メルカリからストックオプション施策を考えてみる

目次

1.  ストック・オプションの概要
2. メルカリのストック・オプションの概要

1.ストック・オプションの概要

ストック・オプション(以下SO)とは、役員・従業員等に対して長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして付与する新株予約権を言います。一般的には、最大で発行済み株式総数10%前後の割合で付与されるのが慣習になってます。希薄化効果による他の株主の議決権比率低下を限定的にするためです。

なお、SOは平成9年の改正商法より導入が始まっております。

平成9年5月16日、ストックオプション制度を導入した改正商法が成立

当初の導入では10%限度となっていることから当該条文の考えが継続されているのかもしれません。なお、現在は理論上上限はありません。

SOは役員・従業員に対して長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして付与されることから、経営の方向性と個人のインセンティブの同一化を図るにことより、会社の価値を長期的な視点で一緒に向上されることを目的として付与します。なお、SOの効果が大きく発揮するのは、株式売却益であることからスタートアップなどで主に利用され、成功報酬のような効果もあります。

使い方は以下の記事だと分かりやすいかなと思います。
https://keyplayers.jp/archives/5397


SOは税制適格と税制非適格があります。

税制非適格

SO行使時:SO行使時の時価−SO行使価格=給与所得
株式売却時:売却価格−SO行使時の時価=譲渡所得

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税制適格

株式売却時:売却価格−SO行使価格=譲渡所得

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ポイント:SO行使時の課税が繰り延べられ、税制非適格上給与所得として課税される金額が譲渡所得として合算されて課税される。

譲渡所得の場合、税制上有利であるため、税制適格になるように設計します。(給与所得であれば総合課税になりますが、譲渡所得であれば申告分離になり、超過累進税率の影響を受けないため一般的に有利になります。)

細かい条件はここでは述べないので是非顧問税理士などに相談してください。

・SOは適切な給与を払えないことによる代替的な対応または将来の企業価値向上のためのインセンティブのために利用される
・SOには税制適格と非適格がある。


2. メルカリのストック・オプションの概要

最近メルカリが上場しましたが、メルカリのSO付与率は結構大きいなと思いました。

【事業等のリスク】

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なのでSO付与の推移を表にまとめてみました。

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2018年3月13日に第三者割当てを行っており、それを加味すると事業等の記載と一致したのでおそらく合っていると思います。

SO概要でもお話しした通り、SOは慣習として10%程度を付与するものですが、メルカリは10%を上回る17.3%を従業員等に付与しております。特に2017年で約6ポイント増加してます。

すでに10%超SOを発行しているにも関わらずこの増加は結構すごいなと正直思いました。

SOの利用の仕方は様々あると思いますが、その中で満足できる給料を出せないスタートアップが給料の代わりに付与する、または、企業価値向上に資する行動を促すことを目的としています。その目的に対し、「なぜSOは一般的に10%なの?もっと多く付与している会社もあるが、それとの差はなんなの?」という疑問を友人より提示され、確かに!と思いました。

メルカリでSOの付与率が、10%を超えてきた2015年6月直近の第三者割当ての時価総額を計算してみると2014年9月のC種類株式による増資で、200億円を超えてました。ちなみに2016年3月にはD種類株式による増資で1,000億円超えてます。時価総額をきちんとあげることで付与割合の話し合いができるのかなと思いました。また、キーマンの採用も一つあると思います。メルカリでは相当数のキーマンを採用しています。青柳さんの採用時に発行したSOがまさしくそれかなと思いました。採用に対するロイヤリティとして付与していると思われるので、自然とこれだけの割合になってしまっているのかなと思われます。経営陣は相当な方々ですからね。

結論として10%くらいかそれ以上かというところは、経営陣等が役員・従業員に付与したいと本気で思って協議をしたか、というところに集約されるのかなと思います。また、その希薄化があるとしても株主に対して成長が説明できるということなのでしょう。

ちなみによく希薄化する、という言葉を使いますが、希薄化は以下のようなことを言います。

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上の例によれば、SO行使前に比べ行使後の株価が半分くらいになってます。SO行使がSO行使前の株主以外の者に行なわれている場合、SO行使前の株主の保有している株価が単純に価値が下がるというわけです。これが希薄化です。SOの行使によって自分の保有している株式の価値が下がるのは嫌ですよね。


もう少し時間があったら海外の事例や他社でのSOの利用の仕方など調べてみたいなと思いました。

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