3万人以上の虐殺に世界や自分自身を慣れさせないために
パレスチナガザ地区の死者数が、少なくとも3万228人になったと報道されています。増え続ける死者数と辛い映像に目を背けそうになりながら、でもこんな世界は絶対におかしいと一緒に言ってくれる人を一人でも増やしたい。
このnoteは、NYNJでnoteチームに所属し、ラファに関するストーリーの担当をした私ときが執筆します。前半は「NYNJは政党「中立」ではなかったの?」と疑問をもったかもしれないフォロワーのみなさんに向けて、2月18日に行われたイスラエルのラファ侵攻を止めるためのアクション「ラファに手を出すな!全国連帯デモ」、3月2日の「ラファに手を出すな!HANDS OFF RAFAH 」でNYNJが賛同団体になり、ラファ侵攻を止めるために行動を起こしてほしいとデモ告知まで踏み込んで伝えた理由を綴ります。
後半は、フォロワーのみなさんのうち、ガザについて辛いけれども自分が行動するのは少しハードルが高いなと感じている方へ向けて、一緒にジェノサイドへNOと言おう、行動しようというメッセージを書きます。
ストーリー制作からデモの参加まで
2月16日から18日にかけて、NO YOUTH NO JAPAN(以下「NYNJ」)では、〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会のみなさまとのコラボ投稿で、ガザ地区で起こっている虐殺とラファに関する、ストーリーとリールを投稿しました。多くの方がガザの状況を発信してくださっていますが「行動を起こしたいけれど“今”何が起こっているのか判断できない」「悲しいことが起こっているのは分かるけれど自分に何ができるかは分からない」という方へ向けて、現状がどれだけ差し迫っているかを伝え、ラファ侵攻を止めるアクションをとるきっかけをつくりたいと考え、制作しました。
ラファについてのストーリー制作を企画したタイミングで〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会の方から、2月18日に全国で行われた「2.18 ラファに手を出すな!全国連帯デモ」の賛同団体へのお誘いをいただきました。NYNJとして賛同団体となることを決め、フォロワーのみなさんへデモの告知をしました。
18日の新宿で行われた東京のデモには、NYNJメンバーとしてまとまって参加し、賛同団体としてメンバーの1人がスピーチをさせていただいたほか、ストーリーの内容をまとめたチラシを配布しました(3月5日までネットプリントを可能にしております。※ 3月5日が正となります。ストーリーと最初に公開した際の日付に間違いがあり申し訳ありません。記事末尾に番号を書きます)。
主催者のみなさまに感謝をいたします。またデモで声をかけてくださったフォロワーの方、チラシを一緒に配ってくださった方がたくさんいました。ネットプリントをして、チラシを掲げてくださっていた方も。みなさん本当にありがとうございます。
なぜデモの賛同団体になったの?
NYNJは「参加型デモクラシーをカルチャーに」をVISIONとして掲げています。その一環として自分が生きたい社会に向けて、知ってスタンスを持ち行動をするきっかけをつくる団体として、Instagramなどで発信を行ってきました。けれども特定のイシューのデモについて賛同団体となり、フォロワーの皆さんへデモの告知したのは今回が初めてでした。
今回デモの賛同団体になることを決めた理由は、賛同をしないという立場をとることが、ガザ地区、そしてパレスチナの人々への虐殺の加担になると考えたからです。
ガザ地区で起こっているのは、対等な戦争や戦闘、衝突ではありません。ガザでは少なくとも3万228人が亡くなり(死者は38,000人以上とする報告もあります)、そのうち12,000人以上が子どもだと報じられています。国際司法裁判所(International Court of Justice。以下「ICJ」)は1月26日に、イスラエルに対し、ジェノサイド(集団殺害罪)を防止するあらゆる措置をとるよう命令を出しました。国際法学者によると、ICJがガザで起きている状況がジェノサイドである見込みが高い、との考えを示したとされています。
1967年以降のイスラエルのパレスチナ占領についても、2月19日よりICJでの審議が始まっています。
多くの国際学者が、イスラエル政府関係者がパレスチナの人々を集団的に殺害・攻撃する意図を明示していると指摘しています。また、空爆による攻撃だけではなく、飢餓や伝染病を意図的に起こしていることも指摘されています。ガザでは支援物資の搬入がイスラエル政府によって却下される、畑や漁業船がイスラエル軍に破壊されることなどの影響で、深刻な飢餓が起こっており、パレスチナの人々が動物の飼料や雑草を食べて飢えをしのいでいること、餓死で人が殺されていることが報道されています。この他にも、イスラエル軍による病院や医療従事者への攻撃、住宅の大規模な破壊、学校への爆撃、避難勧告を出すことによる強制移動、民間人であるジャーナリストの殺害など、戦争犯罪にあたる多くの行為が報道されています。
国際法に照らせば、ジェノサイドや戦争犯罪にあたる行為が続いている中で、メディアでの取り上げは少なくなりつつあります。そのためパレスチナで何が起きているかが社会に伝わっていない現状があります。
このような中で、デモに賛同しないという見かけ上の中立をとることは、「現状を変えるべきとは思いません」というイスラエルのラファ侵攻を肯定するメッセージとなり、虐殺への加担となりえます。そのため、今回のデモに賛同することを決めました。
ジェノサイドを止めないことは、それが許される世界に自分自身を慣れされるということ
ここからはNYNJを代表するのではなく、2024年にこの世界に生きる1人の人間として書きます。起きていることが辛いし大変なことだとは思っているけれど、自分自身が行動を起こすことにはまだ少しハードルがある、という方に向けて、私が声を上げなくてはと思った理由を綴ります。
「パレスチナへの虐殺を止めて」と声を上げなくてはと思ったきっかけは「周りの人が停戦に向けて行動していたから」です。私はパレスチナに友人がいるわけではありません。元々パレスチナに詳しいわけでもありません。
周りの人がイスラエルによるパレスチナへの攻撃に対して行動をしていたから、パレスチナについて調べてみました。そこにはあまりに非対称な暴力が76年もの間、世界から許されている現実がありました。イスラエルの建国前からパレスチナ人が虐殺され、現在まで占領され、ガザだけではなくヨルダン川西岸地区も含め、入植者による日々の暴力にさらされてきたことを知りました。そして今、3万人が殺されています。
一人ひとりの命を数で語ることは決してできませんが、3万人というのが、どれくらいの数になるか少しだけ想像してみてください。
あなたの周囲の、例えば会社や、学校の全体の人数がどれくらいなのかを上げて、その何倍にあたるかを確認してみてください。なお、半数近く(12,000人以上)が子どもだと報道されています。その一人ひとりに名前があり生活があったはずです。
安全地帯だとイスラエルから言われた場所へ何度も強制移動をさせられ、移動させられた場所が空爆されている。生きていく上で必要な食糧はコントロールされ病院も攻撃され、飢餓や感染症が起こされ、いつ自分の命が失われるか、いつ隣の人の命が失われるかわからない状況の中、パレスチナの人々は毎日を生きています。想像などしきれない、簡単に書くことができない異常なことが起こっています。
今起こっている暴力、76年間起こってきた暴力にNOという声を上げないということ。それは、今後この世界で同じことが起こっても、自分に近いところで同じことが起こっても、その暴力を容認し続けるということです。
ジェノサイド条約をはじめとする歴史の反省から作られてきた国際法なんて無視されてもよいものとする。暴力を振るう側が守られる立場にある限り、人が虐殺され続ける現状を許したままにする。国際法が機能する世界が壊れていくことを受け入れる。この異常な事態に、ジェノサイドにNOを突きつけなければ、国際法なんて関係ない、暴力が正当化される状態に、世界や自分たち自身を慣れさせることにつながります。
そして、1948年以降のパレスチナの実状を正しく知るのが遅かった私は、自分で気づかないままに加担の言葉を受け入れ、ジェノサイドにつながる製品を買い、暴力を容認する現状に自分を慣れさせていたのだと思います。その結果、3万人の命が奪われることに私は加担したのだと思います。
ジェノサイドという今すぐに止めなくてはいけないことがパレスチナで起こっています。無自覚に自分が加担していたという事実は、真っ直ぐに受け止めるにはあまりにも重く、加担していたことの恥ずかしさに自分が押しつぶされそうです。情報を追い続けるのが辛く立ち止まりそうにもなります。でも、パレスチナで起こっていることから目を背けて、多くの人が殺されていくことに、世界を壊していくことに、自分を麻痺させてはいけないから、私はできうる限りをやっていくしかないと思っています。
一人ひとりの行動には、思っているより大きな力がある
デモを含む停戦に向けたアクションに対して「意味がない」「日本で騒ぐな」「日本政府に求めてもしょうがない」など、いろいろなコメントがSNS上で見られます。
けれども、これらのアクションには多分、わたしたちが思っているよりもずっと大きな力があります。例えば〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会を始めとするみなさんが声を上げてくださったこと、多くの人が署名したことで、イスラエルの軍事企業と日本の企業の協力覚書きが破棄されました。現在も日本企業にイスラエルの軍需企業への製品の販売中止を求める署名が呼びかけられています。まだ署名していない方はまずはここから。
また日本でデモをすることで、デモを見た人に関心をもってもらうことができます。2月18日に新宿で行われたデモには3000人という多くの人がいたからこそ、道行く多くの人が足を止めました。私は11月からデモに参加していますが(主催者のみなさんに感謝をしております)、最近はデモに目を向け足を止める方が増えた感触があります。2月18日のデモでは「何をしているの?」と興味を持って話を聞いてくれたり「行動してみる」と声をかけたりしてくれる方がいました。
日本政府へ働きかけを求めることにも意味があります。日本は国連の安全保障理事会で行われている「即時停戦(immideate ceasefire)」を求める決議に、10月時点では反対や棄権(日本時間10月17日に行われた決議案には反対、10月26日の決議案では棄権)を表明していました。しかし12月8日と2月20日の決議案には賛成を投じています。たくさんの人が日本政府へ意見を送った結果かもしれません。なお、ジェノサイドを止めるために、日本政府に求めるべき行動はまだ沢山あります(UNRWAの拠出金再開、イスラエルへの経済制裁、協力覚書の破棄など)。※ 記事末尾にアクションの呼びかけ情報を載せています。
私はアクションを呼びかけてくださっている方々のおかげで、自分のアクションが変化につながるのだと知ることができました。〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会の皆本さんが繰りし呼びかけてくださっているとおり「わたしたちには力がある」のだと気づくことができました。
最初の一歩を踏み出せば
仕事や生活だけでタフなこの社会の中で、しんどい情報を追うこと自体が辛いかもしれません。初めてのデモに行くときは緊張するかもしれません。
行動をする最初の一歩のハードルはとても高く見えると思います。
でも現在は、本読みデモ、アクセサリーなどでの表現、身近な企業の製品の不買運動、デモに参加することが苦手な方々の集まりなど、様々な形での意思表示やアクションが呼びかけられています。
アクションのまとめリストや、企業・メディア・議員さんに意見を送る際の文例集も作ってくださっている方がいます。「ジェノサイドを止める」「即時停戦を求める」ためのアクションを起こす、その最初の一歩のハードルは、たくさんの方々の手によって、もう最大限引き下げられています。少し調べれば、自分にもできるアクションが見つかるはずです。
そしてわたしたちが政治に対して声を届ける仕組みは、政治の側も用意しています。
自分のお気に入りの企業やブランド、推しに対してなら、いいねで反応をしたり、「これは良かった」「もっとこうしてほしい」と意見を送ったりする人もいるのではないでしょうか。それなのに、政治に対して意見を送るのはちょっと遠慮する風潮があるのはなぜでしょう。
私も議員さんに初めて意見を送ったときは、どんな風に伝えたらいいのか心臓をバクバクさせながら意見フォームを書きました。
でも意見を送るために調べてみると、意見フォームや請願書など、市民が声を届ける仕組みは、政治の側がたくさん用意していると分かりました。それを使って政治の場に声を届けることは、私にもできることなのだと気づきました。
また「自分の身近な人が行動している」「多くの人が関心を持っている」というメッセージは、自分が思っているよりも周囲の人に大きな影響を与えるものです。私も最初のきっかけは、身近な人がSNSで情報を共有していたからでした。
私がみなさんに向かって何かを呼びかけることが、とてもおこがましいことであると自覚しています。それでも、ニュースを見て辛いとは思っていたけれど自分が行動するものではない、行動するのは難しいと思っている方がいれば。
ジェノサイドを止めるために、どうか一緒に一歩を、踏み出していただけませんか。
この世界はおかしいという声を、一人ひとりの声を束にして大きな声で響かせなきゃいけないときだから。こんなにも異常な事態をこのままにしては絶対にいけないから。
(補足)「何をしたらいい?」「どこから学んだらいい?」という方へ
以下のアカウントのみなさんをフォローしてみてください。
Hanin Siamさん:
Instagram(@hanin.gaza.jp),Twitter(@hanin_gaza_jp)Zacさん:
Instagram(@zac.mdd)Palestinians of Japanさん:
Instagram(@palestinejapan)〈パレスチナ〉を生きる人々を想う学生若者有志の会さん:Instagram(@omou_palestine),Twitter(@omou_palestine)
BDS Japan Bulletinさん:
BDS Japan Bulletin(wordpress.com),
Instagram(@bdsjapan.bulletin),Twitter(@BDSjapan)Geji/皆本夏樹さん:
Instagram(@inkyano_geji),Twitter(@HERespeakmyself)
mgm(@mgm465503040415)さんが作成くださった、「日本から私たちができる🕊🇵🇸パレスチナ連帯行動🍉🕊」というアクションリストがあります。「家からできること」「外に出てできること」「学ぶこと」という3つの観点から、アクションを体系的にまとめてくださっています。https://docs.google.com/document/d/1IUVPD02DGo5GPPM6ZU2WB0FYES4eGAaXZio07hq07hc/edit#heading=h.fgkuwzptng79
「学ぶこと」のセクションには、書籍や動画のほか、フライヤーや短い動画などすぐに学べるものもありますのでぜひご一読を。
リスト内に「🍉#パレスチナ連帯アクションまとめ🫒🏢企業・メディア・議員への問い合わせ文例集📺」もつけてくださっています。https://docs.google.com/document/d/1_CZBGEBwQ9t7baF0uDzU1G9BkQF8cwfhESMLlxIsiOA/edit
以下はほんの一部ですが、例えば以下アクションがあります。
UNRWAへの拠出再開を求めるアクション:日本はUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)への拠出金停止を発表しましたが、UNRWAへの拠出金停止は、パレスチナでのジェノサイドの共犯になる可能性が指摘されています。UNRWAへの拠出金停止撤回を日本政府や他国へ求める署名やアクションが呼びかけられています。
(補足) チラシネットプリント
ファイル名:240227_NYNJ_gaza_flyer.pdf
[セブンネットプリント]
予約番号:R3HCPF2L
サイズ、色も設定済。1枚50円。3月5日中まで有効
[アクセア(印刷)の店舗]
予約番号:39CU17V
A4サイズ、カラー印刷を画面で選択してください。
1枚25円。 3月5日昼12時まで有効
文=とき
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