慢性関節リウマチと整体とみぞおちへの施術

 4年ほど前から、慢性関節リウマチ(以下、リウマチと略)の持病があるお客さん(=Pさん)に施術させてもらっています。

 リウマチは炎症を伴う疾患なので、施術してがんがん血流を良くしても大丈夫か? 体温を上げることが炎症発作の誘発にならないか? 最初のしばらくはおっかなびっくり整体していました。その辺の加減が、ある程度わかるようになってからの3年半ほどは一進一退、三進二退、二進一退くらいで推移していて、まあ、めちゃくちゃ悪くなることはなかったけれども「もうリウマチの心配は要りませんね、すぱっと改善しましたね!」とは言えない状態が続いていました。
 それがこのところ、半年ばかりは実に好調に過ごされていて、そろそろ卒業か?の、着陸態勢に入れたような感じです。本当に、長らくお付き合いくださいました。

 リウマチは、というかおそらく自己免疫疾患のいくらかは、〈ヒューズ〉のような役割を果たしているのでないか?というのが私の仮説です。電気のあの、ヒューズです。電気をいっぺんに使いすぎたらヒューズが切れるように、身体を過酷に使いすぎたらストップをかける、そんな役割です。
 そう考えるに至ったのはもう20年くらい前、この仕事を初めて間もない頃、私が〈身体修整法〉の技法に慣れ始めた頃に出会ったお客さん(=Qさん)の存在でした。

 Qさんも、リウマチの持病があるかたでした。当時はまだ決定的に私の腕が足らず、それを承知の上で数年ほど来院くださって、〈卒業〉ではなく〈中断〉という形でお別れしました。このQさんが、子どもの頃に複数回にわたって階段から落ちた経験がおありで、頭・首の状態がとても良くなかったのです。そして、にもかかわらずQさんご自身に身体がしんどい自覚はなく(子どもの頃に大ケガをすると、しんどい自覚はないままになることが多い)、とても活発にされていて、そのさなかの発病だったと聞きました。

 リウマチは、症状は実に過酷・強烈ですが、一般的には致命的な病気でないとされます。そして免疫システムの全体がおかしくなっているかというとそうではなく、限られた部分だけがおかしくなって、そのおかしさが維持される。だからこれは、意図して身体が〈作っている〉——〈身体がうっかり管理をしくじってできた病〉と考えるより、〈発作的な症状によって、意図的かつ一時的に活動を止めさせている・安静を強いている=ヒューズを飛ばすことで電気系統の全体を守っている〉と考えるほうがしっくりくるように思えたのです。
 そしてもしそうであるなら、ヒューズを飛ばさずに済む状態=使える電力量が増えた状態=身体が本来の機能を取り戻した状態へと改善できれば、発作は抑えられるのでないか、私はそこに期待するようになりました。
 Qさんにもその考えは伝え、試行錯誤を続けましたが、当時の私はあまりに力不足でした。

 そしてQさんから10数年後、いまから4年前にお引き受けしたPさんも、幼少期に大きなケガをしておられました。Qさん同様、そのケガを重要とは考えておらず、またそのしんどさの自覚もなく、リウマチ発症前は活発に活動されているかたでした。
 Pさんへの施術は、その幼少期のケガの痕を立て直すことを主眼に置いて、あちこち全身の状態も整えていく作業でした。それが3年半の一進一退期で、「あと、もうひと声だと思うんだけどな……」たぶん最後の一歩、を攻めあぐねていた半年前に、ありがたくも、みぞおちへの施術ができるようになりました(というか、Pさんその他のお客さんを前にしての試行錯誤の中でできるようになったので、お客さん方の必要が発明の母だった、というのが正確です)。ですからPさんについては、最後の〈ひと声〉になったのがみぞおちへの施術だったのだろうと思います。間に合って、本当に良かった。

 で、すごいと思うのは、この半年間は確実に、実はそれ以前だってずいぶんな期間、発作的な症状は出ずに済んでいたのに、リウマチの診断基準の一つであるリウマトイド因子(RF)の数値は下がっていないことです。つまり自己抗体自体は、残っている。でも、騒がず、おとなしくしている。
 このまま数年が経過すれば、自己抗体も警戒を忘れてRF値も下がるのか、あるいは保険として意外にしぶとく憶え続けるのか。それはまだ私にはわかりません。ただ、このまま発作は出させないまま、Pさんの活動範囲・活動強度をじわじわ上げていけたら良いのだがな……と、そこを狙える段階にはなりました。まずはそれが嬉しい。

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