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BTS "Save ME"から"Inner Child"へ繋がるLove Myself【後編】〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.005

大丈夫だって
今日の僕が大丈夫だから
昨日の君の事も今なら全部わかるよ

Inner Child

あの時
僕たちは本当に苦しくてたまらなかったね
余りに遠いあの空の星を見上げながら
君は天の川の存在を信じられなくて
だけど、僕は見たんだもの
銀色に煌めく銀河を

痛かっただろ?すごく大変だったよね?
果てしない光を追いかけて
僕は走ったのさ

ひりつくあの夏の空気
酷く冷たかった 色褪せた街の喧騒
深呼吸して 君の扉を叩いてよ
僕らは変わって行くんだ


もうそろそろ 僕ら
思い切り笑えたらいいよね
大丈夫だって
今日の僕が大丈夫だから
昨日の君の事も今なら全部わかるよ
芽吹いてた薔薇の無数の棘を
僕が抱きしめてあげたいんだ

微笑む小さな子 ひたすら輝く笑顔の子
そんな君を見ると思わず僕にも笑みがこぼれる

ひりつくあの夏の空気
酷く冷たかった 色褪せた街の喧騒
深呼吸して 僕の扉を叩いてよ
僕らは変わって行くんだ


今夜
君に僕の手を合わせたら
その手を握り返してくれるかい?
僕が君になるから
君は僕の天の川を見ていればいいよ
あの星たちを目印にすればいいよ
僕の世界を君にあげるよ
君の瞳を照らす光たちは今の僕だから

君は僕で、僕は君だ
僕らは変わるんだよ
僕らは変わって行くんだ


韓国語歌詞はこちら↓
https://m.bugs.co.kr/track/5863192

『Inner Child』
作曲・作詞:RM , Matt Thomson , Max Lynedoch Graham , Ryan Lawrie , Ellis Miah , Adien Lewis , Pdogg , V , James F. Reynolds


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ひとつ前の記事で"Save ME"を和訳し、歌詞の登場人物である「僕」と「君」について掘り下げてみました。そこで気がついた"Save ME"と「Map Of the Soul : 7」収録曲"Inner Child"(Vソロ曲)との深い繋がりを見て行こうと思います。

※この考察はナムさんのビハインド動画を観る前にに妄想を爆発させたものです。予めご了承ください。

1."Save ME" 後日譚

"Inner Child"の世界は過去を振り返る主人公「僕」の語りから始まります。

「참 많이 힘들었(다)(本当にとても苦しかった)」「그때(あの時)」を共に乗り越え、同じ記憶を共有する仲間に語りかけています。

とても温かい雰囲気です。空気をたくさん含んだテテの角のまるい柔らかい声が染みますね。

私はこの「あの時」こそが"Save ME"で書かれていた時代なのではないかと思うのです。

"Inner Child"の「僕」は"Save ME"の「僕」のその後の姿であり、生き辛さを乗り越え、精神的に落ち着いて過去を振り返る余裕ができたのでしょう。

そして、その傍らにはちゃんと「君」がいます。

2.Love Myself

狂気の輝きだった「月」は希望の「星」に姿を変えました。
今を生きる「僕」は無数の星々(希望)であふれる「天の川」の存在を信じられなかった過去の自分(「君」)に、銀色に煌めく銀河は確かに存在するのだと伝えたくて奔走します。

「君」が置かれている厳しい環境を認知し、辛かったね、と理解し歩み寄ろうとする「僕」。

これは、幼かった当時はまだ自覚できなかった自分を取り巻く環境を、大人になってから客観的に捉える行為です。

家庭という狭い環境が与える影響は極めて局地的な常識を子に植え付けます。
成長し家庭外の人と出会い、比べる事で、自分の中の普通が全然普通じゃなかったと気付く瞬間は誰しもあるかと思います。

これは様々な形で繰り返される虐待についても言える事で、ネグレクトなどは特にそういう理由で問題として明るみに出ないまま放置され、その子の人生を左右する影響を与える事も少なくありません。

あらためて幼い自分の姿を振り返った外の世界を知った後の「僕」は、当時の自分が余りに厳しい環境に置かれていた(白熱の太陽に容赦なく焼かれ、目に映る景色は愉しみひとつ無く色を失い、ただ雑音だけが響くだけだった)事に気づき哀れみ、そんな「君」に、優しく寄り添い気遣う言葉を掛けてあげます。

「痛かったよね」「大変だったよね」

自分が愛に恵まれていなかったのだと気付かないまま大人になって、その事実を知った時のショックの大きさは、当人にしかわかりません。

びっしり薔薇の棘が生えたような過去すらも抱きしめてあげられる強さを手に入れた「僕」は、今なら全部わかってあげられる、と、過去の自分に手を差し伸べます。

どんな自分でも愛してあげる事…Love Myselfですね。

そして、思い切って「僕」(=未来)に繋がる扉を叩く様に「君」(=過去)にうながすのです。

3.変わってゆく「僕ら」

そして「僕」は「君」と手を携え、共に進み始めようとします。
深い闇の中にある「君」をまばゆい光の元に連れ出す為、「僕」は「君」そのものになる事を宣言し、前に進むための目印を教えます。

それが「僕の天の川」です。

「너의 눈을 비춘 빛들은 지금의 나니까 (君の目を照らしている光たちは今の僕だから)」

今を生きる「僕」は「天の川(希望)」の存在を知っています。そんな「今の僕」自身が「君」の希望なのだ、と、力強く言ってのけるのです。

"Save ME"では闇の中で光を求めて助けてと叫ぶ事しか出来なかった「僕」が、ここまで変わりました。
そして更に変わろうとしています。
「君」と共に、「僕ら」で変わって行こうとしているのです…。

ここで、2018年国連総会でのRMのスピーチを。

日本語で自分を愛する、と聞くと、ナルシスト?みたいな感想になりがちかと思います。難しいですね。全然そうじゃないのに。自己肯定、という単語もなんだか堅苦しくて、的外れな感じがします。

このスピーチのナムさんの声を聴いていると自然と涙が出てきます。選び取られた言葉の全てに愛を感じます。自分を愛するという事の意味がすっと心に入ってきます。

もっと早く君たちに出会っていたら、もしかしたら私ももう少し早い段階で救われていたかもしれない。そう思います。
でもきっと今だからこそ、なのでしょうね。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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