反り腰を弱めること

 長く整体の仕事をしていると、〈この状態・この症状には、この施術をすれば改善できる〉みたいな、鉄板の技法・特効薬的施術方法が定まることがあります。私の場合、最初に定まったのは(追突事故の後遺症を始めとした)ムチウチへの施術かなと思いますが、最近は、腰に原因があって主に下肢に症状が出るタイプの〈病変〉――お客さんから聞く〈診断名*〉でいうと脊柱管狭窄症、股関節・背骨の変形性関節症、腰の椎間板ヘルニアなどへの施術についても一定のパターンが見えてきた手応えがあります。

*整体屋がお客さんから聞く〈診断名〉については、MRIで確定診断の付いたものからお客さんの自己申告(「ネットで調べたらたぶんコレっぽい」)まで、広い幅があります。なんとなく、あんな感じの症状のことかな、とイメージくだされば嬉しいです。


 そのパターンというのは〈反り腰を弱める〉で、大事なコツは、ちょっとした筋トレを組み合わせてもらうことです。というか多分、整体だけで改善するのは実質ムリだ、でも筋トレを組み合わせれば意外にすんなり改善できるぞ、と気付いたことが、私には重要だったように思います。
 筋トレといっても難しい・ハードなものではありません。施術で改善した筋肉状態に合わせて動き方を変えてもらうためのきっかけ作りみたいなものです。要は、〈この辺りの筋肉の修理は済んだから、ちょっと使ってみて?〉の、お試しの動きです。

 そしてここで大事なのは〈筋トレの開始時期を見極める〉ことと〈仕方をちゃんと説明する〉ことです。施術が十分に進んでいないうちに始めてもらうと無意味、場合によっては有害でさえあるし、正しく力を掛けないと、これまた無意味/有害になりえます。
 足が痛い・ちょっとの時間も歩けないというのは不自由しますから、「自分なりに体操をしています」「鍛えています」と言われるお客さんは多い。でもどんな体操をしているのか教えてもらうと、私的には、うーん……それはちょっと、みたいな体操をされている場合が少なくない。でも良かれと思って一生懸命しておられるものを私風情がいきなり否定するのもどうか……以前の私はそこに困っていました。私的には有害っぽく思える体操を、整体屋として係わりながら、このまま続けてもらっていて良いのか……? でも近頃は、まあ、どっちでも良いかと、軽く考えられるようになりました。そもそも無茶なことさえしなければ体操で身体を傷めることはそれほど無いし(むしろ危ないのはストレッチ)、施術がうまくいって着実に状態が変わっているならば、体操が身体に与える影響も変化するだろう、と。だからまあ、「ほどほどにねー」とだけ言っておけば良いかな、と思えるようになりました。これは、楽です。

 ともかくいまの私の仕方としては、最初の数回はじっくり施術に専念して、状態の改善が十分に確認できたら筋トレの仕方を説明する。そして実際にその場で何度か動いてもらってお客さんが正しい仕方を実感されたら、ときどき家でしてもらう。そうすると次回の来院時には、残された問題点が明確になっていますから、私は作業の続きをする。ここまでで4~5回の施術、期間にして1~2ヵ月を想定してもらい、焦らないようお願いする。施術する私も焦らないよう心掛ける。
 筋肉の状態はこの頃までにいろいろ変わっているはずですが、恐ろしいのは、ご本人の痛みの実感と筋肉の状態が必ずしも一致しない場合があることです。痛みの理由はいろいろですから、整体屋から見て筋肉は十分良くなっているように思えても、筋肉じゃない部分に由来する痛みは変わらず継続しているかもしれません。その場合は、そのかたの痛みに対して整体屋にできることは無いかもしれず、別の手立てを探してもらう必要があります。

 ムチウチの後遺症は1~2回の施術でガラッと改善することが多く、スピーディです。だからお客さんにも私にも、結果のありようがわかりやすい。一方の反り腰系問題は、施術と筋トレが十分うまくいっている場合であっても、筋肉のはたらきが充実してくるまでには少々時間が掛かります。当人の年齢や日常の活動量(=天然にして最大の筋トレ!)によって個人差も大きい。
 だからこそ、時間は掛かっているけれど良くなっている? 変化している?を常に気にしながら、作業を進めなきゃなりません。もちろん、うまくいくと、すこぶる愉しい。

(2023年7月3日ブログで公開)

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