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「発信」は私たちをどう変えたか。「投稿の作り手」の私たちを考える

8月のInstagram投稿「戦争と平和」では、投稿を発信する私たちNO YOUTH NO JAPAN(以下NYNJ)自身の変化をお伝えしています。インタビュー前編では、「戦争と平和」というテーマに向き合う葛藤をお話しました。

実は、前編・後編を通じて、今回お話を聞いたのは、6月にNYNJに加わり、8月に初めて投稿づくりに関わったメンバー
今まで、いちフォロワーとしてどんな想いで投稿を見てくれていたのか。投稿を「つくる側」になってどんなことを考えたのか。後編では、発信者となった新メンバーの想いの変化に迫ります。

インタビューメンバー:川西めいこ、沖田茜、下條望恵、吉井紗香、藤崎花美

「モヤモヤが代弁されていたから」

そもそもNYNJというInstagramのアカウントは、一人ひとりにとってどう映っていたのか。そんな質問をしてみると、「こういうアカウントがあって嬉しかった」「『こういうことやりたい!』が詰まってた」「投稿が楽しみだった」と、Instagram編集部でない自分でさえ震えてしまうほど嬉しい言葉が返ってきました。

特に多かったのは「自分が抱えていたモヤモヤを表現してくれていた」という言葉です。

新型コロナウイルスの自粛期間、Twitterでアーティストが政治を語るなという攻撃的な批判をみたりして、それってどうなの?おかしいんじゃないって、すごくモヤモヤしていたんです。それ以外にも、ニュースや政治の動きでモヤモヤすることが多かったんですけど、NYNJの投稿はそれを払拭してくれました。(沖田さん)
もともと政治に興味があったので、なんでこんなに投票率が低いのかな?とか、疑問に思うことはたくさんあって。NYNJの投稿はそれを代弁してくれました。関心はあったけど知識はない自分が、知識を蓄えるために見てました。(川西さん)
自分が思っていることや、友達と話したいなと思ってたことを言葉にしている!と嬉しくて。リポストするだけで、自分が気になっている社会問題とか、みんなにも考えてほしいことをシェアできるのがいいなと思ってました。特にLGBTQのポストは、知らない単語も多くて勉強になって。学校で友達から「シェアしてくれてありがとう」って会話のスタートになることもありました。(下條さん)

選挙に関すること、コロナ禍やアメリカの黒人差別反対運動(Black Lives Matter:以下BLM) などの社会問題に対して思うことがありながらも、知識や言葉不足で伝えきれなかった想いを、言葉で、ビジュアルで伝えてくれるメディアとしてNYNJのInstagramが役立てっていたこと、私たちが後押しできていた人がいると気付きました。

6月入会のメンバーがNYNJに参加したきっかけは、フォローや投稿のシェアをするだけではなく、「アクションを起こしたい」「自分も発信したい」「もっと政治をテーマに話すことはできるんじゃないか」という想いだったといいます。

BLMのムーブメントが大きくなっていた時期、周囲の友達の中でもそれが話題になることがありました。そんなときに、ちょうどNYNJのストーリーで、BLMを取り上げていて。これは、NYNJがくれたチャンスなのでは?と思って、NYNJのストーリーを資料にしつつ、友だちと一緒に勉強したり話をする機会をつくったんです。
実際にやってみて、他のテーマが気になってもきたり。もっと政治を、気軽に話せる環境ってつくれるんじゃないかな、と思いました。(沖田さん)

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ともに学び、ともに考え続けるために

モヤモヤを抱えた1人のフォロワーから、そのモヤモヤを代弁する「作り手」へと変化して、どんなことを感じたのか。初めての制作を終えた今だから聞きたい、と思ったこの質問を、メンバーのみんなにぶつけてみました。

初めは政治や社会に無関心な人が多いことを変えたいと思っていたけど、関心があって知識がある人が「偉い」とすると、発信が上から目線になってしまう。悩んだとき、政治や社会は全て自分たちの生活に関わっていると気づいたことで、フラットな当事者の目線での発信をしたいと思うようになりました。そもそも政治や社会に関心があるのが「偉い」訳じゃないから、フラットな発信は大事ですよね。そのために、自分が伝えたいポストの内容と、フォロワーさんが知りたいことの「交点」をもっと考えるのが今の課題だなと感じてます。(川西さん)
受け身状態で学んでいた頃は『戦争は事実』として捉えていたので、戦争を起こしたのは誰なのか、どうやったら戦争を起こさずに済んだのかは深く考えたことがありませんでした。NYNJの「どうやったらわたしたちの生きたい社会をつくれるか」という立場で改めて戦争というものを考えてみると、私にもできることはあるのではないかと思い始めました。(藤崎さん)
作る側に加わることで、制作時の考えや想いを知れたからこそ、知識をもったうえで自分がどう考えるかという「スタンスを持つ」ことの大切さに気づきました。誰かと社会問題などを話すときも、どう考えるかについて前より話しています。誰かがアクションを起こさない限りなにも変わらない、と強く感じたから、知らない、分からないで終わらせたくないという想いがもっと強くなりました。(下條さん)
投稿の作成では他のメンバーと何度も作り直しをしたりと大変でしたが、みんなでそれぞれの考え方や言葉・画面のアイディアを共有し、一つひとつブラッシュアップすることが大切なんだなと感じました。自分の意見・アイディアをまず出すことを大事にしているのが、NYNJのスタンスの在り方なんだなと感じます。(吉井さん)

知識も想いも100%伝え合うことはできない。人に伝えることは難しく、私たちはまだまだ力不足です。それでも、その力不足に言い訳をせず、試行錯誤を続けることでしか、より良く「伝える」ことはできません。

上から目線になっていないか。自分と立場の違う他者を想定できているか。スタンスを持つためのお手伝いができる内容になっているだろうか。

発信は、NYNJメンバーだけでなく、フォロワーさんやインタビューをした方の様々な意見に揉まれ、揺れながら作られていくもの。
「伝える」という営みのなかで、フォロワーの皆さんを含めた人々と関わり合うとき、何の話題を発信するときにどう迷ったのか、その揺れを大切に見つめながら、自らも考えを深め変化していくことを忘れないでいたい。それは、フォロワーの皆さんと「ともに考えて行くメディア」であるために必要なことだと感じています。

「一歩踏み出す後押しをする」NYNJ の Instagram

今回インタビューに応じてくれた沖田さんは、8月のポスト制作の後、より精力的にポスト制作に関わっています。8月のポストを通して、もともとそこまで興味が無かった安全保障の問題が社会を動かしていると感じたという沖田さん。
編集部に本格的に関わるようになった理由を聞くと、こう答えてくれました。

私が初めてNYNJのインスタを見たとき、分かりやすいと思った気持ちをもっと色々な人に届けたい。そう思ってもらえるような投稿を作ることが自分にできるか分からないけど、そのための努力はしたいと思ってます。社会問題だけでなく、選挙のことについてもNYNJを通して解決できる問題があると思うので頑張りたいです。(沖田さん)

私たちNYNJの目標は、ただ「知る」だけで終わらせるのではなく、それをもとに考え、自らの行動に繋げること。
今回のインタビューを通して、政治や社会の話をしたいと心の中では想いながら、その気持ちを表現できずに悶々としている人たちは想像以上に多いのではないか、と感じました。

これからも、ただ「能動的に受け取り、考えよう」と上から目線で呼びかけるのではなく、見てくれた皆さんが一歩を踏み出せるような、少しでも声をあげるための勇気を与えられるメディアでありたい。

私たちの投稿が、あるいはそこに込めた想いが、皆さんの背中を押すことが出来ていれば良いなと思います。

(文=野口 俊亮)


NO YOUTH NO JAPANのInstagramの投稿を続けるためのデザイナーさんへの依頼料と活動の運営経費にさせていただきます!