見出し画像

Coldplay x BTS "My Universe" 日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.015

君は僕の星であり 僕の宇宙だから
今の君の試練も結局は一瞬の事だから
君はいつまでも今みたく
明るく輝いていてくれるだけでいいんだ
僕らはそんな君の背を追って
この長い夜を彩るんだよ

My Universe


君は僕の全て
僕はただ、君の事を一番に想いたいんだ
君は僕の全て そして僕は…


夜には寝転んで君を見上げ
朝が来れば昇る君を見守る
彼らが君の瞳に宿る輝かしい無限の宇宙を捉えられなかった楽園が
そこにはあるんだ

毎晩君のところに飛んでいくよ
夢ということも忘れたまま
僕は笑顔で君に会う
決して終わらないよ 永遠に


君は僕の全て
僕はただ、君の事を一番に想いたいんだ
君は僕の全て
君は僕の心を照らし出してくれるんだ


暗闇は僕にとっては居心地が良かったんだよ
長く伸びた影に紛れて

僕らは一緒にいられないのだと彼らは言った
何故ならば
何故ならば僕が異世界から来ているからだと


君は僕の全て
僕はただ、君の事を一番に想いたいんだ
君は僕の全て
君は僕の心を照らし出してくれるんだ


僕の全て
(君は僕の世界を創る)
君は僕の心を輝かせてくれる
(どうか僕の心を照らし出して)


僕を明るくしてくれるのは
君という愛で彩られた星
僕の宇宙で
君はまた別の世界を作ってくれるんだなぁ


君は僕の星であり 僕の宇宙だから
今の君の試練も結局は一瞬の事だから
君はいつまでも今みたく
明るく輝いていてくれるだけでいいんだ
僕らはそんな君の背を追って
この長い夜を彩るんだよ


君と一緒に飛んでいくよ
君なしでは生きていけない
さあ どうぞ僕の手を取って
僕らは互いの世界を創造し合うんだよ


君は僕の全て
僕はただ、君の事を一番に想いたいんだ
君は僕の全て
君は僕の心を照らし出してくれるんだ


僕の全て(君は僕の全て)
僕の全て(僕はただそうしたいんだ)
僕の全て(君は僕の全て)
僕の全て、そして僕は…


本家の歌詞はこちら
https://m.bugs.co.kr/track/83012418

『My Universe』
作曲・作詞:Guy Berryman, Jonny Buckland, Will Champion, Chris Martin, Max Martin, Bill Rahko, Oscar Holter, RM, SUGA , ​j-hope

*******


今回は、先日リリースされたばかりのColdplayとBTSのコラボ曲 "My Universe" の歌詞を意訳してみました。以下、考察(考察中の和訳は直訳)をしていきたいと思います。

洋楽に触れる機会はJ-WAVEを聴いている時だけと言ってもいいくらいの私でも、このコラボレーションのニュースには胸が躍りました。

あらためてColdplayについて調べてみたら、クリス・マーティン氏と自分の誕生年月日が2か月違いと知りました。
40代半ばのColdplayが20代のバンタンと自ら交流を図りこの1曲を作り上げた。この世代間ギャップに萌えているのは私だけでしょうか。
続々とSNSで公開されている動画や画像(ギターをもらったJINくんの素の笑顔が最高!)にはお互いに尊敬しあっている気持ちがにじみ出ていて、世代を超えて良い関係が築けているんだなぁとあったかい気持ちになります。

曲の発表より一足先に公開された手書き文字の歌詞も、そんな2組のアーティストたちの交流がどれだけ収穫あるものだったのかがビリビリ伝わってくるものでした。カラフルに彩られた文字が宇宙に見立てられたキャンバスに散りばめられていて、筆跡も言語もバラバラだけどそれらみんなでひとつの歌(宇宙)を作り上げている。そんな意図を感じます。


■僕の宇宙=僕の全て

まず、タイトルであり、曲中何度も登場するフレーズ "My Universe" という言い回しについて調べてみました。

直訳すると「私の宇宙」ですが、この「宇宙」には「(この世の)全て」といった意味を込める事があるとのこと。日本語でも、とびきりの存在について「世界一」とか「宇宙一」という枕詞をつける場合がありますが、自分という単位を「宇宙」や「世界」にお置き換える概念がこの "My Universe" にも当てはまるようです。

ちなみに「宇宙」を表す英単語は他にもあって、それぞれ用法が異なる事がJAXAのページなどで解説されています。"Universe" は特に「とにかく存在するあらゆるもの全て」を指す単語とのことなので、"My Universe" は「私の全て」となるのですね。


■境界のない世界

ここで、この曲の成り立ちを詳しく解説して下さっている一読必須の記事を紹介させていただきます。

『BTS(防弾少年団)、コールドプレイとのコラボ曲「My Universe」を本日リリース…国籍&人種などを乗り越えた調和のメッセージ』
https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2177243

この記事の内容を踏まえて、差別や偏見の無い互いを尊重し合える世界への思いを託したこの曲の歌詞を、少しずつ紐解いていきたいと思います。


1.楽園の定義

In the night, I lie and look up at you
(夜、僕は横になって君を見上げる) 
When the morning comes I watch you rise
(朝が来る時 僕は君が昇るのを見守る)
There's a paradise they couldn't capture that bright ∞(infinity) inside your eyes
(彼らが君の瞳の中の明るい無限を捉えられなかった楽園はそこに在る)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

夜に(月や星を)見上げること。
朝に(太陽が)昇るのを見守ること。
これらはごく自然に過ぎてゆく時間の中で我々人間が当たり前のように行ってきた習慣です。
ここで大事なのは、「ごく自然に、当たり前のように見守る」ということ。

infinityという単語自体に「無限の宇宙」という意味もあるとのことで、「bright ∞(infinity) (明るい無限の宇宙)」は太陽や月、星といった天体の事を指していると思われます。

「inside your eyes(君の瞳の中)の太陽や月、星を捉える事」はつまり、「君の事を自然に、当たり前のように見守る事」となります。

この曲に出てくる「君」は、差別や偏見を受けていると感じている人たちです。そして頭サビから登場しているここでの「僕」はこの曲のテーマを届ける側であるColdplay x BTSの視点であると言えます。

偏見も差別もなくお互いを「自然に、当たり前のように見守る」事が出来る人たちが作る世界が「paradise(楽園)」なのだとすると、「they(彼ら)」はその楽園に於いて「君」の事を「自然に、当たり前のように見守る」事が出来なかった人たちとなる。

つまり、この曲に登場する「彼ら」は、偏見や差別をしている側の人間、ということになります。


2.境界線が引かれる瞬間

어둠이 내겐 더 편했었지
(闇が僕にはより気楽だったんだよ)
길어진 그림자 속에서 (Eyes)
(長くなった影の中で)
And they said that we can't be together
(そして彼らはこう言った。僕らは一緒にいる事ができない)
Because 
Because we come from different sides
(なぜならば、僕たちは異なる側から来ているからだと)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

この部分の「僕」は自らの過去の経験を振り返る形で語り始めます。

「僕」は自らの本当の姿を隠すことができる闇の中で皮肉にも安らぎを覚えるようになっていました。「길어진 그림자(長く伸びた影)」は横から射す光で細長く形が歪んだ影ならば、自分の本当の輪郭、本当の姿を悟られる心配がない、ということかと思います。

そして、何らかのきっかけで隠していたものが明るみに出た時、「彼ら」は「僕」との間にはっきりと境界線を引き、共に生きる事は出来ないと突き放したのでした。

自分とは違うから理解できないと突き放す。それもまた「彼ら」自身が自分を守るための術なのだと思えば一理ある行動なのかもしれません。
しかし例えそうだとしても、突き放される側だけが異質だと扱われるのは不当なのです。
「彼ら」もまた、「僕」から見れば違っているのですから。


3.君が僕の世界を作る

My universe (Do do do do) 
(僕の全て)
(You make my world) 
(君は僕の世界を作る)
You make my world light up inside 
(君は僕の世界を内側で明るく照らす)
(Make my world light up inside)
(僕の世界を内側で明るく照らしてよ)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

この「世界を作る」という言い回しを読んで、私は "Trivia 承 : Love" の歌詞を思い出しました。

「愛」を知ることによって作り変わっていく自分に対する喜びや驚き、気付きを謳う "Trivia 承 : Love"。この「愛」はストレートに恋愛感情としてだけでなく、自分という世界の外側にいる誰か(=「君」)に対して抱く共感や愛着としても捉える事ができるのではないでしょうか。

「君」によって価値観や常識を覆す程の影響力を受けた「僕」が新しい視点を持ち、その喜びが「make my world light up inside(僕の世界を内側から明るく照らし出す=心を照らし出す)」。

「違う」ことはイコール「相容れない理由」ではなく、互いに相手を受け入れることによるそれぞれの変化を経て生まれる「新しい世界の入り口」なのだと、そう教えてくれているのではないかと思います。

この「世界を作る」概念は、次に来るホビのパートでも登場します。

나를 밝혀주는 건
(僕を明るくしてくれるものは)
너란 사랑으로 수놓아진 별
(君という愛で彩られた星)
내 우주의 넌
(僕の宇宙の君は)
또 다른 세상을 만들어 주는 걸
(また別の世界を作ってくれるんだなぁ)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

「또 다른 세상을 만들어 주는 걸」の語尾である「~걸」は、独り言の推量(~だなぁ)と訳されます。JINくんの "Moon" の歌詞にも出てきた言い回しなのですが、私はこの語尾が持つニュアンスに彼らの謙虚さと情の深さを感じます。

少し話が逸れますが、ここで「수놓아진(彩られた)」という表現に注目したいと思います。

原型は「수놓다」【動詞】。意味は「刺繍する」ですが、「刺繍を施したように(きれいに)する」→「彩る、散りばめる」という意味が派生していったようです。(参考)
韓国の民芸品には、美しい刺繍が施されたものがたくさんあります。刺繍に特化した博物館まであり、比喩表現になるくらい生活に身近な工芸なのですね。

この「수놓다」の話を踏まえて歌詞の方に戻りますが、

너란 사랑으로 수놓아진 별(君という愛で彩られた星)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

刺繍のように美しく、星のように輝いている。最高に美しい1行じゃないですか?元々天体比喩に弱い私はこの1行で完全に撃ち抜かれました。

相手を尊重し敬愛する心がめいっぱい込められているロマンチックで思慮深いこれらの表現が、この曲の温度感を支えているのだと思います。


4.尊重と共存の「楽園」

SUGAのパート以降は「僕」の視点がより一層アーティスト本人たちのものであることが色濃くなっていきます。

너는 내 별이자 나의 우주니까
(君は僕の星であり、僕の宇宙だから) 
지금 이 시련도 결국엔 잠시니까
(今この試練も結局は一瞬だから)
너는 언제까지나 지금처럼 밝게만 빛나줘
(君はいつまでも今のように明るくだけ光ってくれよ)
우리는 너를 따라 이 긴 밤을 수놓을 거야
(僕たちは君の後に従ってこの長い夜を彩るんだよ)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

ネガティブな反応を受けた辛い記憶も「一瞬の事」だと言えるようになるまでに彼らが費やした時間は、決して短いものではなかったはず。それを思うと言葉の重みがさらに増していきます。

「밝게만 빛나줘(明るくだけ光ってくれ)」の部分は「~만(~だけ)」が入っている事が私は重要だと思っています。
負の意見に惑わされず、自分を大切にすること「だけ」に集中してくれればそれでいいんだよ、というメッセージがこの「~만」には込められているのだと思います。

また「너를 따라(君に従い)」という表現からは相手のことを尊重する気持ちを感じますし、「긴 밤을 수놓을 거야(長い夜を彩るんだよ)」の「~을 거야」は「~するつもりだ」という意志を表す表現になっているので、「僕」は長く続いている「君」の辛い時間を音楽を通して支えていくからね、という内容になっているのではと思います。

そして、相手を「尊重」する気持ちが込められたSUGAパートの後に続いて謳われているのは「共存」です。

너와 함께 날아가
(君と一緒に飛んでいくよ)
When I'm without you I'm crazy 
(君がいないと狂ってしまう)
자 어서 내 손을 잡아
(さあ、どうぞ僕の手を握って)
We are made of each other baby 
(僕たちはお互いに作り合うんだよ)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

ARMYが存在理由なのだと常日頃からオープンにしているバンタンの気持ちが、このパートで存分に表現されています。決して驕ることなく「君」が必要なのだと声を上げる。苦しい時に助けを求めることは間違いじゃないのだと教えてくれているようにも思えます。

最後の行は「We are made of ~」というbe+過去分詞の「受け身」の文に「each other(互いに)」が入るので「作られ合う」=「作り合う」となります。

作るのはもちろん、お互いの「世界」です。
互いを尊重し、ごく自然に、当たり前のように見守り合いながら共存していく世界。

 I , just want to put you first
(僕はただ君を最優先に考えたいんだ)

https://m.bugs.co.kr/track/83012418

サビで繰り返し歌われるこの1行は、互いに世界を創造し合う関係を実現する上で、最も重要な心構えを訴えているのではないでしょうか。

尊重と共存の心で作られた境界のない世界。
私たちひとりひとりの周りに生まれた小さな「楽園」が、いずれ共鳴し繋がり合い、無限の宇宙になって広がる事を望まずにはいられません。



最後まで読んでくださりありがとうございました。


💜