言いますか?プリウスはほしいけど、屋根は欲しくないって言えますか?車でプロペラがついてて飛ぶのがほしいとも言わないですよね。ソフトウェアを作るときも、多くの人に役立つものにしないといけないんです。

Q.Boxはどうやって目指すべきビジョンの共有をしていますか?

それは難しいですね・・・。私たちはまず教育しようとします。シンプルなソフトウェアに価値があることを伝えています。車は同じ、ソフトウェアだとカスタマイズと言われがちですが、伝えないといけません。

Q.他の多くのSaaSと連携する理由は?

顧客は1社からテクノロジーから買うのではなく、あらゆるところから買います。SlackやZoomなど。API連携しておけば、1つのことが得意なSaaSでつながることで、共創することができます。

Q.具体的にこのサービスと連携して、良い価値が作れた事例はありますか?

ムーブメントがあります。ビデオカンファレンスはZoom、チャットならSlackなど。それぞれのエコシステムの中で、あらゆるアーキテクチャーを提供しています。

Q.連携のトレンドはどうやって生まれた?

ここ、2,3年で生まれました。API連携ができるようになり、オープンになっていきました。

Q.日本のSaaS会社にアドバイスするなら?

オープンにフォーカスし、APIにフォーカスしてください。自分が全てを構築するのではなく、統合できるところにフォーカスした方がよいでしょう。

Q.日本のSaaSのポテンシャルは?

日本のSaaSのポテンシャルは膨大だと思います。オペレーションのあり方もSaaSによって牽引できるでしょう。日本には多くの素晴らしい企業があります。任天堂、トヨタ、ホンダ、ソニー、あー、ポケモン・・・。

(会場爆笑)

ここから大きな波が来ます。あらゆる会社はSaaSに移行します。今は良いタイミングだと思います。

Q.アメリカが先行している中で、今からSaaSを新しく作る人はどういうところにチャンスを感じるべきか。

アメリカは水平展開を考えています。しかし、人事、ERP、マーケティング、小売などにもチャンスがあります。技術の波、つまり大きく横展開するものではなく、業界特化のものが良いと思います。

キチンと顧客理解しているという洞察を活用すると良いでしょう。

Q.SaaS事業を今はじめる人にもっとも伝えたいアドバイスは?

第一に、うちと競合しないでほしい。

(会場爆笑)

Googleその他、色々います。これ以上増やさないで。

第二に、本を紹介します。イノベーションのジレンマ、キャズム、ブルーオーシャン戦略の3冊です。

人々は基本、振る舞いを変えたくないと考えています。差し迫った理由がないと変わりません。はるかに、卓越された破壊的技術じゃないといけません。

第三は顧客中心であること。第四はシンプルであること。ここは外してはいけません。これがアドバイスです。

SaaSは嘘がないというところが非常に良いと思います。なので、SaaSで働く人を増やしたいですね。

その通りです。Software as a serviceですから、価値が感じないとダメです。なので、普通の仕事とは全然違うんです。従来型のソフトウェアは、満足度はあまり関係なかった。でも、SaaSは常によくなっていないといけないですからね。

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