BTS "RUN" 転んでも大丈夫〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.045
RUN
君は俺の 唯一無二の太陽
世界でただ ひとつだけの
君に向かって花開いたけど
しきりに喉が渇いてしまうよ
とっくに手遅れなのさ
君無しで生きてはいけない
枝木が干涸びるとしても
更に懸命に手を伸ばすよ
手を伸ばしてみると
たちまち覚めてしまう 夢
狂ったように走っても また
元の場所に居るだけ
ただ 俺を焚き付けてくれ
そうやってもっと突き放してくれ
これは愛に狂った阿呆の駆けっこ
もっと 走らせて 俺を
もっと 走らせて
両足が傷だらけでも
君の顔さえ見れば
笑っている俺だから
もう一度 走れ 走れ 走れ
俺は止まれるはずがない
また 走れ 走れ 走れ
俺は どうしようもない
どうせこれしか俺は出来ない
君を 愛すことしか出来ない
もう一度 走れ 走れ 走れ
転んでも大丈夫
また 走れ 走れ 走れ
ちょっと傷ついても 大丈夫
手に入れられなくても十分だ
馬鹿みたいな運命さ
何とでも言うがいい
さよならを言わないで
君は俺を悲しませる
愛とは それ即ち偽り
さよならを言わないで
全て終わったこととは言えど
止まれるはずがないんだ
汗なのか 涙なのか
俺はこれ以上見分けがつかない
剥き出しの愛も 吹き荒ぶ嵐も
俺をもっと走らせるだけ
俺の 心臓と共に
もっと 走らせて 俺を
もっと 走らせて
両足が傷だらけでも
君の顔さえ見れば
笑っている俺だから
もう一度 走れ 走れ 走れ
俺は止まれるはずがない
また 走れ 走れ 走れ
俺はどうしようもない
どうせこれしか俺は出来ない
君を 愛すことしか出来ない
もう一度 走れ 走れ 走れ
転んでも大丈夫
また 走れ 走れ 走れ
ちょっと傷ついても 大丈夫
手に入れられなくても十分だ
馬鹿みたいな運命よ
何とでも言うがいい
思い出が枯葉の様に
粉々に壊れていくよ
指先から 足元から
駆けて行く君の背後に
まるで蝶を追うように
夢の中を彷徨うように
君の痕跡を追って行く
道を 教えてくれ
俺を ちょっと止めてくれ
息ができるようにしてくれ
もう一度 走れ 走れ 走れ
俺は止まれるはずがない
また 走れ 走れ 走れ
俺はどうしようもない
どうせこれしか俺は出来ない
君を 愛すことしか出来ない
もう一度 走れ 走れ 走れ
転んでも大丈夫
また 走れ 走れ 走れ
ちょっと傷ついても 大丈夫
手に入れられなくても十分だ
馬鹿みたいな運命よ
何とでも言うがいい
韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/30075277
『RUN』
作曲・作詞:“hitman” Bang , j-hope , Jung Kook , V , SUGA , RM , Pdogg
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今回は、2015年11月にリリースされたミニ・アルバム第4集「花樣年華 pt.2」に収録されたタイトル曲 "RUN" を意訳しました。
ティザー動画で使用されていたのは「花様年華 Young Forever」に収録されている "Ballad Mix" です。
リリース日直前に「2015 BTS LIVE 花様年華 on stage」が開催されたこともあり、TV番組でも、ショーケースでもなく、アリーナ開催の単独コンサートに訪れたARMYたちの前で初めてパフォーマンスされた楽曲となりました。(出典)
1.転んでも大丈夫
2015年11月27・28・29日にソウルで開催された単独コンサート「2015 BTS LIVE 花様年華 on stage」を前に行われた記者会見では、ソウル公演直後の11月30日発売となるアルバム「花樣年華 pt.2」についてもいくつかの質疑応答がなされています。
記事中のナムさんの発言によると、"RUN" はPt.1よりも「前向きに走り出すことに焦点を当てている」というPt.2を象徴するような曲だということです。
この「老若男女問わず誰にでも上手くいかない時がある」という考え方は彼らの音楽に影響を与え続けています。 "RUN" と同じ「走る」ことを題材にした2018年発表の "낙원(Paradise)" においては「休んでも大丈夫」「無闇に走らなくていい」と、一聴しただけでは "RUN" とは真逆のことを言っているように感じるものの、根底にある考え方は同じだと思います。
走り続ければ疲れもするし、転びもすれば、走りたくない、走れない時もある。それでも「大丈夫、そんなこともあるよ」と大きく構える方法もあるんだよ、という気づきを、これらの楽曲は与えてくれるのだと思います。
2.魂を込めたタイトル曲
"RUN" のティザー動画が公開された日のナムさんの投稿には、この楽曲に対する率直な気持ちが綴られています。
この "RUN" では、ラップラインの他にJung KookとVの名前がクレジットされています。タイトル曲としてはそれ以前を振り返ると "No More Dream" にグクの名前がありますが、 "RUN" にはボーカルラインがタイトル曲に大きく関わった曲として特別な思いがある、と、前出の記者会見でナムさんが言及しています。
「2015 BTS LIVE 花様年華 on stage」ソウル公演中のコメントで、ふたりが具体的に制作工程上どのような関わり方をしたのかをナムさんが詳しく解説してくれたようなのですが、残念ながら公式の資料は見つかりませんでした。
※「런 태형이와 정국이 작곡 작사」などで検索すると、該当コメントの動画とその文字起こしが挙がってきます。(おそらく韓国盤ライブDVDに収められている映像なのではないかと思われます)
ナムさんの話を要約すると、グクが作ったメロディーが良かったのでイントロのラップとサビを繋ぐ重要な役割を担うBパートに採用しようとしたが、思いのほかサビが弱く聴こえてしまい断念したところ、テテが作ったメロディーが評価されて採用になり、そこに元々グクが自分のメロディーにつけていた歌詞をのせたら見事にハマって今の形になった、とのこと。
作詞:Jung Kook、作曲:Vの "RUN" Bパートはこちらの箇所です↓
※引用文に付けた歌詞は直訳
2022年6月発売予定の「Proof」のDisk1トラックリストを見る限り、"Butter" までの期間でボーカルラインがタイトル曲のクレジットに名を連ねているのはこの "RUN" と "No More Dream" だけのようです。
デビュー4か月目のグループインタビューには「パン・シヒョクプロデューサーはタイトル曲以外はアルバムに関与しない。(中略)タイトル曲はパン・シヒョクプロデューサーが調整してくれる」とあり、またパンPDから「〈私の耳が一般の人々の耳のデッドラインだ」と言われた」ともあるので、 "RUN" のBパートはパンPDのお耳にもかなったお墨付きのパートであると言えるでしょう。
3.「蝶」が導くもの
ここからはこの "RUN" を、 "I Need U" そして "Butterfly" と繋がってきた〈花様年華〉シリーズMV作品群のひとつと捉えて歌詞の世界を整理してみます。
自分の元から離れていこうとしている「君」とどうしても決別できずに怖れや絶望を抱え、なぜ、どうしてと自問( "I Need U")しながら「どうせこれしか俺は出来ない/君を愛すことしか出来ない」と突き進む("RUN")一途な主人公はフィジカルな強さと精神的な脆さを併せ持ち、現実と夢幻の狭間で悩みます("Butterfly")。
そして「蝶」は "Butterfly" だけではなく、 "RUN" の歌詞にも現れます。
振付師のソン・ソンドゥク先生がこの時期に受けたインタビューで、"RUN" の振りは "I Need U" の延長線上にあるとし、「蝶」をモチーフにした部分を最も重要視していると明かしています。
これら3曲はその世界観を共有し、互いの風景を補完し合っているようです。
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頑なに走り続ける強い姿を示しながらも、脆さに対する許容を含めたこれらの楽曲は、その葛藤こそが人を「人生で最も美しい瞬間」に導くのだ、と、言っているのではないかという気がします。
最後までお付き合い下さりありがとうございました。
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