BTS "I NEED U" ただ訳もなく〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.043
I NEED U
散る 散る 散る 全て散るね
落ちる 落ちる 落ちる 全て落ちるね
君のせいで 俺は
こんなにも駄目になる
やめよう
もう 君にその気は無いさ
できる訳ない 何だってんだ
どうか言い訳じみたことはよしてくれ
こんな仕打ちはあり得ない
君の言葉は 全てが目隠し
真実を覆って俺を引き裂き、
俺を突き刺し、俺は狂うよ
全部嫌だ 一切合切連れて行け
俺は 君が ただ憎い
それでも
君は俺の全てで 俺そのもので
なくてはならなくて
どうかちょっと消えてくれ ああもう!
ごめん(大嫌いだ)
愛してる(大嫌いだ)
許して
君のことが必要なんだ
なぜ自分勝手に愛して
一方的に別れを決めるんだ?
君のことが必要なんだ
なぜ傷付くと知りながら
ここまで俺は君を求めるのか?
君のことが必要なんだ
君は美しいよ
そして 残酷すぎる
俺には君が必要だ
君が 必要なんだ
君のことが必要なんだ
めぐるよ めぐる
俺はなぜ同じ過ちを繰り返すのか?
堕ちるよ 堕ちる
ここまで来ると馬鹿だよな?
何をやっても仕方がなくて、
確かに俺の心、気持ち、想いなのに
なんで言うことを聞かないんだよ
また 独り言だね
君は何も言わない
嗚呼、どうか頼む
俺がうまくやるよ
空はより鮮やかに青く…
空は青く、陽差しが輝き
視界が開けていくようだ
なぜ 俺は君を選んだのか?
なぜ よりによって君なのか?
なぜ 君を離れられないのだろうか?
君のことが必要なんだ
なぜ自分勝手に愛して
一方的に別れを決めるんだ?
君のことが必要なんだ
なぜ傷付くと知りながら
ここまで俺は君を求めるのか?
君のことが必要なんだ
君は美しいよ
そして 残酷すぎる
俺には君が必要だ
君が 必要なんだ
君のことが必要なんだ
いっその事別れようと言ってくれ
気持ちがたがえたと言ってくれよ
そんな勇気 俺にはないよ
俺に最後の贈り物をしてくれ
もう君の元に戻れないように
君のことが必要なんだ
なぜ自分勝手に愛して
一方的に別れを決めるんだ?
君のことが必要なんだ
なぜ、傷付くと知りながら
ここまで俺は君を求めるのか?
君のことが必要なんだ
君は美しいよ
そして 残酷すぎる
俺には君が必要だ
君が 必要なんだ
君のことが必要なんだ
韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/4315824
『I NEED U』
作曲・作詞:“hitman” Bang, Brother Su, Pdogg, RM, j-hope , SUGA
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今回は、2015年4月にリリースされたミニ・アルバム第3集「화양연화(花様年華) Pt.1」に収録されているタイトル曲 "I NEED U" を意訳・考察していきます。
1.デビュー後初の1位獲得
2015年5月5日に放送されたSBS MTV「THE SHOW」にて、防弾少年団は "I NEED U" で2013年6月のデビュー以来初めて音楽番組でチャート1位を獲得し、この日を皮切りに「M COUNTDOWN」「Music Bank」でも同楽曲で1位を手にします。
初の1位獲得の喜びを伝える「THE SHOW」出演後の公式ツイートがこちら↓
2.花様年華のひとひら
楽曲が収録されているミニ・アルバム「花様年華 Pt.1」は、のちに発表される「花様年華 Pt.2」「花様年華 Young Forever」と共にバンタンの歴史に〈花様年華〉シリーズとして鮮やかに刻まれることになります。
〈花様年華〉を活動のテーマに掲げるにあたり、ナムさんがその言葉の意味についてこう明らかにしています。
〈花様年華〉は収録されている楽曲音源だけでなく、ミュージックビデオやSNSなどを使って体系的に示された〈物語〉であり、散りばめられた欠片を受け手が自らの意志で集めることで成り立つように作られています。そのどれもが物語の入り口と成り得ることができ、拾った欠片を頼りに進むうちにいつしか物語に引き込まれてしまう。1冊の小説や1本の映画からは決して得ることのできない高揚感が、この〈花様年華〉にはあるように思います。
「受け手が自らの意志で集めることで成り立つ」と書きましたが、とはいえこの物語には数ある考察記事が示して下さっている定説(ストーリー)が存在しています。
この "I NEED U" のMV(Original ver.)はその定説によると、MVを時系列に沿って観ていく場合、その最初のひとつであるとのことです。そしてその後、화양연화 on stage : prologue(=Butterfly)、RUN、EPILOGUE : Young Forever のMVへと続いていきます。
"EPILOGUE : Young Forever" を除く3曲については、その歌詞の世界においても繋がりを感じさせるフレーズやモチーフが登場しており、〈花様年華=青春〉を生きるひとりの少年が、愛を疑い、愛を恐れ、愛を信じようとする姿が繊細に描かれています。
3.砕け散る心
"I NEED U" の歌詞において主人公は、失われようとしている「君」との繋がりについて深く傷つき悩み、どうにもならない現状に憤っていることがわかります。
イントロの「fall」「흩어지네(散るね)」「떨어지네(落ちるね)」はどれも、上から下へと主体が落下する際の様子を伝える言葉です。「Fall in love」「恋に落ちる」という表現があるので、この部分もそのようなイメージを伝えようとしているのかと思っていたのですが、調べてみると韓国語で「恋に落ちる」や「惚れる」は「사랑에 빠지다(恋/愛に溺れる)」と表現するようです。「빠지다」だけだと「ハマる・夢中になる」という意味になるそうなので、なるほどといった感じです。
冒頭のFallに話を戻します。
歌詞全体を読んで思うに、このイントロの意図としては〈主人公が愛に溺れるさま〉を表現しようとしているのは間違いないのですが、ここで「빠지다」のような表現にせず「흩어지다」「떨어지다」のように散ったり落ちたりする物理的な表現を選ぶことで、実際に主人公の心の様子がどんな状態なのかをより直接的に表現しようとしているのだと思います。
"Butterfly" の歌詞には「俺の心は今も尚 君の頭上で砕けて微塵になり」とあり、また "RUN" には「思い出が枯葉の様に/粉々に壊れていくよ/指先から 足元から」といった表現があります。これらを踏まえて "I NEED U" のイントロを聴くと、より一層、その景色が浮かび上がってくるのではないでしょうか。
4.理由なんかどうでもいい
この "I NEED U" は様々な「理由」について、その存在を確かめようとしても上手くいかない主人公の葛藤で溢れています。
君に惹かれる理由、君が愛してくれた理由、君が去っていく理由。何ひとつわからない。その焦りと苛立ちは、まだ自分のことすらコントロールできていない彼の現在地を浮き彫りにします。
たった一つだけの確かな答えは「君が必要だ」ということ。
理由もわからずただその答えだけを握りしめ落下し続ける彼の様子は、傍から見ると哀れでもあり、情けないとまで思う人もいるかもしれません。
ただ、私はこの彼の姿には憧れのようなものを感じます。
ひとは生きていると、想いのままに身体を、心を動かすということが難しいと感じる時が皆あると思います。それは決して年齢に因るものではなく、その時その時の環境や性格に因るものだと思うのですが、物事の前後を考えてしまいがちな私はどちらかというと、往々にして石橋を選びすぎた上に叩いて割ってしまうタイプです。
なので "I NEED U" のような「とにかく○○なんだ」から動き出す物語に出会うと、忘れていた「何か」も思い出しますし、もっていない「何か」についてもあらためて考えさせられます。
「人生で最も美しい瞬間」は、いわゆる成功や達成、喜びの瞬間だけではなく、得も言われぬ強い衝動が連れてくる葛藤が沸騰する瞬間のことでもあるのではないかと、繰り返される「I need you girl」を聴きながら思ったのでした。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
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