full up the moment

一歳の彼は突発性発疹で不機嫌が続き、のけぞって泣き喚いてやっと眠った。
腕の中サイズの嵐がおさまって、ふと気づくと午前中が終わっている。

さっきまでの騒ぎが嘘のように布団に横になっている彼は
解熱後の発疹が模様のように顔に背中に足に。
まじまじと全身をみながら、成長を感じる私。

ご飯を食べるときに、次はこれを食べる、とちゃんと決めている彼。
立ち上がり歩き始めると、「どうだ！」と満足げな彼。
ボールを「どうぞ」できるようになった彼。

泣き叫ぶ声の大きさ、バリエーションも増えて
意思を伝えたいという気持ちの大きさが伺える。

ゆえに、
嵐のように全身でうねりを作り、涙の雨をふらして訴えるのは
かなりの不快感があるのだろうな。
突発性発疹よ、強敵だ。

私の両腕は小さな彼を落とさぬように必死。
全力でイヤイヤする彼を、自然現象を眺めるよう視線で見ながら
「七つの子」をループして歌いながら
ただただその現象を受け止める。
だってそれくらいなんだもんできること。

永遠に終わらないんじゃないかと思った時間は
今がベストです、と言わんばかりのタイミングで急に終息し
こうして寝てしまう。

寝てくれたから何かしようと思えど
こういう時間は、本当に何も手につかない。
この子と対峙することだけで精一杯で。

彼が眠ったこの時に、まず何をすべきか優先順位がわからなくなる。

待たせている締め切り間近の仕事か、
上の子たちの小学校の書類書きか、
スケジュール調整の確認連絡か、
YouTubeにあげそこなっている制作の続きか。

いや、ほんと、頭がまわらない。

確かなのは
この、一歳の彼が、今この瞬間だけでも安らかに寝てくれてることが嬉しいってことだけ。それだけ。

私のキャパシティが狭いのか、子の占領範囲が広すぎるのか。

いや、自然現象にキャパも何もないか。ただあるがままに。
Full up the moment.