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BTS "길(Road)" Art is life 〜日本語選びにこだわる和訳歌詞 no.025

芸術は長く、人生は短いと言う人もいる
でも今の俺にとっては芸術が人生だ
人生はスポーツ ただ挑むのみ

길(Road)


どうだ?わかってるか?
時間ってのはあっという間に流れるもの
よく聴いてろよ


始まりはエミネム、ガリオン、エピックハイ
真似する事を経て
俺のラップをざくりと刻みつけてみれば
最早いつの間にか俺が弘大
あの時俺の歌詞は全て
ことごとく*** 説教臭い

でも俺たちは未来を知らない
休む事なく夢を見ていたのか
俺を縛ってしまった現実の罠
嗚呼 この青春の罠
熱い胸の内は
冷めた頭で見捨ててしまった 畜生

そんな風に
自分の選択が正しいと盲信していた
その渦中で
天使なのか悪魔なのか
わからない奴が言うよ
ラップを真面目にやってみるつもりはないか?
やるのか?やらないのか?

ためらう時間は無く、
また、馬鹿にはなりたくなかった俺は
ここに来て三年が過ぎて行った

芸術は長く、人生は短いと言う人もいる
でも今の俺にとっては芸術が人生だ
人生はスポーツ ただ挑むのみ


俺は変わっただろうか
別の道を選んだならば
立ち止まり振り返ってみたならば
俺は何を見る事になるだろうか
この道の終わりで
君が待っているその場所で


数多の時間が流れ 2013年
練習生としていたよな三年間
いつの間にか高校生から
デカい子供になったような俺の姿
欲深さから白髪が増えて
あのたくさんいた友達は
ひとりずつ離れていって
家族なしで俺は淋しくも
ソウルで迎える三度目の春

デビューが目前になれば
心配なくなるだろうと思っていた
変わることのない現在で
俺は目を閉じた
現実は違ったし
周りに止められても
光も見えないトンネルを
俺はひとりで歩いた

ひとりだろうと思っていたのに
気がついてみれば七人
裸足ではなく防弾という靴を履いて
これからも歩み出て行かなくてはならない
もう一歩、新たにまた
ソウルで迎える四度目の春


俺は変わっただろうか
別の道を選んだならば
立ち止まり振り返ってみたならば
俺は何を見る事になるだろうか
この道の終わりで
君が待っているその場所で


2010年の年
俺の歩みはソウルに向かうね
ただダンスが好きで始めた俺が
今では舞台の上に立つよ
その間に多くの苦痛と傷を克ち抜いて
自らを創り上げ、
折れそうな時にはしなってしまおうという
持論を活かして三年を走り
俺の胸の内にある星たちを明るくするよ
今俺を新しく照らしてみるよ
世界という白紙に防弾の道を刻んでみるよ
一層明かりが灯った俺の未来を歩いて行く
思わず笑みを浮かべてしまう俺 ハハ


俺は変わっただろうか
別の道を選んだならば
立ち止まり振り返ってみたならば
俺は何を見る事になるだろうか
この道の終わりで
君が待っているその場所で

俺は変わっただろうか
別の道を選んだならば
立ち止まり振り返ってみたならば
俺は何を見る事になるだろうか
この道の終わりで
君が待っているその場所で


『길(Road)』
作曲・作詞:SUGA (슈가), Pdogg, “hitman” Bang, ​j-hope & RM


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今回は、2013年発表のBTS(防弾少年団)1stシングルアルバム「2 COOL 4 SKOOL」に隠しトラックとして収録されている "길(Road)" を意訳してみました。


1.韓国語歌詞の聴き取り

隠しトラックとのことで、公式の歌詞は未発表になります。ネット上にあるユーザー投稿型の歌詞表示サービスにある歌詞を参考に低速再生での聴き取りを行いました。聴き取りと歌詞表示サービスの内容に相違があった部分は以下の通りです。

시작은 에미넴 가리온 에픽하이
달라 하는 걸 넘어 내 랩을 쩍 새기다 ※1
보니까 벌써 어느새 내가 홍대
그때 내 가산 온통 다 *** 꼰대

(中略)

그렇게 내 선택이 옳다며 맹신하던 그 와중에
천사인지 악마인지 모르는 그것이 말을 해
랩 제대로 해 불 생각 없냐고? Yes or no?
망설일 시간은 없다고 또 바보는 되기 싫었던 난 ※2
이곳에 왔고 3년이 지나갔어 

(中略)

이젠 날 새롭게 비춰봐
세상이란 백지에 방탄도 새겨봐
더 볼 켜진 내 미래 걸어가
웃음을 지어 먹는 나 (Ha ha) ※3

(以下略)

※1
既存歌詞には「내 랩을 적고 새기다」とありますが「고」の発音が聞き取れませんでしたので、動詞「적다(記録する、書き記す)」ではなく「쩍(ものが二つに割れた様、ぽっかり、ぱっくり、ざっくり)」で訳すことにしました。

※2
既存歌詞に「더 바보는 되기 싫었던 난(これ以上馬鹿にはなりたくなかった俺は)」とありますが、直前の文節が「-고(~して[並列])」で終わっていることから「또 바보는 되기 싫었던 난(また、馬鹿にはなりたくなかった俺は)」とすることにしました。既存の「더(これ以上)」だと、ナムさんが既に自分を卑下している事が前提になってしまいますので、それは違うのでは?と思った次第です。

※3
既存歌詞「웃음을 지어 먼 훗날」は直訳すると「笑みを浮かべ遠い後日」となります。意訳するにも文法的にちょっとつじつまが合いません。もし「今努力すれば将来は笑えるだろう」という希望的観測の元に「後日(未来)で笑みを浮かべる」という意味の文章にするならば、「웃음을 지을 먼 훗날(笑みをうかべる遠い後日)」のようになるのではないかと思うのですが…。
低速で聞き取ってみましたが、ここは「-아/어 먹다(~してしまう)」というフレーズを含んだ「웃음을 지어 먹는 나(笑みを浮かべてしまう俺)」という文なのではないかと思いました。明るい未来を思い浮かべて思わず笑ってしまう、という流れでの最後の「Ha ha」を聴くと、しっくりくるのではないかと思います。


2.芸術は長く人生は短し

”Art is long, life is short”

この言葉は、古代ギリシアの医者ヒポクラテスが残したとされる言葉「Ars longa, vita brevis」に由来しています。

ここでナムさんは「しかし今俺にとって、芸術は人生だ」と切り返しています。「道」という楽曲テーマを踏まえてその心を察するに、アーティスト活動をしている自分の人生は、人生自体が(芸術のように)今後も長く続いていくもの、続けようとしているものだ。と言わんとしているのではないでしょうか。

そして「人生はスポーツだ」と続きますが、「Just do it」という某有名スポーツ用品メーカーのキャッチコピーが添えられています。調べてみると創業者が「自分の人生もスポーツのようでありたい」と言い残しているそうです。「スポーツのような人生」というと…さしずめ「掛け値なしで己との戦いを全うする」といったところでしょうか。

ただとにかく挑戦するのみ。そんな人生を長く続けていく。
そういった志がこの一節には込められているのではないかと思います。


3.「過程」を刻む

"Born Singer" がバンタンの「始まり・スタート」を歌った曲なら、この "길" は「過程・道のり」を歌っている曲なのだと思います。それぞれが見てきたこと、感じたものを並べて「これまで歩いてきた」道がどんな道だったのかを示しています。

そしてもし「別の道を選んだなら」今の自分に変化があっただろうか?と人生の岐路について思いを馳せてもいます。誰しも一度は考える「もしも」の世界。きっと何か一つでも掛け違えがあったら今の彼らは存在し得ないのだろうと思うと、これまでの全ての選択に感謝を捧げて拝みたくなります…今歩いている「道」が、どれだけの数の決断の上にあるのかを思うとちょっと胸が苦しくもあります。

さらには「道の終わり」にも言及しています。

道の終わりで待っている「君」は誰なのか?
それは変わらず末永く支持してくれるARMYさんたちのことであるかもしれないし、思い描いた理想を実現させた彼ら自身の姿であるのかもしれません。

絶え間なく歩き続けた道が終わるその場所でふと、振り返った時、彼らの目には一体何が映るのか。我々が現在見ている彼らの姿はその一端であることを考えると、同じ時代に生きていることがどれだけすごいことかを実感します。

道が今後どんな景色と共に続いていくのかを想像して楽しみ、それを実際に見守っていくことを楽しみ、そして、その道のりを振り返ることまでもを楽しんでいけるように、ささやかな応援の花を絶やさず送っていけたらなと思います。


最後まで読んで下さりありがとうございました。


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