Adagio アダージョ
メトロノームは、一定の間隔で音を刻み、楽器を演奏あるいは練習する際にテンポを合わせるために使う音楽用具です(Wikipediaより)。今回は、遅い速度表示を示すAdagio(アダージョ)、Lento(レント)、Largo(ラルゴ)4とGrave(グラーヴェ)の4つの意味合いを見ようと思います。
表示は一分間に刻む音の回数なので、Adagioは秒速と同じくらい、LentoそしてLargoの順でよりゆっくりになります。いちばん速度の遅いものがGraveになります。「ゆっくり」の指示をメトロノームの速さに従って演奏できればいいのでは…?と思われがちですが、この4つの言葉を比較することで、「ゆっくり」の質感の違いを感じてみることを提案します。どの単語もイタリアでは日常で使われる生きた言葉なので!
【Adagioの意味】
Adagioは、Ad - agio (=楽に)から派生した言葉で、他にも「注意深く、慎重に、ゆっくり、静かに」という意味があります。つまり慎重でありさえすればゆっくりでなくても良いのです。意味からも分かるように、速度が遅くなっても注意密度は変わりません。駐車場の出入り口には必ずと言ってよいほどAdagioと書いてあります。
【Lentoの意味】
Lento は、「ゆっくり、遅く」の他に、「のろい、緩慢な」という意味があります。時間軸が延びたり、緩まることでゆっくりになるわけです。生クリームを固く泡立てる際、まだ角の立たない状態はLentoです。超多忙な人に対して「無理しないで、少しゆっくりして」という時もこれですので、Lentoには密度を薄める意味合いがあるわけです。
【Largoの意味】
辞書を見ると、「非常に遅いテンポ、表情豊かに、ゆったりとした」という訳と共に「空間的に幅広いだけでなく、考え方の幅広さ」と書いてありました。つまり、ポジティブな感情で大らかな表情、オープンマインド、柔軟性、広くアンテナが立っている状態ですね。
【Graveの意味】
逆に、Graveは、重量を示す言葉でもあり、深刻さ、後がない、予断を許さない状態など、心の重さがそのまま速度にも反映されているわけです。
如何でしょうか?語感を生み出すプロセスを掴むことで、単なる速度表示ではない「ゆっくり」から演奏の新しいアプローチが生まれるのではないでしょうか?
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