見出し画像

校則を読み比べて考える 〜頭髪編〜

前回、「校則を読み比べて考える〜靴下編〜」をお届けしました。今回は、頭髪編をお届けします。

まずは、高知の校則について

高知の「校則」を公開します

私が調べたわけではないのですが、知り合いの方が、高知県の県立高等学校および中学校、高知市立中学校を情報公開請求して、集めて、データを公開してくれました。

時間があるときに、目を通しているんですが、なんだかなぁと思うものがあるので、ちょっと紹介。今日は頭髪についてまとめてみました。

頭髪って何を基準に?

さて、頭髪に関しては、何を基準に決めているんだろうかと。最近では「頭髪検査で人権侵害」とか

「卒業式へ参加させず」とか

人権にも関わるテーマかなと個人的には感じている内容です。

〇〇にふさわしい…〜中学校編〜

さて、いくつかの中学校の頭髪規定を見ていきます

◎受験にふさわしい髪型とする。
◎髪にパーマや脱色したり染めることは、一部であってもいけない。
※ 以上の項目に違反した場合は、家庭と連絡を取り合い、速やかに上記規定の頭髪に戻すものとする。

とある中学校の校則①

受験にふさわしい髪型って、振れ幅ありすぎじゃないですか?

◎髪を染めたり、脱色したりせず、中学生らしい髪型とする。
◎髪留めは、飾りのついていない派手ではないものを使用する。ピンは、黒でシンプルな形とする。
◎髪の長さは、授業などに支障がないようにする。

とある中学校の校則②

「中学生らしい」髪型や、「授業に支障がない」長さの基準って???

◎自然で清潔な髪型
◎整髪料等は使用せず、パーマ、髪染め、脱色などはしない

とある中学校の校則③

自然で清潔って、何を基準に決めるのでしょうか???

◎男女とも髪は自然のままで飾り気なく常識のある髪型。
◎学習のじゃまにならない髪型。
(女子が髪をくくったり、とめたりする場合は、黒・紺・茶系の華美ではないゴムひも・ピンに限る)

とある中学校の校則④

自然なままって、伸ばしたままでも許されるのか?
常識あるってどういうこと???
そして、”女子が髪をくくったり”とあるのは、男子は髪をくくらない前提?

◎頭髪は中学生らしく清潔にする。
◎前髪は目にかからない。上の肩甲骨をこえる場合はゴムひも(派手でない色)でくくる。
◎整髪料を使用したり、パーマはかけない。また、ツーブロックなども認めない。
染色したり、脱色したりしない。

とある中学校の校則⑤

前髪は目にかからない・肩甲骨をこえたら髪をくくると細かな指示が。そしてパーマと並列にツーブロックなどを認めないと。この「など」が気になりますね。

男子髪型
◎中学生らしい髪型で、学習の妨げにならないものとする。
女子髪型
◎中学生らしい髪型で、学習の妨げにならないものとする。
◎後ろ髪は肩までとする。長い場合は両わけまたは1つにして、くくる。
◎止めゴム・ヘアピン・ヘアバンド・カチューシャは中学生らしく、時と場合に応じたものとする。
その他
◎整髪料は、事情により認めることがあるが、無香料、光らないものとする。
◎くし、鏡の持参は認めるが、自己管理をする。
◎男女ともパーマ・脱色・着色については認めない。

とある中学校の校則⑥

中学生らしさ推しですね。女子の髪型は男子よりも細かく指定がされているが、男子が髪を伸ばす場合は許可されるのかが不明確ですね。男子の中学生らしさで髪を短くというのであれば、それはそれで問題だなと。

男女共通
◎中学生らしい清潔な髪型にする。学習の妨げにならない髪型にする。
◎パーマ・ウェーブ・コテをかけることは一部であってもいけない。
◎髪を脱色したり、染めたりすることは一部であってもいけない。
◎整髪料はつけない。
男子
◎前髪…目にかからない程度。
◎後ろ髪…襟にかからない程度。
◎横髪…耳にかからない程度。
女子
◎前髪…目にかからない程度。
◎後ろ髪…肩の線程度とする。肩に髪が付く場合、また長い髪の場合はゴムで束ねる。(ゴムは、黒、紺、茶色、深緑の4色とする)
◎その他…装飾品はつけない。(但し、飾りが無く派手でないピン及びパッチン止めは可とする)

とある中学校の校則⑦

めっちゃ多い…男子の項目をクリアするために後ろで束ねてるのはOKと受け取ることもできそうだが、きっとダメなんだろうな。あと、髪のゴムの色は『黒・紺・茶色・深緑』、靴下の色は『白・黒・紺』この違いってなんだろう。。。

頭髪は常に清潔にし、中学生らしい品位を失わないようにする。
男子
◎ツーブロックなど、高校入試の際にふさわしくない髪型はしない。
◎前髪は目にかからないようにし、えり足はシャツにかからない程度にする。
女子
◎おだんごやあみ込みなど、高校入試の際にふさわしくない髪型はしない。
◎前髪は目にかからないようにし、かかる場合には黒ピンでとめる。
◎後ろ髪は肩にかかる程度までとする。肩より長い場合は、適当な一でくくる。ヘアゴムは黒・紺・茶色で、装飾のないものとする。
共通
◎ワックスやムースなどの整髪料はつけない。
◎パーマをかけたり、染めたり、くせをつけたりしない。

とある中学校の校則⑧

中学生らしい品位って、なんでしょうか。そして、高校入試の際にふさわしくない髪型ってなんだろう。これは、中学校が「ふさわしくない」と考えているのか、高校が「ふさわしくない」と考えるだろうと予想しているのか、なんなのか…(なお、高知県の公立高校の入試は「志願変更最終日の全日制課程全体の志願倍率は0.70倍」となっております)

男子
◎髪は自然のままで飾り気なく常識のある髪型
◎学習のじゃまにならない髪型
女子
◎髪は自然のままで飾り気なく常識のある髪型
◎学習のじゃまにならない髪型

とある中学校の校則⑨

男女で分けて書いているけど、文面は同じ!これは何かを意味しているのか、なんだろうか…

脱色や着色、パーマなどの加工をしないこと

とある中学校の校則⑩

シンプル!!!

とまあ、全部を取り上げたわけではありませんが、靴下よりは多様な内容となっておりました。
気になったのは、「高校入試にふさわしいもの」という規定が何校かで見られたこと。いや、入試において髪型で不合格にするなんてことがあったら、それこそ大問題なんですが。え、あ、公立高校においては、こんなことがあるのでしょうか?これは、議員の方から教育委員会へ議会で質問してもらったらいいかもしれませんね。ふぅ…

あと、思ったよりは「ツーブロックNG」とは明記している学校は少なかったですね。19校のうち2〜3校程度。でも、「中学生らしい」や「自然のままで」や「学習のじゃまにならない髪型」で包含してそうですよね。このあたりは抽象的な語句で逃れている印象です。お互いの認識のズレがないかは、確認することがいいのではないだろうかと。

一方で「脱色や着色、パーマなどの加工をしないこと」だけにしている学校もあるので、何か違いが起こったのかを質問するといいのかなと。靴下よりも規定している幅に広さがありますね。

いつの時代のルールなのだね…〜高校編〜

中学生編は、思ったよりは、ガチガチではないなぁという印象でしたが、高校ではどのようになっているでしょうか。

◎男子、前髪は眉にかからない、横髪は耳にかぶらない、後髪は襟にかからないこと。
◎女子、肩にかかる場合はゴムで束ねる、前髪を下すときは眉にかからないこと。
◎男女とも、パーマ、毛染め等、人工的に手を加えたり、極端な刈り上げ、剃りこみ等、奇抜な髪型は認めない。

とある高等学校の校則①

中学校でも指定されているのと同じような内容ですね。「人工的に手を加えたり、極端な刈り上げ、剃りこみ等」の「奇抜」というのが何を指しているのかは不明。人工的に手を加えないというのは、カットするのは含まないということなのだろうか…

◎清潔に整えるようにする。(前は目にかからない。長い場合は、ピンなどで止める・後ろは長さが肩を越える場合は結ぶこと。)
◎以下のような頭髪に手を加える行為、奇抜な髪型は禁止とする。
スキンヘッド、パーマ、カール、アイパー、リーゼント、染色、脱色、眉・額の剃り込み、リボン、ヘアバンド、エクステンション等は禁止。なお、ヘアピン、ゴム紐、カチューシャ、バレッタ等については華美でないものは許可する。

とある高等学校の校則②

「アイパー」って現代の高校生がわかるんですかね?アイパーとエクステンションが同列に書かれていることに違和感。また、リボン・ヘアバンドはNGで、カチューシャOKというのはどんな基準なのでしょうか。高校になると、具体例で禁止してますね。ここまで禁止しているけど、男女は分けていない様子。

◎男子は、丸刈り、長髪のいずれでも可とする。清潔な髪型とし、襟にかからない長さとすること。
◎女子は、清潔な髪型とし、髪の長さが方にかかる場合は編むか結ぶこと。ゴム紐とヘアピンの使用は認めるが、黒・紺色のみとし目立たないものとする。ヘアバンドやリボンの使用は認めない。
◎男女とも、パーマネント、カール、眉や額等の剃り込み、毛染や脱色は禁止。

とある高等学校の校則③

男子において「丸刈り」「長髪」のいずれでも可としているが「襟にかからない長さ」とする。ということは、この「長髪」というのは「襟にかからない長さの髪型」=「長髪」という定義なんでしょうか。長髪の定義がよくわかんないですね。
あと、リボンとヘアバンドはここでも禁止なんですね。なんだろうこのこだわり。

◎化粧、装飾品(ピアス、エクステ、指輪、マニュキュアなど)は禁止します。頭髪の脱色・染色・パーマ等は禁止です。アイロンやコテも髪が傷み変色するので禁止とします。

とある高等学校の校則④

比較的緩やかな書き方でした。男女の区別もないですし、長さについては特に表現なし。

◎男子…前髪は眉まで、横髪は耳にかぶさらない、後髪は襟にかからないこと。極端な刈上げ等、長短の激しい髪型については認めない。
◎女子…前髪を下ろすときは眉までとする。横髪と後髪が方より長い場合は、編むか結ぶかが望ましい(但し、式典時において肩にかかるときは、編むか結ぶこと。髪を結ぶときは、華美でないゴムひも)。極端な刈上げ等、長短の激しい髪型については認めない。
◎下記の項目の頭髪は認めない
パーマネント、カール、リーゼント、アイパー、逆毛、毛染、脱色、眉や額のそりこみ等、ヘアーバンド、リボン、カチューシャ、付け毛、装飾されたヘアピン等をすること。

とある高等学校の校則⑤

一方でこちらは、厳しめ。「長短の激しい髪型」ってツーブロックも含むってことなんだろうか。式典時の髪型まで指定している。また、リボン、ヘアバンドに加えてカチューシャも禁止されている。このあたりのラインは何で決めているのだろうか。

◎髪型は高校生の品位を保ち、社会から信頼される(いつでも企業や上級学校で面接できるような)スタイルとする。男子は目や耳が髪で隠れないこと。女子の長髪は、授業その他の活動の妨げにならないように束ねること。また、ツーブロックや極端な刈上げなど奇抜ととらえられる髪型を禁止する。
◎頭髪の染色・パーマ・エクステンション・その他の加工については認めない。ただし、個人的事情がある場合、生徒指導部教員に申し出後、誓約に従って行うことができる。
◎髪留め類の色は黒、紺、茶などとし、派手なものや大きなものは避ける。
◎ピアス・ネックレス・指輪・ブレスレット・イヤリング・カラーコンタクトレンズなどは認めない。
◎化粧・有色リップクリーム及びマニキュア・つけ爪などは認めない。

とある高等学校の校則⑥

「社会から信頼される=企業や上級学校で面接できる」って決めちゃってるよ…ツーブロックは奇抜なのか。そうかそうか。ツーブロックの人は社会から信頼されないと言い放っているわけでしょうか。

頭髪の染色…の項目は、個人的事情があると誓約に従って行えるってのもなんだかなぁ。なんの誓約をするんだか。

◎奇抜な髪型や、パーマ、変色、脱色は禁止。

とある高等学校の校則⑦

こちらはシンプル。ただ「奇抜な髪型」が指すものが不明確ではあります。

◎「高知県高等学校 服装・頭髪に関する指導方針」に準ずる。尚、男女とも清潔な髪型を保つように努めること。

とある高等学校の校則⑧

初めて出てきました「高知県高等学校 服装・頭髪に関する指導方針」。これが別掲されていたので、以下に紹介

高知県高等学校 服装・頭髪に関する指導方針
平成元年度 高知県高等学校生徒指導連絡協議会

平成元年度…1989年度ということですね。もうすぐ2023年度。ひょっとしたら、この頃のものが各学校に残っているのかもしれませんね。ミニ・ヴァーグってボブヘアーのことかな…

◎端正、清潔で落ち着いた髪型とする。前髪は目にかからないこと。
◎髪留めは華美でないものとする。ヘアーバンド、カチューシャ、シュシュ、エクステ等は認められない。
◎染色や脱色、パーマは認められない
◎口紅(色つきリップを含む)、アイシャドウ、アイプチ、カラーコンタクト、マニキュア、化粧は認められない
◎指輪、イヤリング、ネックレス、ピアス等のアクセサリーの着用は認められない。
※生まれつきの髪色の場合や、宗教上の理由の場合など、特別な事情がある場合は、ホーム担任を通じて生徒指導部に相談してください。

とある高等学校の校則⑨

新しい高校のためなのか、髪型で規定しているのではなく「みだしなみ」でまとめて書かれている。そして、あまり細かな指定はない。しかし「端正、清潔で落ち着いた」という曖昧な言葉で定められており、これが何を意味するのかは不明確。

気になった注意表記

また、この高校の校則にある「※生まれつきの髪色の場合や、宗教上の理由の場合など、特別な事情がある場合は、ホーム担任を通じて生徒指導部に相談してください。」ですが、とても気になる。

まず、子どもの権利条約 第2条をご確認ください

子どもの権利条約
第2条

1. 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
2. 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

「子どもの権利条約」全文(政府訳)

子どもの権利条約では、このように定められています。この校則では「人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなし」ということに反しているのではと。「〇〇のルーツだからOK、でも日本人はNG」「〇〇の宗教だからOK、でも他の宗教だからNG」というのも差別ではないだろうかと。もう少し丁寧に扱ってほしいんですが。

高校の校則も頭髪に関しては幅があります。ほとんど指定がないところと、ガチガチなところと。ただ、どこも髪染め・脱色は禁止なのかな。あとは「奇抜な」髪型を禁止しているけど、この「奇抜」というのが何を意味しているのかは不明。最初にも書いたがコーンロウを「奇抜」に含むのであれば、それはやはり問題なんだろうなと。

あとは、男女分けて書いているのが高校には多いですね。ひょっとしたら、中学校のほうが少しはジェンダー差別を意識しており、高校のほうが遅れているのかもしれないですね。

というわけで、ここまで読み比べたものを書き出してみました。すべて目は通しているのですが、全部紹介すると多くなってしまうので、選択して紹介しております。高知の気になる学校の校則がありましたら以下のサイトで各自確認していただければ幸いです。

そして、シリーズ化していきますので、マガジンの購読をしていただければ幸いです。



いただいたサポートは、誰でも教員と会って話せる『会いに行けるセンセイ』の活動に利用させていただきます。