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THEATRE for ALLさんと考える芸術鑑賞× バリアフリー

こんにちは。NO YOUTH NO JAPANの石井萌です。

5月のInstagram投稿では、THEATRE for ALLさんとコラボし、バリアフリーに着目。
Instagramの質問箱で「アート鑑賞で困ったこと」を皆さんから募集しました。

バリアフリー特集だったのに、どうして突然「芸術」?と不思議に思われた方がいるかもしれません。

バリアフリーという言葉を聞くと、ふと階段横のエレベーターやスロープ、点字ブロックといった街中の様子を思い浮かべがち。
芸術鑑賞、なんて言われても、そもそも芸術鑑賞に日常的に触れる場面も少なく、特にそれに伴うバリアについて考える機会が少ない方が多いのではと思います。

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一方で、芸術鑑賞にも、様々なバリアが存在しています。
このnoteでは、皆さんからいただいた質問箱の回答を基に「バリアフリー」について一歩踏み込んで考えてみます。

THEATRE for ALLさんって??

その前に、今月のInstagram投稿でコラボさせていただいた「THEATRE for ALL 」さんについてご紹介させてください。

THEATRE for ALLさんは、すべての人がバリアフリーで映画や舞台劇場を楽しめるように、だれでも、いつでも、どこからでもひとりひとりが繋がれる劇場を提供しているプラットフォームです。
誰もが演劇や映画、ダンス、舞台、アニメなど様々な作品を楽しむことができるよう、音声ガイドや、手話通訳、多言語字幕などを通じてオンラインで配信をしています。

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例えば「音声ガイド」で舞台の様子を説明することで、目が見えない方にも舞台を楽しんでいただくことができたり、

動画内の音や歌の歌詞など、セリフ以外の耳から入る環境音を文字化することで、耳が聞こえない方にも動画の展開を正しく理解していただけます。

オンライン配信でコンテンツをお届けしているので、劇場が遠いという方も、気軽に作品を楽しめます。

また、サイト内では、芸術作品をバリアフリーでお届けするだけではなく、福祉や自分の身近なバリアについて問いかけ、考えさせられるコンテンツも配信されています。

芸術鑑賞に存在するバリア

では実際に、芸術鑑賞にはどんなバリアがあるのでしょうか。

「芸術鑑賞に困ったことはありますか?」という質問箱を設置し、皆さまから133個の質問をいただきました。その中で多かった意見TOP3は、①遠い・芸術へのアクセスが限られている、②料金が高い、③解説がないと難しい、でした。

・ 地方出身だと都心に比べて芸術環境が整っていないと実感します。

この意見はとても多く寄せられました。
東京に存在する劇場の数は、117。一方、東京以外の都道府県の劇場の数は平均で39。一番劇場の数が少ない都道府県は鳥取県で劇場の数は14です。

「アクセスできる距離に、舞台や映画や、美術品を見られる環境がない」「劇場があっても、自分自身の力で行ける手段がない」というのは、芸術鑑賞に対する「距離のバリア」です。
「緊急事態宣言で県外の美術館に行きづらい」という意見があったように、コロナの影響で直近では特にこの距離のバリアが拡大しているように思います。

・料金が高い!

展覧会へ1つ行くとしても、大体1000円はかかりますよね。特に学生の間は、1000円であっても簡単に出せる金額ではない場合があります。

東京都の文化に関する世論調査によると、芸術や文化を鑑賞したり、文化イベントに参加しなかった理由で3番目に多い理由が「入場料等の料金が高いから」。

例えば、日本芸術文化振興会の調査では、現代演劇チケット1 枚の単価は、4,000 円~5,000 円台が多いと報告されています。1年で演劇を1-2回 みるだけでも、費用は1万円を超えてしまいます。

頻繁に芸術鑑賞を楽しみたい。学生だけど、毎月観劇をしたい。けれど、そこに「お金のバリア」がある。そのバリアは、芸術鑑賞のハードルをあげているかもしれません。

・複雑で難しい!専門知識がないと面白さがわからない!


「美大卒ですが作品解説が小さく1ヶ所に集まりがち、解説文が学術的すぎるので理解深まらない」という意見もありました。

私も、以前ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に行った時に音声ガイドを借りた経験があります。いつも美術鑑賞をしている時に、解説を読んでも理解できない場合が多いからです。

鑑賞後、音声ガイドでこんなことを言っていたよと、友人と作品について話合えたことで、作品を更に楽しむことができました。
背景知識を持っていなくても理解できる・考えるきっかけは大切そうです。

芸術鑑賞へのバリアをなくすプラットフォーム

実は、THEATRE for ALLさんでは、皆さんから寄せられた芸術鑑賞への「バリア」を解消する仕組みを提供しています。

例えば、オンライン配信をすることで、どこにいても芸術に触れることができ、「距離のバリア」を解決。

また、有料の作品だけでなく無料で視聴できる作品もあります。一旦無料で作品を楽しんで、気になる作品は購入ということもできるので、経済的なバリアも少なくなっています。

「芸術は難しい!」という方には、充実した解説動画やワークショップがオススメ。
単なるコンテンツの解説だけではなく、私たちへの問いかけも含まれるので、作品をより深く理解することができます。

私のオススメは、ストーリーで作品紹介も行った「十人十色の物語〜今年90歳になる館長と9人のドラァグクイーン〜」の解説動画です。

※登録をしたら無料で視聴可能です。

この作品は、性の多様性をテーマとしています。解説動画では、作品の前提知識となるLGBTQやSOGIEというワード解説だけではなく、当事者それぞれが「性とはなにか?」「これまで性の少数者として生きてきた上で違和感を持った経験」を語っています。

解説を見てから作品を振り返ってみて「多様性を理解する」ということの自分の認識が少し変わっていることに気づきました。
解説動画を見て、改めて作品を見直していただくと、さらに理解が深まります。

「バリアフリー」とは、社会に参加する上での「社会側」のバリアをなくすこと。

バリアフリーといったら、障害がある方の話、自分は普段の生活では感じていないから関係ないと思う人もいるかもしれません。

でも実は、バリアフリーとは、障害の有る無しに関わらず、多様な状態にあるすべての人にとって、社会に参加する上での障壁(バリア)をなくすこととも捉えることができます。

近年、障害は「個人」の心身機能に原因があると考える「個人モデル」から、障害は「社会」の作りや仕組み側にあると考える「社会モデル」を理解することの重要性が、注目されるようになってきました。
「個人に障害があるから」不便なのではなくて、その方に不利益を被らせている「社会」の側に問題がある。だから、社会の側の制度や機能を整えて、誰もが暮らしやすい社会にしようという考え方です。

芸術に気軽に触れられない・楽しめないというバリアがあるなら、より多くの人が楽しめる形に、社会側のバリアをなくそう。THEATRE for ALL さんは、まさに、芸術鑑賞で一人ひとりに立ちはだかるバリアをサービス側が取り除くことで、より多くの人が楽しめる劇場を提供しています。

私も正直、コラボさせていただき「バリアフリー」について考える前は、芸術について触れないのは、自分自身そうした環境や機会、関心がなかっただけ、つまり「自分の問題」と思っていました。心身ともに障害があるわけではない自分に社会側の「バリア」はないのだと。
でも、実際には、実は自分が芸術にアクセスしていない理由には、料金が高い、身近に芸術に触れられる施設がないといった、環境側の「バリア」も多数存在していました。

劇場、芸術、福祉、バリア、、、どの単語にもピンとこないという方にも、ぜひ一度THEATRE for ALLさんのコンテンツを体験していただければと思います。そして、普段意識していない「バリア」、とくに個人の外側にある「社会側のバリア」について考えるきっかけになれば、嬉しいです。
(文=石井萌)

出典:
文部科学省「社会教育調査ー劇場、音楽堂調査」2018年
東京都「文化に関する世論調査」2018年
独立行政法人日本芸術文化振興会「鑑賞行動に関するアンケート調査(演劇)平成 28 年度助成事業より」2016年, p.79.






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