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61.5億円を資金調達したSmartHR宮田社長やファイナンス思考朝倉さんが語る「SaaSをグロースさせるLTV思考 - 日本と米国の違い -」

今日は虎ノ門ヒルズで開催されているSaaSWayカンファレンスに参加しています。今回のSpeakersとModeratorは以下の通り。

宮田 昇始氏
株式会社SmartHR
代表取締役CEO

朝倉 祐介氏
シニフィアン株式会社
共同代表

Moderator
森 敦子氏
株式会社ジャパンベンチャーリサーチ
執行役員 シニアアナリスト

セッション概要は以下の通り。

SaaSの本質は顧客との長期的な関係にある。それは、従来の売上や利益だけでは表せない。LTV = Life Time Value 解約しない限り、顧客が将来生み出し続ける収益の総和であるLTVが、SaaSを定量的に理解するベースとなる。SaaSを理解するに欠かせないLTV思考について、「ファイナンス思考」の著者である朝倉氏、LTV思考を体現して急成長を続けるSmartHRの代表取締役 宮田氏を迎え、JVRの森アナリストが切り込む。

米国で急成長を実現するSaaSのLTV思考。
それを支える米国の機関投資家のLTV思考。
果たして日本に欠けているものとは。

では、書き起こしていきます。


森氏)今回のセッションは、宮田さん、朝倉さんに直接質問したい方が多いと思いますので、slidoで質問可能です。まずは自己紹介からお願いします。

宮田氏)SmartHRの宮田です。ジャンルで言うとどの会社でも使えるSaaSを3年半やっています。61.5億円集めたのですが、朝倉さんは新しい株主です。失言しないように頑張ります。

(会場爆笑)

朝倉氏)こんにちは。先月、200億円のグロースファンドを作りました。レイターステージに対して、出資をし、上場した後、1000億円くらいの時価総額になると安定成長になると思うので、そこを超える支援をしていますSmartHRは第一号投資ファンドになります。

森氏)今回の話はLTV思考ってなに、ってところからはじめていき、そこから見える日米の差を明らかにしていきます。では、LTV思考ってなんでしょう。その前にどういう方が来ていますか?

SaaSを提供している方は?
(ほとんどの方が挙手)

SaaSを導入したい方は?
(少しだけ挙手)

投資したいという方はあ?
(少しだけ挙手)

SaaSとは、クラウドサービス*サブスクリプションモデルで定義されており、サービスを利用したい期間のみ使うことができます。LTVは SaaSの中でよく使われる顧客に対する考え方ですね。

LTVはARPU(ユーザーあたりの平均月間売上)/Churn Rate(月次解約率)で算出できます。これがわかると顧客獲得コストをどこに抑えればいいか、がわかるわけです。1000円がARPUでChurnが10%だとLTVが1万円。そのため、獲得コストはそれより下げようとするわけですね。

宮田氏)うちの場合は粗利でやってます。あくまでうちの会社の場合は、という感じなんですけどね。

森氏)ARPUはインサイドセールス、フィールドセールスが絡み、 Churnはカスタマーサクセスが影響します。サービス利用者と提供者の価値が一致するとことがSaaSは特徴です。そのため、予測性と再現性があります。

売り切り型とサブスクリプション型についてですが、売り切りの場合は短期間で爆発的な収益形状が見込める一方で、都度の商品・サービス提供が求められます。

一方でSaaSは最初にコストをかけて、そのあとは安定して課金されていくビジネスモデルで積み上げ型になり、投資回収の売上予測が立てやすいわけです。

あるSaaSの企業の売上が100億円だった場合、来年のARRはだいたい掴めます。年間解約率が10%だった場合、90億円+αになるわけです。

サブスクリプションで示される3つの失敗があります。

・定期収益がベース
・営業・マーケティングは将来に対して行使される

これって朝倉さんが書かれているファイナンス思考と近いので、ぜひ教えてください。

朝倉氏)森さんのおっしゃる通り、SaaSの考え方はファイナンス思考と近いですね。目先より将来を見るという考え方ですね。ファイナンス思考の対立軸としてはPL脳があります。多くの会社がPL脳です。PL脳は、売上・利益というところを目先で最大化することを考えているんですね。

ファイナンス思考は、会社の企業価値を最大化することを目指しています。企業価値は将来にわたって生み出すキャッシュフローの総量です。ファイナンス思考は長期・未来志向・自律的。PL脳はPL上の数字を追います。そして、四半期、年度など短期で考えます。さらに他律的です。

経営アプローチも、ファイナンス思考は戦略的・逆算型。PL脳は管理的・調整的です。

よく考えると、決算の頻度とかも1年に1回とかは勝手に決まっているものですよね。でも、事業は1年・四半期では計りづらいかもしれないですよね。重いもの場合は、もう少し長い時間軸が必要ですね。

今期の売上は今ひとつだなあ、という時もありますよね。研究開発を増やそうとかそういうときもあります。関西弁で言う「こすい」やり方しかできないんです。ファイナンス思考はより将来的なことを考えます。

PL脳あるあるフレーズは、「増収増益を果たすことが使命」「今期は減益になりそうだからマーケティングコストを削ろう」「うちは無借金だから健全経営です」「黒字だから問題ない」とかです。意外とこういうのが危険なんですね。

なぜファイナンス思考が大事なのか。

朝倉氏)S&P500とTOPIXを比べると成長差は8倍超なんです。心電図で言うとTOPIXはご臨終ですよ。ピーンと言う状態。一番大きな考え方はファイナンス思考がないことと、考えているんですね。

世界企業時価総額ランキングの変化を見ると、平成元年と平成30年を見ると、日本は昔すごかったのに、今は全然入ってこないんですね。アップル・アマゾン・アルファベットなど。彼らは果敢な投資をしていたんですね。これはあまりにも情けないです。

目先のPLをよく見せることだけを考えていると、未来に向かって価値のある大きな事業をつくることができないわけです。経営者がどれだけやり切れるか、そして投資家が支えられるかが大事でしょう。

森氏)LTV思考はファイナンス思考は近いですよね。

宮田氏)これは非常にわかりやすいですね。とてもいいですね。

森氏)さて、61.5億円の調達おめでとうございます!シリーズCについて教えてください!まずこの布陣を選んだ理由は?

宮田氏)既存は信じて出してくれました。新規は海外の投資家が入りました。SanSanのような事例が出てきたんですがCVCなどの場合、変な提携が前提になっちゃうことがあったりします。上場後も長期保有してくれるグロースファンドがいないんですね。前田ヒロさんと朝倉さんからグロースファンドをつくると聞いたんですね。なにこの運命って思いました。

海外についてはあんまり考えてなかったんですよ。コーラルのジェームスさんが海外を紹介してくれたんですが、海外の方が評価が高いんですよ。開始15分で「なぜ、もっと踏まないんだ」と言われたりするんです。

朝倉氏)海外の投資家は一様に利益を出していることを怒られますね。成長企業に長い時間で資金を投じる会社と、日本の普通の会社にはかなり乖離がありますね。

宮田氏)このタイミングで上場します、と言うと、海外の人からは怒られましたね。ここで成長止まると思ってるんですか、という反応。海外投資家も「四半期決算全く興味ないからどこまで大きくなるかだけ教えてくれ!」っていう感じだったんですね。海外の投資家にも基本テレカンばかり。2回でテレカンで出資が決まりました。2回目以降も15分とかでした。

日本だとARR、社数が重視されています。海外はネットテンションレートが厳しく見ますね。SmartHRは99.5%。デューデリでも解約した顧客のリストを送ってくれ、と言われます。

海外だと複利で見てるので、チャーンが低く、ねっとりテンションレートが高いことが一番大事なんですよ。金額を一気に追加することを前提。

森氏)一定期間における、既存顧客のサービス利用料金の増額を、解約などによる現象学とネットして、そのネット増加割合をみる指標なんです。

宮田氏)うちは120なんです。全社導入マストなので、普通は低くなります。しかも、去年の数字なのでここからさらに上がります。そのあたりが見られたポイントかなと思います。

森氏)15%差があると、150億円の評価の差になるとは言われてます。そこが評価された?

宮田氏)そうですね。

森氏)Slackという事例があり、ニューヨーク市場に直接上場しました。195億ドルで上場したんですが、PLだと赤字がずっと続いています。爆発的な成長で、NetRetentionRateが143%なわけです。

宮田氏)Slackはコホートがすごいんです。それを見たんですけど、数字がすごすぎて。Slackとは比べられたくないんですよね。(笑)

森氏)あはは。では、なぜSmartHRに出資したんでしょうか。

朝倉氏)売上は伸びていることですね。本質は価値を持っているかどうかなんですね。バブルなんじゃないの、って言う人もいると思います。なにも生まないものなのか、ユーザーに愛されるものなのか、が大事だと思います。ずっと話を聞いてて、言っていた通りの成長をしているのを横で見てきました。これは投資家にとっては非常に重要なんですね。応援する投資家とも嘘がないかどうか、が大事ですね。

そういう意味ではSaaS事業は投資家ウケするのはメイクセンスかな、と思いますね。

森氏)チームも見たりしますか?

朝倉氏)そうですね。ディスカッションできるかどうか、議論できるかどうか、が大事ですね。そもそも議論にならないところは難しいですね。

森氏)チャーンレートはどうやっていましたか?

宮田氏)出した直後は3%くらいでした。なので、頑張るというのはやってました。また、敢えて月額料金にしてチャーンさせて、理解するようにしていました。早めにチャーンしてもらえるので、改善できるんですよね。

朝倉氏)営業手腕が良すぎると、プロダクトが良いかどうかがわからないんですよね。改めてわかるようにするというのはいいと思います。

森氏)具体的にはどうやってチャーンを減らしていましたか?

宮田氏)最初はずっと聞いてました。最近はカスタマーサクセス向けのツールなどを使い、デジタルに抽出してチャーン可能性が高いところを重点的にやっていたりしました。また、使いこなしていないゴーストに対して、やぶ蛇かもしれないけど、聞いてみるようなことをしています。

森氏)古い企業文化はどうやって変えられますか、という質問が朝倉さんにきています。

朝倉氏)独立しましょう。

(会場爆笑)

 PL脳とは言っても、PL自体は別にバカにしてはいないわけです。ただ、PL脳の文化だとなかなか進みづらいんですね。どうやって切り分けるか。新規事業と既存事業は混ぜるな危険なので、混ぜないほうがいいです。最終的には社長がやる気あるかどうかが一番大事ですね。

宮田氏)LTVの原価はなに、っていう質問があったので。AWSや保守・サポート・カスタマーサクセスの一部の人件費を原価にしています。出てくるLTVを元にCACを考えていきます。チャーンレートは2%で平均継続は5年とかなんですよ。うちの場合は16年とかになるんですが、それだとさすがに怖すぎるので、10ヶ月で見てやっていますね。

森氏)T2D3というのがありまして、3倍、3倍、2倍、2倍、2倍。5年で72倍に成長していくのが大事と言われています。SmartHRさん、これ満たしてますよね。理由はなんでしょう。

宮田氏)そうですね。少し早回るペースで伸びています。今後もホライズンも高単価なバーティカルなどは狙いやすいと思います。ただ、ちゃんとお金を使えるかが大事です。調達してもあまり踏んでない会社はもったいないと思うんですよね。突っ込みやすい環境にあり、突っ込んでいないと、ノリづらくなります。ちゃんとお金を使うのは大事だとおもうんですよね。

株主からは「お金使うの上手だよねー」と言われます。今回の61.5億円も人とマーケに半々に使う予定です。最初のTVCMも銀行口座の半分を突っ込むみたいなことをやっていました。

朝倉氏)実際こういう成長をする会社はあるので、こういう事例を増やしていきたいですね。先行投資ができる環境の1つは投資ですし、PL思考からいかに抜け出すかが大事ですね。僕はラクスルの経営にも関わっているのですが、ラクスルは粗利で考えています。広告宣伝費とかで考えてしまうのではなく、自分たちの価値を粗利で説明するわけです。ご参考にしてください。

森氏)預金の半分を突っ込んだと言う話がありましたが、CACとLTVは3倍とかは言われていますが、これは見てましたか?

宮田氏)はい、それだけしか見てなかったですね。なので、それだけを考えて、やっていました。メトリックスを使ってやると、非常に良いですね。

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